
シックスパッド(SIXPAD)を使い始めると、多くの人が同じところでつまずきます。1日に何回まで使っていいのか、レベルはいくつが正解なのか、23分で本当にカロリーが消費されるのか。
ところが検索して出てくる情報の多くは、メーカーが公表していない数値を根拠なく引用しています。「23分で50〜80kcal消費」「腹筋100回分の70kcal」「週4〜5回が推奨」——これらはいずれもMTGの公式サイト・FAQ・取扱説明書のどこにも書かれていません。
この記事では、メーカーの取扱説明書と公式FAQの規定、そしてEMS(電気的筋肉刺激)の実測研究をもとに、期待できることと期待しても無駄なことを分けて整理します。
シックスパッドは1日何回まで?公式が定める使用回数

メーカーの規定は「トレーニング・プログラムは1日1回」
結論から言うと、シックスパッドのトレーニング・プログラムは1日1回までです。Core Belt 2のクイックガイドには「ご使用は、各モード1日1回ずつを推奨します」と明記されており、同じ記載はPowersuit Core Beltの取扱説明書にもあります。Medical Coreではさらに細かく、トレーニングは1日1回、コンディショニングは計1日2回まで、と使い分けが規定されています。
ジェルシート式だった旧モデルの使用条件は、もっと直接的でした。「使用箇所は1箇所につき、1日1回までとしてください」「同じ箇所への繰り返しの使用は筋肉疲労を起こすおそれがあるため、お控えください」。
つまり、「1日2回でもOK」と書いている情報は、メーカーの規定と食い違っています。
なお製品によってスタンスは異なり、Foot Fit 3は公式FAQで「毎日ご使用できます。ただし、1日1回までとしてください」と回答されています。回数の上限は共通で1日1回、推奨頻度だけが製品ごとに違うという整理です。
1日2回やったらどうなる|同じ部位に繰り返すリスク
メーカーが挙げている理由は筋肉疲労です。生理学的にも根拠があります。随意運動では持久力の高い遅筋線維から順に動員されますが、EMSでは電極に近い表層の筋線維が優先されるため、同じ筋線維が繰り返し使われます。その結果、同じ刺激時間でも随意運動より筋損傷が起きやすいことが知られています。
⚠️ 同一部位への1日2回で想定される問題:
- 筋肉の回復が追いつかず、疲労が蓄積する
- 電極が接する皮膚の角質バリアが低下し、かぶれ・紅斑が起きやすくなる
- ベルトによる圧迫が長時間になり、血流が阻害される
皮膚トラブルは実際に報告されています。国民生活センターは、EMS機器の使用後に腹部へ水疱ができた事例を検証し、電極パッドと皮膚の接触状態に起因する熱傷と結論づけた商品テスト結果を公表しています。
そして最も重要な点として、1日2回にしても効果が2倍になる根拠はありません。筋肉は刺激そのものではなく、刺激のあとの回復過程で適応します。回数を増やすことは、効果を増やすより先に回復を削ることになります。
異なる部位なら同じ日に使える|連続60分の上限
一方で、部位を分ければ同じ日に複数回使えます。朝に腹部、夕方に太もも、といった使い方に制限の記載はありません。同じ筋肉を1日に2回刺激しないことが規定の主旨だからです。
ただし総量の上限があります。Core Belt 2の安全ガイドとMedical Coreの取扱説明書には「1日60分以上連続して使用しないでください」と記載されています。23分のプログラムなら2回分を少し超える程度が上限になります。
推奨頻度は「1日おき」|「週4〜5回」は公式の数字ではない
頻度についてメーカーが示している指針は、公式FAQの次の一文だけです。
頻度としては筋肉を回復させるため、1日おきのトレーニングをおすすめしております。
1日おきは週3〜4回に相当します。よく見かける「週4〜5回」や「週2〜3回」という数字は、公式サイト・FAQ・取扱説明書のいずれにも記載がありません。第三者のレビュー記事が繰り返し引用するうちに定着した数値です。
1日おきという間隔は、同じ筋群への刺激を48時間程度あけるというレジスタンストレーニングの原則とも整合します。その考え方の背景は超回復が「嘘」と言われる理由とフィットネス-疲労理論で整理しています。
シックスパッドのレベル(強さ)の目安|製品別の段階と上げ方

製品ごとのレベル段階数一覧
レベル段階数は製品によって異なります。ネット上でよく見る「旧モデルは15段階」という記述は誤りで、15段階だったのは2015年発売の初代モデルだけです。
| 製品 | レベル段階 | 個別調整 |
|---|---|---|
| Core Belt 2 | 0〜20の21段階 | 腹側/背側を別々に |
