「勝ちを願って、試合前にはカツ丼」という発想はひと昔前。
勝つためには、競技の特徴に合わせた栄養摂取が必要だという考えが一般化してきたように思います。
こうした流れの牽引役の一つが「アスリートフードマイスター」という資格かも知れません。
タレントの里田まいさんが、旦那さま(ニューヨークヤンキース投手田中将大さん)の栄養管理のためにアスリートフードマイスターを取得したとしてメディアで一躍話題になりました。
ここでは、アスリートフードマイスターとはどのような資格なのか、資格講座を受講することで何を学ぶことができるかまとめます。
また、スポーツで勝つために栄養摂取がなぜ重要かということにも触れておきたいと思います。
アスリートフードマイスター資格の存在意義
スポーツと栄養への注目
アスリートの勝利の背景には、「食事」「栄養」に対する取り組みの強化があった!!最近、そんな話題がよくクローズアップされますね。
サッカーの長友選手の糖質オフの取り組みや、テニスプレーヤーのジョコビッチの好成績の裏には「グルテンフリー 」の食事療法があった、などなど。
勝つための強い体をつくる「食事」の重要性が再認識されています。
食べて強くなるとは、どういう事でしょう?
ポパイのほうれん草のように、ある特定のものを食べれば、即効でパワーアップする、そんなものがあれば簡単ですね。(あったら、ドーピングですが)
同じ食事でも、摂取方法によってスポーツパフォーマンスに大きな違いが生じる事は1980年代以降の研究で明らかになってきました。
そうした研究成果がスポーツの現場に取り入れられ、近年「スポーツ栄養学」が、勝利のために重要なものとして捉えられるようになりました。
だれでも毎日食べる食事や食材を、どう組み合わせ、どのようなバランスで、どんなタイミングに食べれば強い体を手に入れることができ、パフォーマンスがアップするのか?
スポーツの種類だけでなく、年齢、性別や体質もふくめ、パフォーマンスアップのための栄養摂取は、工夫や戦略が必要です。
「アスリートフードマイスター」は、そうしたスポーツ栄養の知識を栄養士やトレーナーのようなの専門家だけでなく、競技者自身や競技者の配偶者、父兄など様々な人が共有できるコンテンツなのです。
アスリートフードマイスターの概要
「アスリートフードマイスター」は、株式会社アスリートフードマイスターが運営する資格取得講座です。
「野菜ソムリエ」で有名な日本野菜ソムリエ協会は関連組織です。
HPを見ると、「アスリートフードマイスター」とは、「アスリートのパフォーマンスを最大化するために、『年齢別』・『競技別』・『タイミング別』に、最適な食プログラムを提供する人材」と定義されています。
また、日本栄養士会の「公認スポーツ栄養士」のように管理栄養士の資格がないと受講できないと言うようなものではなく、誰もが受講・受験できます。
まさに、スポーツ栄養のすそ野を広げることを目的とした資格です。
アスリートフードマイスターのコース
アスリートフードマイスターは3つのコースがあります。
- アスリートフードマイスター1級
- アスリートフードマイスター2級
- アスリートフードマイスター3級
アスリートフードマイスター3級
アスリートフードマイスター3級は、「スポーツのための食事学」の基礎知識を中心に学びます。
身につけた知識は、選手の指導や職業のスキルアップと言うより、主に自分や家族の食サポートに役立てることを目指しています。
講座の受講は通信制と通学制が選べますが、修了試験は試験会場での受験です。
講座は1コマあたり1.5時間。
内容は以下の4つです。
- スポーツに取り組む人が必要とする食事とはどういうものか、アスリートフードの基本を学ぶ科目「アスリートフード学」
- 食事で体のコンディションを整えるための、食材の栄養価・適切な食べ方などに様々な視点からアスリートに必要な食材の選び方を学ぶ「フードチョイス」
- 「いつ」「何を」「どのように」食べるかといった、タイミング別の食事計画を立てる練習をする「フード・プランニング」
- アスリートフードの考え方にもとづいた献立の作り方を学ぶ「アスリート・レシピ」
受講・受験料は68,000円です。
通学制と通信制がありますが、金額は同じです。
通学制の場合、計6時間の授業を1日で受けることになります。
