「デッドリフト」は、「スクワット」「ベンチプレス」と並んで「BIG3」と呼ばれる、筋トレ種目の中でも基本的かつ最も重要な種目の1つです。
また、デッドリフトはフォームを習得するのが難しい種目の1つでもあります。
その分、デッドリフトをマスターすればその効果は甚大です。
BIG3の各種目はどれも大筋群を鍛える目的で行いますが、同時に小筋群も含めた多くの筋肉を一気に刺激することができるという点にデッドリフトの魅力があります。
デッドリフトの効果
デッドリフトは「脊柱起立筋」「僧帽筋」「広背筋」など背中を構成する筋肉と、ハムストリングや大臀筋など、体の背面に効果的な種目です。
脊柱起立筋は、姿勢維持に重要な役目を果たしています。
日常の動作はもちろん、スポーツパフォーマンスにも大きく関わります。
そして「見た目」にも。
背中の上部から腰にかけて、脊柱を挟むように縦に走っている筋肉なので、ここをしっかり鍛えることで、脊柱を挟み背中に二つの盛り上がりができ、背中の厚みが増します。
そんなに筋肉量は増やしたくない女性の場合も、のっぺりとした背中ではなく、ハリや躍動感、表情のある背中を演出したい場合には、しっかりと脊柱起立筋を鍛えておく方が良いです。
また、腿の前面によく効くスクワットとは異なり、ハムストリングや大臀筋に負荷を集中させられるため、ヒップアップを望む場合にも有効です。
大筋群を中心に一気に多くの筋肉を動員するため、消費カロリーが高いという付加価値もあります。
デッドリフトのフォーム
デッドリフトの動作の特性とフォームの詳細を説明します。
デッドリフトのフォーム概要
デッドリフトの動作そのものは単純です。
床に置いたバーベルを直立の姿勢になるところまで持ち上げ、また床に下ろすだけです。
動作自体は単純ですが、腰などを傷めないためには、正しいフォームで行わなければいけません。
もっとも注意しておくポイントは、股関節です。
バーベルを床に下ろすために上半身を倒す時には、必ず背筋を伸ばします。
また、お尻を後ろに引くようにして股関節から体を倒します。
床から引き上げるときも背筋は伸ばしたまま、股関節を伸展して上半身を起こします。
デッドリフトの動作を正確・安全に行うために、背中を丸めずに股関節から体を倒す動作を必ず習得しましょう。
参考動画はこちら
このように股関節の動きを重視することで、脊柱を安定させることができます。
一方、背中を丸めたフォームでは脊柱を安定させることができず、椎間板に極めて大きなストレスがかかってしまうので危険です。
デッドリフトのフォーム詳細
基本的なデッドリフト、ヨーロピアンスタイル(ルーマニアンデットリフト)のフォームを説明します。
肩幅ほどの狭いスタンスで、ひざ関節はあまり深く曲げずに行います。
そのため、股関節の伸展が動作の中心となります。
- バーベルを床にセッティングします。
- 脚を肩幅程度に開き、バーがスネにあたるぐらいの位置に立ちます。
(バーから離れて立つと、バーベルを持ち上げる際に腰にストレスがかかるので注意しましょう。) - バーは両膝の外側の位置で握ります。
狭すぎると、動作中に手が膝に干渉してしまいます。
また動作の間を通じて、腕は伸ばしたままです。肘を曲げないようにします。 - 背中を丸めずに、胸を張って脊椎の自然なアーチをキープします。
肩甲骨を少し寄せるように意識して胸を張ることで、上半身を安定させることができます。 - 脊椎の自然なアーチをキープしたまま、バーベルを持ち上げます。
持ち上げる時は、なるべく体に近い位置で持ち上げます。
バーを持ち上げたとき、腰を過剰に反らさないようにします。 - バーベルを下におろします。
この時も、脊椎の自然なアーチをキープしておきます。
背中を丸めないように注意してください。
また、膝関節を深く曲げるとスクワットに近い動きになってしまうので、デットリフトとしての効果を得るためには、膝関節は深く曲げないようにします。
参考動画です。
バーの持ち方
バーの握り方にもコツがあります。
「オーバーグリップ」(順手)でバーを握ると、握力が足りない場合はバーベルを持ち上げられません。
また滑り落ちてしまうリスクもあります。
左右の手を、片手はバーの上から、もう一方の手はバーの下から握りこむ「オルタネイトグリップ」で持つと、グリップ力がアップします。
グリップの参考動画です
体をどこまで起こすか
バーベルを持って体を起こしたときのポジションに注意しましょう。
直立姿勢よりほんの少しだけ後ろに反って、胸を張った姿勢が適正です。
僧帽筋に力が入り、大臀筋にもしっかりと力が入った状態になります。
決して反りすぎないようにしてください。
体を起こすときの姿勢がわかりやすい動画です。
間違ったフォーム
改めて、デッドリフトでよくある間違いをあげておきます。
自分のフォームをチェックするときに、こうした間違いをしていないか見直してみましょう。
- 背中が丸まっている。
- バーが体から離れている。
- バーを降ろす時、膝関節が深く曲がっている。