| Medical Core | 0〜20の21段階 | 腹側/背側を別々に |
| Core Hip | 0〜20の21段階 | 腹側/臀部側を別々に |
| Abs 2 | 1〜20の20段階 | - |
| Powersuit Core Belt | 1〜20の20段階 | - |
| Leg Belt 2 | 20段階 | - |
| Hip Fit | 20段階 | - |
| Foot Fit 3 | 1〜25の25段階 | - |
Powersuit Core Beltの取扱説明書には「刺激のレベルはレベル1(弱)~20(強)の20段階です」と明記されています。Powersuitシリーズは当初から20段階です。
レベル0でできること|腹側・背側の個別調整
Core Belt 2・Medical Core・Core Hipにある**レベル0は「刺激なし」**を意味します。これらのモデルは前後を別々に調整できる構造のため、片側をレベル0にすれば、もう一方だけを刺激する使い方ができます。腰が張っているときは背側だけ、腹筋を集中したい日は腹側だけ、という調整が可能です。
なお、MTGがこれを機能として訴求している記載は確認できませんでした。仕様上そういう使い方ができる、という位置づけです。
公式の指針は「レベル1から始めて徐々に上げる」だけ
レベル設定についてメーカーが示している指針は、驚くほどシンプルです。
使い始めは、レベル1など弱いレベルから始めて、慣れてきたら徐々にレベルを上げていただきお試しください。
公式が定めているのはこれだけで、何レベルまで上げるべきかの目安は示されていません。判断基準は安全ガイドの側にあります。「痛みや不快感を感じたり、肌荒れ、発疹、赤み、かゆみ、やけど、炎症などの異常があらわれた場合は使用を中止し、医師に相談してください」。つまり痛みや不快感が出ない範囲が上限です。
⚙️ レベルを上げる手順:
- 初回はレベル1から始め、1回の使用中に無理に上げない
- 1週間ほど同じレベルで使い、慣れたら1〜2段階上げる
- ピリピリした痛みが出たら1段階下げる
男性・女性でレベルを変える必要はあるか
「女性はレベル1〜3、男性は3〜5から」といった性別ごとの目安を掲げる記事は多数ありますが、MTG公式にこの種の記載は存在しません。Core Belt 2もAbs 2も男女兼用設計として販売されています。
体感の差を生むのは性別そのものではなく、電極と筋肉のあいだにある皮下脂肪の厚さと、その部位の筋肉量です。皮下脂肪が厚いほど電流は拡散し、同じレベルでも収縮感は弱くなります。女性のほうが低めのレベルで十分と感じるケースが多いのは、体組成の傾向の結果であって、性別で設定を変えるべきだからではありません。痛みなく明確な収縮を感じるレベルが、自分の適正値です。
レベルを上げれば効果が上がるわけではない理由
レベルを上げても、効果が比例して伸びるわけではありません。理由は2つあります。
ひとつは、レベルを上げても電流が届く深さはほとんど変わらないこと。表面電極から流れる電流は皮膚に近い筋線維を優先的に刺激するため、強度を上げて増えるのは主に表層の収縮の強さと、皮膚が感じる刺激です。
もうひとつは、強すぎる刺激が皮膚トラブルのリスクを高めること。前述の水疱の事例のように、レベルを上げるほど電流が一点に集中したときの影響は大きくなります。最大レベルで痛みを感じないなら使って構いませんが、痛みを我慢して上げることに得はありません。
シックスパッドの消費カロリー|23分で何kcal・腹筋何回分か

メーカーは消費カロリーを公表していない
まず前提を正しておきます。MTGは、シックスパッドの消費カロリーを一切公表していません。
公式サイトの効果解説ページ、SIXPAD CLUBのFAQ、Core Belt 2の安全ガイド・クイックガイド・コントローラー取扱説明書、Medical Coreの取扱説明書——いずれにもカロリーに関する記述はありません。公式の効果訴求は「効率良く筋肉を鍛えることができます」という筋トレーニングの文脈に限定されています。
「23分」という数字だけはメーカー公表値(20Hzプログラムの所要時間)ですが、それに紐づくカロリー値は存在しません。「50〜80kcal」という数値は、一次出典を示さないまま記事間で転載されてきたものです。
腹部EMSの実測値|23分で約30〜35kcal、上乗せは約5kcal
では実際はどうなのか。Broederらが健常成人38名を対象に腹部EMSのエネルギー消費を実測した研究があります。
| 条件 | エネルギー消費 |
|---|---|