一方、通信制は自宅でテキストとDVDを使い、自分のペースで学べると言うメリットが有ります。
(ちなみに私は通学して資格を取得しましたが、スポーツ栄養の指導に関わる管理栄養士の講師陣の現場の経験談なども聞くことができて、有意義な1日でした。)
アスリートフードマイスター2級
アスリートフードマイスター2級は、アスリートの食事マネジメントを担うことができる人を目指す資格です。
アスリートをより深く理解するため身体のメカニズム、栄養学、競技者とのコミュニケーション手法を学びます。
3級が自分や家族のためのものであったのに対して、2級以上は、スポーツの指導の現場にたずさわる人に適した資格といえるでしょう。
ただし2級の受講・受験のためには、アスリートフードマイスター3級の取得が条件です。
講座は1コマあたり1.5時間。
講義数は8コマです。
以下にI講義内容の概要を示します。
- アスリートが必要とする栄養素とその役割や体重コントロール方法やグリコーゲンローディングを学ぶ。
- 「トレーニング期間」「試合当日」「試合後」などタイミングに応じた食事のとり方、ケガや故障の回復のための栄養摂取を学ぶ。
- 食事の衛生管理についての理解を深める。
- 消化・吸収・代謝を知り、食事が身体をつくるメカニズムを理解する。
- アスリートとのコミュニケーション方法を学ぶ。
アスリートの食事指導にあたる際に、実際的に求められるスキルを身に付ける講義内容になっています。
受講・受験料金は110,000円です。
アスリートフードマイスター1級
高度な健康管理を要求するプロやハイアマチュアアスリートに帯同し、栄養管理やケガ・病気の予防と、医療との連携方法などを学ぶ講座です。
アスリートフードマイスター3級および2級を取得していなければ受講・受験出来ません。
講座は1コマあたり1.5時間。
講義数は12コマです。
講義内容の概要は以下のようなものです。
-
- アスリートとの信頼関係構築と円滑なコミュニケーションのためのテクニックやコーチングの手法を学ぶ。
- アスリートフードマイスターが行うこと、また逆に抵触してはいけないことは何か知る。
- 医師、トレーナーなどとの連携の重要性を知る。
- 予防と治療のケース・スタディー(メンタル・外科・内科)
- 栄養計算
- フード・プランニングの実践
食事を通じて選手の健康管理に直接的に関わるため、怪我や疾病に対する知識を修得するとともに、医療行為などと抵触しないなど、注意すべきことも的確に理解しておくことが求められます。
受講・受験料金は180,000円です。
1級取得までに、総額358,000円かかります。
民間の資格としては決して安くないので、1級まで取得するには、仕事に活かすなど明確な目的が無ければ難しいかも知れませんね。
また、高度な健康管理を要求するプロやハイアマチュアのアスリートに帯同するスポーツ栄養担当のスタッフは、現実的には栄養士や管理栄養士の国家資格取得者であるため、そうした資格の保有者ではない場合、アスリートフードマイスター1級の資格がどこまで活かせるかは不明です。
しかし、より高度な知識を学びたい方には最適な資格取得講座でしょう。
また、アスリートフードマイスター・カンパニーという組織が結成されており、
アスリートフードマイスターに仕事を依頼したい企業・団体とのマッチングを行っているそうです。
アスリートフードマイスターの合格率は?
実際に試験を受けてみたい人にとって気になる合格率。
こちら公式ページにて情報が公開されていました。
- アスリートフードマイスター3級の合格率は85%
- アスリートフードマイスター2級の合格率は35%
3級に関しては、ちゃんとやることをやれば取得できる程度の難易度ですね。
2級からはそれなりに深い知識や経験値が必要になってくるレベル。
アスリートフードマイスターはスポーツ栄養と現場の橋渡し
スポーツ栄養学は、運動のために適切な栄養摂取のあり方を、生体内の細胞レベルで研究します。
ですが、「食べる」ことはより実戦的で具体的な営みですね。
そのため、栄養をどのような形で摂取するか、具体的な形に落とし込んで、より多くのスポーツ実践者に正しい情報を伝えるために、アスリートフードマイスターのような存在の需要は今後いっそう高まるのではないでしょうか。
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