- 腕が曲がっている。
- トップポジションで反っている。
デッドリフトのバリエーション
デッドリフトにもバリエーションがあります。
フォームを変えると効く部位も変わるので、目的に応じてバリエーションのフォームを取り入れると良いでしょう。
ワイドスタンスデッドリフト
ヨーロピアンスタイルよりも、内転筋・大腿四頭筋によく効きます。
「スモウデッド」とも呼ばれるスタイルです。
足幅を広くすることで、内転筋に強く刺激が入ります。
- 広い足幅で立ちます。
- 股を割って腰を下げ、バーを握ります。上体の前傾角度は通常のデットリフトよりも浅く、上体は起こし気味になります。
- 背中は真っ直ぐ伸ばした状態で、立ち上がります。
参考動画です
スティフレッグド・デッドリフト
ルーマニアンデッドリフトをより強調した形で、膝を伸ばして行うスタイルです。
ハムストリングに強い刺激が入ります。
- 膝を伸ばして上体を前傾させてバーを握ります。
- 股関節の伸展動作により立ち上がります。
柔軟性の高い人は、台の上に上がって行うとより強くストレッチできます。
スティフレッグド・デッドリフトの参考動画です。
シングルレッグ・デッドリフト
片足でデッドリフトを行います。
通常のデッドリフトでは鍛えられない大臀筋の上部や中臀筋が鍛えられます。
- 片足を前に出し、対角線の手でダンベルやケトルベルを持ちます。
もう片方の手は、壁などに添えてぐらつかないようにしてもOKです。 - 股関節から上体を倒し、股関節を軸に起き上がります。
ヒップによく効かせるためには、背中を真っ直ぐ伸ばしたまま、上体を倒すようにします。
背中を丸めると、ヒップに刺激が入らないので注意しましょう。
参考動画です。
パーシャルデッドリフト
ハーフデットとも呼ばれるデッドリフトです。
バーベルを膝までしか降ろさないので、腰に優しく、広背筋や僧帽筋への関与が高まります。
ラックなどを使い、バーを膝の高さにセットして行います。
動作は普通のデッドリフトと同じです。
フィニッシュでしっかり胸を張るように意識しましょう。
パーシャルデッドの動画です。
ダンベルデッドリフト
バーベルが無い環境でデッドリフトを行う場合はダンベルで行いましょう。
参考動画
デッドリフトを安全に行うためのギア
デッドリフトを安全・快適に行うために便利なギアをご紹介します。
ベルト
お腹を締めて腹腔内圧の上昇をサポートします。
デッドリフトのように体幹に強い負荷がかかる種目での必需品です。
ストラップ
バンド状のストラップをバーに巻きつけて握力をサポートします。
ストラップを使わずに握力を鍛えることも大切ですが、高重量を扱う時や握力が弱い女性などは、ストラップを使うことで、トレーニングのクオリティがアップします。
パワーグリップ
ストラップと同じ目的のギアですが、手のひらに当たるパット部分の面が広いため、手の皮への摩擦ストレスなどが軽減できます。
シューズ
ランニングやダンス用のクッション性の高いシューズは、デットリフトには不向きです。
クッション性が低いレスリングシューズのようなタイプや、各メーカーがトレーニング用として提案しているものを使用するのをお勧めします。
デッドリフトの平均重量
これからデッドリフトを始めるという人のために、デッドリフトの体重別平均重量を参考にあげておきます。
参考http://strengthlevel.com/strength-standards/deadlift
男性
体重(kg) |
初心者 |
初級者 |
中級者 |
上級者 |
55 |
32 |
51 |
75 |
104 |
60 |
35 |
55 |
80 |
110 |
65 |
38 |
58 |
84 |
114 |
70 |
40 |
61 |
88 |
119 |
75 |
43 |
64 |
91 |
123 |
80 |
45 |
67 |
95 |
127 |
85 |
48 |
70 |
98 |
131 |
90 |
50 |
73 |
101 |
135 |
95 |
52 |
75 |
104 |
138 |
100 |
54 |
78 |
107 |
142 |
女性
体重(kg) |
初心者 |
初級者 |
中級者 |
上級者 |
40 |
23 |
39 |
61 |
87 |
45 |
26 |
43 |
66 |
93 |
50 |
29 |
47 |
71 |
99 |
55 |
32 |
51 |
75 |
104 |
60 |
35 |
55 |
80 |
110 |
65 |
38 |
58 |
84 |
114 |
70 |
40 |
61 |
88 |
119 |
デッドリフトまとめ
デットリフトはフォームを間違えると怪我に繋がりやすいので、正確なフォームができるようになってから、重量を増やして行くのが良いでしょう。
主動筋が大臀筋・ハムストリングであるため重い負荷が操れる種目です。
正しいフォームを身につけた上で、十分な負荷をかけ、トレーニングの基礎力を高めましょう!!