| 安静(EMSなし) | 1.221 kcal/分 |
| 安静+腹部EMS | 1.458 kcal/分 |
| 差分 | +0.237 kcal/分(+19.4%) |
これを23分に換算すると次のようになります。
🔥 23分の腹部EMSで見込まれる消費量:
- 総消費量:約33.5kcal(何もせず座っている分を含む)
- 同じ23分間、安静にしていた場合:約28.1kcal
- EMSによる上乗せ分:約5.5kcal
「23分で50〜80kcal」を成立させるには2.17〜3.48 kcal/分が必要で、実測値の1.5〜2.4倍です。この数値は過大と判断できます。
なお「全身EMSでは大量のカロリーを消費する」という研究も存在しますが、それは大腿・臀部・体幹・上肢を同時に刺激する専用スーツを使ったものです。動員される筋肉量が桁違いのため、腹部ベルトの数値として引用することはできません。
「腹筋100回分=70kcal」は成立しない|METsで計算し直す

「23分のセッションは腹筋100回分の約70kcalに相当する」という記述も、根拠を確認すると成立しません。
運動強度の国際基準であるCompendium of Physical Activitiesでは、腹筋運動(クランチ・シットアップ)は**2.8METs(軽度)〜3.8METs(中等度)**に分類されています。腹筋100回を一般的なペース(25回/分)で行うと約4分です。消費カロリーは「METs × 体重kg × 時間h × 1.05」で計算します。
| 体重 | 2.8METs・4分 | 3.8METs・4分 |
|---|---|---|
| 60kg | 約11.8kcal | 約16.0kcal |
| 70kg | 約13.7kcal | 約18.6kcal |
つまり腹筋100回の消費カロリーは12〜19kcal程度です。70kcalに到達するには体重70kgでも約15分の連続実施が必要で、1分あたり6.7回という、腹筋運動としてはあり得ないペースになります。
面白いことに、「23分のEMS ≒ 腹筋100回」という対比自体は成り立ちます。腹部EMSの総消費が約33kcal、腹筋100回が12〜19kcalで、どちらも10〜30kcalのオーダーだからです。成り立たないのは「70kcal」という数字のほうです。器具を使った腹筋運動の実際の負荷は腹筋ローラーの効果と鍛えられる部位も参考になります。
カロリーを消費する目的には向かない
ここまでの数字を並べると、結論は明快です。シックスパッドはカロリーを消費する道具ではありません。
上乗せ分の5.5kcalは、おにぎり1個(約180kcal)の30分の1です。毎日欠かさず使っても、EMSによる純増分は半年で約1,000kcal、体脂肪に換算して約0.13kgにしかなりません。第三者による40日間の実測レビューでも、体重−0.5kg、体脂肪率−0.2%、ウエスト−2.2cmという結果でした。脂肪を減らしたいなら、食事の管理と有酸素運動が主役です。
筋肉量が増えたときの基礎代謝の増え方(1kgあたり約13kcal/日)
「筋肉が増えれば基礎代謝が上がる」という説明はよく使われますが、実際の増え幅は控えめです。
骨格筋の安静時代謝率は1kgあたり1日約13kcalとされています。これはEliaが示した臓器・組織別の代謝率に由来し、複数の代謝研究で標準的に用いられている数値です。参考までに、脂肪組織は4.5kcal、肝臓は200kcal、脳は240kcalです。
つまり筋肉が1kg増えても、1日の基礎代謝の増加は13kcal程度。おにぎり1個分を取り戻すのに2週間かかる計算で、「筋肉が増えれば何もしなくても痩せる」という説明はスケール感を取り違えています。なお家庭用体組成計が表示する「筋肉量」は水分を含む除脂肪量に近く日内でkg単位で変動するため、その数値に13kcalを掛けても意味のある推定にはなりません。
シックスパッドを使うタイミング|食後・空腹時・時間帯

公式が定めているのは「極度の空腹時・絶食時は避ける」
使用タイミングについてメーカーが定めているのは、意外にも空腹側の制限です。Core Belt 2の安全ガイドとMedical Coreの取扱説明書には、次の記載があります。
極度の空腹時や絶食時、糖質制限をしている場合はご使用をお控えください。
理由は明示されていませんが、筋収縮のエネルギー源が不足した状態で刺激を加えることへの配慮と考えられます。眠気があるときの使用を避ける注意も併記されています。
「食後30分」は公式の指針ではない|避けたほうがよい本当の理由
一方で、「食後30分以上あけて使用する」という指針はMTGのものではありません。安全ガイドと取扱説明書を確認しても、「食後」という語自体が出てきません。
ただし食直後を避けたほうがよいという助言そのものは妥当です。理由は消化ではなく、機械的な圧迫にあります。
🍽️ 食後すぐの使用を避けたほうがよい理由:
- Core Belt 2などは腹部にベルトを密着させて締める構造で、満腹の胃を圧迫する
- 腹部の反復収縮は満腹時に嘔気を誘発することがある
- 締めつけによる胃食道逆流様の不快感が出ることがある
「消化に血液が回るから」という説明もよく見かけますが、EMSによる代謝の上乗せは1分あたり0.24kcal程度と小さく、血流の奪い合いという説明は腹部EMSには当てはまりません。満腹の腹にベルトを締めると気持ち悪い、という理由で理解したほうが正確です。
朝・夜どの時間帯に使うか|就寝直前を避ける理由
時間帯についてメーカーの規定はありません。続けられる時間帯を選ぶのが正解です。
⏰ 時間帯を決めるときの目安:
- 毎日同じ時間に確保できる枠を選ぶ(習慣化が最大の変数)
- ベルトを装着したまま作業できる時間帯を選ぶ
- 就寝直前は避ける
就寝直前を避ける理由は、電気刺激が交感神経を優位にし、入眠を妨げる可能性があるためです。就寝の2時間ほど前までに終えると無難です。「朝は代謝が上がる」「夜は疲労回復に効く」といった時間帯ごとの効果差は、EMSに関して裏づけのあるデータが見当たりません。
シックスパッドの装着位置|腹筋・下っ腹・太もも・ヒップ

装着前に肌を整える|通電と皮膚トラブルの両方に効く
電極が肌に均一に密着していないと、電流が一点に集中します。刺激が弱くなるだけでなく、水疱や熱傷の原因にもなります。Core Belt 2に「肌が検知されていること」を確認させる機能があるのはこのためです。
🎯 装着前にやること:
- 汗、化粧品、ボディクリーム、日焼け止めを拭き取る
- 傷、湿疹、日焼けした部位は避ける
- Powersuit系やLeg Belt 2は少量の水で電極を湿らせる
アルトダイン電極を搭載したCore Belt 2とAbs 2は、体から出る水分で通電するため、水を吹きかける必要はありません。
腹筋(腹直筋)に当てる位置
腹筋の基本は、おへそを中心に、腹直筋の走行に沿って左右対称に当てることです。製品の中心をおへその位置に合わせ、左右のずれがないか鏡で確認します。Core Belt 2にはウエスト調整コードがあり密着度を高められますが、締めすぎると血流を妨げるため指1本が入る程度の余裕を目安にしてください。
下っ腹を狙うときの位置とレベル
腹直筋の下部を狙う場合は、通常よりやや下側、へその5〜10cm下を目安に装着します。この部位は皮下脂肪が厚い人が多く同じレベルでも収縮を感じにくいため、1〜2段階高めに設定すると捉えやすくなります(痛みが出ない範囲という上限は変わりません)。
なお下っ腹の見た目が変わるかどうかは、筋肉より皮下脂肪の量で決まります。EMSで下腹部の脂肪が選択的に減ることはありません。部分痩せは起きない前提で、体脂肪全体を落とす取り組みと並行させてください。体脂肪率と見た目の関係は体脂肪率別の腹筋の割り方と必要な期間で整理しています。
太もも・ヒップに当てる位置
太ももはLeg Belt 2を大腿部に巻きつけます。大腿四頭筋・ハムストリング・内転筋の3部位に同時にアプローチする設計で、膝から10〜15cm上を目安に筋腹の中央へ電極を合わせます。ヒップはHip Fitを使い、臀部の最も盛り上がっている部分に合わせます。座位と立位で位置がずれやすいので、装着後に一度立ち上がって確認してください。いずれも左右がずれると片側だけ強く感じるため、対称性の確認は必須です。
シックスパッドの効果|EMSでわかっていることと、わからないこと

筋量・筋力には効果が確認されている
EMSに効果がないわけではありません。筋量と筋力については、複数の研究で効果が確認されています。
Kemmlerらが非アスリート成人を対象とした11研究をまとめたメタ解析では、EMSの介入によって除脂肪量(筋量)が平均で約0.9kg増加(95%信頼区間0.3〜1.5kg)し、統計的に有意な効果が示されました。筋力についても大きな効果量が報告されています。
国内の研究もあります。認知症のある要介護高齢者(平均年齢約90歳)を対象に12週間EMSを実施した研究では、対照群と比べて下肢の骨格筋量が有意に改善し、バランス機能も有意に向上しました。がん患者を対象に4週間、在宅で1日1回実施した研究でも、身体機能スコアの改善が報告されています。
いずれも自分で運動することが難しい人において、EMSが筋量の維持・改善に寄与することを示しています。運動できる人が運動の代わりに使う場合とは意味が異なる点に注意してください。
体脂肪はEMSでは減らない|メタ解析が示す結果
一方、体脂肪については効果が確認されていません。同じメタ解析で、総体脂肪量に対する効果量は−0.40(95%信頼区間−0.98〜0.17)と統計的に有意ではありませんでした(p=0.170)。論文の結論も「筋量と筋力には有意で大きな効果をもたらしたが、体脂肪量には及ばなかった」というものです。
これは前述の消費カロリーの数字と整合します。1回あたり5kcal程度の上乗せでは、体脂肪の収支に影響を与えられません。
「装着するだけで痩せる」という訴求には行政の指導事例もあります。消費者庁はEMS機器の販売事業者4社に対し、腹部の痩身効果を標榜する表示に**合理的根拠がない(優良誤認)**として景品表示法に基づく措置命令を出しました。「効果には個人差があります」といった打消し表示も、痩身効果の認識を打ち消すには不十分と判断されています。
装着型の器具に共通する期待と実際のずれは、加圧シャツの効果の実際でも同じ構図を扱っています。
効果を実感するまでの期間の目安

変化が見えるまでには数か月かかります。これはEMSに限った話ではなく、筋肥大の生理学的な時間軸によるものです。
📈 段階ごとに起きること:
- 1〜4週間:刺激に慣れ、収縮を感じ取りやすくなる。見た目の変化はほぼない
- 1〜3か月:体幹の張りや姿勢の安定を感じ始める人が出てくる
- 3か月以降:継続していれば、筋量の変化が体組成に現れうる
ただし体組成計の数値で判断するのは避けてください。水分量の変動でkg単位の誤差が出るため、同じ条件で撮った写真やウエストのメジャー計測のほうが安定します。「半年で体重2kg減・筋肉量4kg増」といった体験談も流通していますが、この数字は体脂肪−6kgを意味します。メタ解析で示された除脂肪量の増加が約0.9kgであることを踏まえると、EMS単独の結果としては説明がつきません。
メーカーが公表している研究実績の読み方
MTGは公式サイトで研究実績を公表しています。直近の公表値は、データ取得機関27大学、共同研究42件、国際論文17件、医療・介護施設への導入65施設です。ネット上でよく引用される「25大学・37件」は古い数値です。
こうした実績の数は、「研究が行われている」ことを示しますが、「主張された効果が実証された」ことは示しません。個々の主張は、その主張を扱った研究の中身で判断する必要があります。
📋 主要な主張の現状:
- 「20Hzが酸素消費量を最大化する」:MTGは京都大学・森谷敏夫氏の研究を根拠としているが、公開されている引用文献は1985年のExperimental Neurology論文1件のみで、周波数ごとの酸素消費量を比較した研究そのものは公開情報から特定できない
- 「20HzでBDNFとカテプシンBが有意に増加する」:健常若年成人16名を対象とした研究で確認されている。ただし血中バイオマーカーの急性変化を見たもので、認知機能の改善を示した研究ではなく、著者の1名がMTG所属
- 「8週間で腹筋の筋厚8%増加、体脂肪率1.7%減少」:MTGの公式サイト・研究成果ページ・プレスリリースのいずれにも該当する数値が見当たらず、出典を特定できない
3つ目は、シックスパッドの効果を紹介する記事で最も広く引用されている数値ですが、現時点で裏づけを確認できません。この記事では根拠のある数字としては扱いません。
通常の筋トレ・有酸素運動との併用が前提になる理由
EMSが刺激するのは、電極が当たっている部位の筋肉だけです。関節をまたぐ動作の連動、姿勢を保つバランス能力、力を出すタイミングの調整といった、実際に体を動かすために必要な要素は鍛えられません。電流が届く深さの制約から、高負荷のウエイトトレーニングと同等の筋肥大刺激を与えることも困難です。この2点が、補助の道具と位置づけられる理由です。
💪 目的別の位置づけ:
- 筋量を増やしたい:自重または重量を使ったトレーニングが主、EMSは補助
- 体脂肪を減らしたい:食事の管理が主、有酸素運動が従、EMSは体幹の維持
- 運動する時間が取れない:EMSで筋量の低下を抑えつつ、日常の活動量を上げる
3つ目のケースが、シックスパッドが最も価値を発揮する場面です。運動ゼロの状態と比べれば意味があるという前提で使うのが、現実的な期待値になります。
シックスパッドの選び方|現行モデルの違いと価格

体幹モデルの比較(Core Belt 2・Abs 2・Medical Core・Core Hip)
腹部・体幹をカバーするモデルは4機種です。
| 製品 | 価格(税込) | 対象部位 | レベル | プログラム | 通電 |
|---|---|---|---|---|---|
| Abs 2 | 29,920円 | 腹筋 | 1〜20 | 20Hz約23分 | ジェル・水とも不要 |
| Core Belt 2 | 44,990円 | 腹筋・脇腹・背筋下部 | 0〜20 | 20Hz約23分+4Hz約30分 | ジェル・水とも不要 |
| Core Hip | 58,300円 | 腹部・臀部 | 0〜20 | 約23分+約12分 | 水が必要 |
| Medical Core | 58,300円 | 腰まわり | 0〜20 | 約23分+約12分 | ジェル・水とも不要 |
🎯 モデル選択の基準:
- 腹筋だけでいい/初めて試す:Abs 2
- 背筋下部まで含めて体幹を扱いたい:Core Belt 2
- 腰まわりのサポートを重視する:Medical Core
- 腹部と臀部を同時に扱いたい:Core Hip
なおMedical Coreという製品名に「Medical」とありますが、医療機器ではありません。取扱説明書には「本品は電気刺激を通じて、腰まわりの筋肉をトレーニングすることを目的としています(医療機器ではありません)」と明記されています。取得しているのは業界団体である日本ホームヘルス機器協会の健康増進機器認定で、国の承認・認証・届出とは別のものです。
下半身・足のモデル(Leg Belt 2・Hip Fit・Foot Fit 3)
| 製品 | 価格(税込) | 対象部位 | プログラム |
|---|---|---|---|
| Hip Fit | 32,780円 | 臀部 | 約23分 |
| Foot Fit 3 | 43,780円 | 足裏・前すね・ふくらはぎ | 15分/12分 |
| Leg Belt 2 | 49,940円 | 大腿四頭筋・ハムストリング・内転筋 | 約15分 |
Foot Fit 3にはUSB充電式のCompact(38,500円)と温熱機能を備えたHeat(74,800円)があります。Foot Fitシリーズは公式FAQで毎日の使用が認められている唯一のラインで、座ったまま使えるため歩行機能の維持を目的とする層に向いています。下肢筋量とバランス機能の関係は前述の高齢者研究でも扱われており、見た目より機能の維持を目的とするなら腹部より下半身を優先するという選び方も成立します。
ジェルシートも水も不要「アルトダイン」で変わったこと
Core Belt 2とAbs 2に搭載されている「アルトダイン」は、ジェルシートも水も不要で通電する電極構造です。保温性と気密性の高い生地で熱を閉じ込め、体から出る水分を利用して通電します。
🔌 電極方式の変遷:
- 初代SIXPAD:ジェルシートが必要(交換費用と手間が発生)
- エレダイン(Powersuit系):水を吹きかける必要がある
- アルトダイン(Core Belt 2・Abs 2):装着してすぐ開始できる
使用後の手入れはウェットシートで拭くだけで、洗濯も不要です。ジェルシートの交換費用がかからないため、ランニングコストは実質0円になります。ただし、この点はもはやシックスパッド固有の強みではありません。ジェルシート不要のEMSベルトは価格帯を問わず一般化しており、3,000〜10,000円台の製品でも標準装備です。ランニングコストの差が価格差を正当化しにくくなっている点は、購入判断で意識しておく価値があります。
購入とレンタルの比較|公式サブスクは終了している
まず訂正が必要な情報があります。MTG公式の月額サブスク「SIXPAD CLUB有料プラン」(月額990円)はすでに終了しています。「月額レンタルオプションがある」という記述を見かけたら、それは古い情報です。トレーニング記録機能は無料プランに引き継がれています。
現在、月額で借りられるのは第三者のレンタルサービスです。
| 製品 | 月額レンタル料(税込) | 購入価格 |
|---|---|---|
| Core Belt 2 | 4,980円 | 44,990円 |
| Abs 2 | 5,380円 | 29,920円 |
| Medical Core | 6,980円 | 58,300円 |
数字を見れば判断は簡単です。Abs 2は6か月、Core Belt 2は9か月でレンタル費用が購入価格を超えます。EMSの効果が出るまでに数か月かかることを踏まえると、続ける前提ならレンタルは割高です。合理的なのは「肌に合うか確かめたい」「1〜2か月試して判断したい」という短期の試用に限られます。
同じ価格帯以外の選択肢も含めて比較したい場合は、アクティブスレンダーとシックスパッドの違いも判断材料になります。
シックスパッドを使ってはいけない人と使用上の注意

使用禁止|ペースメーカーなど体内植込み型医用電気機器
取扱説明書には、併用が禁止されている医用電気機器が明記されています。これは注意ではなく禁止事項です。
🚫 併用禁止:
- ペースメーカーなどの体内植込み型医用電気機器を装着している方
- 人工心肺などの生命維持用医用電気機器を使用中の方
- 心電計などの装着型医用電気機器を装着している方
Core Belt 2のコントローラー取扱説明書には、製品と装着部位を22cm以上離すよう記載されています。使用者本人だけでなく、これらの機器を装着している人との接触も避けてください。
使用しない|妊娠中・心疾患・発熱時・飲酒時など
⚠️ 使用しない:
- 医師にEMS機器の使用を禁じられている方
- 心臓に障害のある方(疑いを含む)
- 妊娠中の方、出産直後の方
- 使用部位に傷や皮膚異常(湿疹・炎症など)がある方
- 18歳未満の方
- 飲酒している方
- 38℃以上の発熱がある方
使用してはいけない部位も定められています。首から上(頭・顔)、背骨、胸部および肩甲骨など心臓周辺、傷口・目・口・陰部などの粘膜部位です。
医師への相談が必要な人
🏥 医師に相談のうえ使用:
- 悪性腫瘍のある方
- 心臓疾患の既往がある方、血圧に異常がある方
- 糖尿病による高度な末梢循環障害・知覚障害がある方
- てんかんなど脳神経に異常のある方
- 皮膚に知覚障害や異常がある方、アレルギー体質の方
- 骨粗しょう症など骨に異常のある方
- 体内に金属(インプラントなど)がある方、タトゥーのある方
- 長期間身体を動かしていない方
知覚障害がある場合が特に重要です。痛みを感じられないと、レベルの上限を判断する唯一の基準が機能しなくなります。
皮膚トラブル(水疱・かぶれ)を避ける使い方
EMSで最も現実的に起きやすいトラブルは、筋肉ではなく皮膚に起きます。
🩹 皮膚トラブルを避けるために:
- 電極全体が均一に肌へ密着していることを毎回確認する
- 同じ位置に毎日貼り続けず、わずかにずらす
- 使用後に赤みが残る場合はレベルを下げる
- 湿疹・かゆみ・水疱が出たら使用を中止し、医師に相談する
浴室など湿度の高い場所や浴槽・シャワーの中では使用できません。運転中や危険を伴う作業中の使用も禁止されています。
「Medical Core」は医療機器ではない
シックスパッドのEMS機器は、薬機法上の医療機器ではありません。取扱説明書には次のように明記されています。
- Core Belt 2:「本品は電気刺激によって、体幹部(腹部・脇腹・背中)の筋肉トレーニングを目的としています(医療機器ではありません)」
- Powersuit Core Belt:「本製品は疾病の治療または予防のために開発されたものではなく、医療機器ではありません」
医療機器ではない以上、「治療」「痩身」「腰痛が治る」といった効能を標榜することはできません。MTGの公式表現が一貫して「筋肉トレーニング」「筋肉を鍛える」に限定されているのは、この区分によるものです。
例外はリカバリーウェアで、こちらは一般医療機器(クラスI)として届出されています(一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」)。ただし「認証」ではなく「届出」であり、この2つは薬機法上まったく異なる手続きです。届出は厚生労働大臣への届出のみで、第三者機関の審査も国の承認も伴いません。「医療機器として認証された」という表現を見かけたら、それは不正確です。
まとめ|シックスパッドで結果を出すための3つの条件
シックスパッドは、装着するだけで体型が変わる道具ではありません。筋量と筋力には効果が確認されている一方、体脂肪の減少については有意な効果が示されていない——これが現時点でわかっていることです。
そのうえで、結果につながる条件は3つに集約されます。
1つ目は、メーカーの規定どおりに使うこと。 トレーニング・プログラムは同じ部位に1日1回まで、頻度は1日おきが公式の推奨です。回数を増やしても効果は増えず、筋疲労と皮膚トラブルのリスクだけが上がります。
2つ目は、レベルを痛みのない範囲で使うこと。 公式の指針はレベル1から始めて徐々に上げることだけで、性別ごとの目安はありません。強度を上げても電流が届く深さは大きく変わらないため、我慢して上げる価値はありません。
3つ目は、カロリー消費に期待しないこと。 23分の使用で上乗せされるのは約5kcalです。体脂肪を落とすなら食事の管理と有酸素運動が主役で、シックスパッドはその隣に置く補助の道具になります。
運動する時間が取れない期間に、筋量の低下を抑える。 この使い方であれば、シックスパッドは価格に見合った働きをします。期待値を正しく設定することが、結果的に継続につながります。
シックスパッドに関するよくある質問
- シックスパッドは1日2回使ってもいいですか?
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同じ部位への1日2回は推奨されていません。取扱説明書には「各モード1日1回ずつを推奨します」、公式FAQには「1日1回までとしてください。繰り返しの使用は筋肉疲労を起こすおそれ」と記載されています。部位を変える場合は制限がありませんが、連続使用は合計60分未満にとどめてください。
- 1日2回やったらどうなりますか?
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筋肉の回復が追いつかず疲労が蓄積し、電極が接する皮膚のかぶれや水疱のリスクが上がります。効果が2倍になる根拠はありません。
- 週に何回使うのが正解ですか?
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公式が示しているのは「筋肉を回復させるため、1日おきのトレーニング」で、週3〜4回に相当します。よく見かける「週4〜5回」はメーカーの公式表現ではありません。
- レベルはいくつから始めればいいですか?
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公式の指針はレベル1から始めて徐々に上げることのみです。男女別・習熟度別の推奨レベルはメーカーから示されていません。痛みや不快感が出ない範囲が上限です。
- 23分でどれくらいカロリーを消費しますか?
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メーカーは消費カロリーを公表していません。腹部EMSの実測研究をもとに換算すると、23分の総消費は約33kcal、うちEMSによる上乗せは約5kcalです。
- 腹筋何回分の効果がありますか?
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消費カロリーで見ると、23分のEMSも腹筋100回も10〜30kcalの範囲に収まります。ただし「腹筋100回=70kcal」という数字は誤りで、実際は12〜19kcal程度です。
- 食後すぐに使っても大丈夫ですか?
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食後に関する規定はメーカーにありません。ただしベルトが満腹の胃を圧迫するため、不快感を避ける意味で食直後は外すのが無難です。公式が定めているのは「極度の空腹時・絶食時・糖質制限中は避ける」ほうです。
- シックスパッドで痩せますか?
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体脂肪の減少については、EMSの介入研究をまとめたメタ解析で有意な効果が確認されていません。筋量と筋力には効果が示されています。脂肪を減らす目的なら食事管理と有酸素運動が主役になります。
- Core Belt 2とAbs 2はどちらを選ぶべきですか?
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腹筋だけでよければAbs 2(29,920円)、脇腹と背筋下部まで含めて体幹全体を扱いたいならCore Belt 2(44,990円)です。どちらもジェルシートと水が不要で、ランニングコストはかかりません。
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参考サイト・出典:
- SIXPAD Core Belt 2 安全ガイド(MTG)
- SIXPAD CLUB 公式FAQ(トレーニングの頻度)
- Broeder CE, et al. The Metabolic Cardio-Respiratory Effects of Abdominal Electrical Muscle Stimulation(腹部EMSのエネルギー消費実測)
- Kemmler W, et al. Efficacy of Whole-Body Electromyostimulation on Body Composition and Muscle Strength(EMSの体組成への効果メタ解析)
- 2024 Adult Compendium of Physical Activities(運動強度のMETs値)
