筋トレ用マウスピースには、歯や顎関節の保護と、噛みしめを介した筋力発揮の向上という2つの役割があります。
噛みしめ動作が全身の筋出力に影響を与える現象はCAP(Concurrent Activation Potentiation)と呼ばれ、複数の研究で効果が確認されています。一方で「効果なし」とする研究も存在し、効果の大きさや出方には個人差があるのが現状です。
また、高重量トレーニング時の食いしばりは歯のエナメル質摩耗や顎関節障害(TMJ)のリスクを高めるため、保護目的での使用にも明確な意義があります。
この記事では、マウスピースの科学的な効果とメカニズムからデメリット、必要性の判断基準、おすすめ商品10選まで解説します。価格は1,000円以下の基本モデルから歯科医院でのカスタムメイド(5,500円〜)まで幅広く、トレーニングスタイルと予算に合った選択肢が見つかります。
筋トレ用マウスピースおすすめ10選【要約動画】
筋トレ用マウスピースの効果|噛みしめで筋力は上がるのか
結論から言うと、マウスピース装着時の噛みしめにより筋力・パワーが向上する効果は、複数の研究で確認されています。ただし効果の大きさには研究間でばらつきがあり、「効果なし」とする報告もあります。
マウスピースで筋力が向上するメカニズム(CAP効果)

マウスピースが筋力向上に寄与する仕組みは、CAP(Concurrent Activation Potentiation)と呼ばれるメカニズムで説明されます。これは噛みしめという遠隔部位の筋収縮が、神経系を介して全身の筋出力を一時的に高める現象です。
🔬 CAP効果の3つの要素:
- 咬筋の随意収縮 :噛みしめにより三叉神経を経由して中枢神経系に信号が送られ、脊髄運動ニューロンの興奮性が高まる
- 筋連鎖の促進 :顎周辺の筋活動が首・体幹の筋群の協調的な活性化につながり、力の伝達効率が向上する
- 顎関節の安定化 :マウスピースが咬合力を均等に分散させることで、保護機構による噛みしめ抑制が解除され、より強い噛みしめが可能になる
重要な点として、素の歯で強く噛みしめると歯へのダメージが生じるため、身体は無意識に噛みしめの力を制限しています。マウスピースはこの制限を外す「安全な噛みしめ台」として機能し、CAP効果を引き出しやすくします。
研究で確認されている効果の範囲
マウスピースの効果を調べた研究は多数ありますが、結果は一様ではありません。以下に主要な研究結果を整理します。
📊 効果を示した研究:
| 研究・レビュー | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 2021年システマティックレビュー(27試験分析) | 筋力・パワー・敏捷性への影響 | 下半身パワー・膝伸展筋力の向上を確認。カスタムメイドで効果が顕著 |
| 2023年システマティックレビュー(41試験・852名) | 競技パフォーマンス全般 | 筋力・パワーの向上傾向を確認。カスタムメイドが市販品より優位 |
| Marquette大学(2008年) | カウンタームーブメントジャンプ | 力の立ち上がり速度が約20%向上。ただしピークフォース自体に有意差なし |
| Dunn-Lewis et al.(2012年) | 上半身パワー種目 | カスタム型マウスガード装着時に上半身パワーの向上を確認 |
⚠️ 効果が確認されなかった研究:
一方で、2012年のランダム化比較試験ではカスタムメイドマウスガードのパフォーマンスへの有意な影響は認められませんでした。また、テコンドー選手を対象とした研究では、スプリントやジャンプ、等尺性筋力に差がなかったことも報告されています。
現時点でのまとめとして、効果は「数%程度の改善が期待できるが、個人差が大きい」という評価が妥当です。2021年のレビューを執筆した研究者も、カスタムフィットで強く噛みしめた条件で効果が出やすいことを指摘しています。
ハンマー投げの室伏広治選手は「渾身の投げの基本は歯をくいしばらないこと」と述べており、競技特性によって噛みしめの効果は異なります。筋トレのように短時間で最大筋力を発揮する場面ではCAP効果が活きやすく、マウスピースの恩恵を受けやすいと考えられます。
パワーリフティング・競技シーンでの使用実態

パワーリフティングの大会や高重量トレーニングの現場では、マウスピースの使用は珍しいことではありません。
ADA(アメリカ歯科医師会)は29のスポーツでマウスガードの使用を推奨しており、その中にウエイトリフティングも含まれています。日本国内でもパワーリフティング大会でマウスピースを装着する選手は増加傾向にあり、JPA(日本パワーリフティング協会)の競技規則上、マウスピースの使用は禁止されていません。
ウエイトリフティング(重量挙げ)の八木かなえ選手も試合時にマウスピースを使用しており、トップアスリートの間でも歯の保護とパフォーマンスの両面から活用されています。
こうした競技シーンでの使用理由は、パフォーマンス向上よりも歯の保護が主目的であるケースが多いです。特にデッドリフトやスクワットで200kg以上を扱う選手にとって、無意識の食いしばりによる歯の損傷リスクは現実的な問題です。
効果が期待できる人・期待しにくい人

マウスピースの効果は、トレーニングスタイルや個人の口腔状態によって大きく異なります。
✅ 効果が期待できる人:
- 高重量トレーニング(最大重量の80%以上)を行う人
- デッドリフト・スクワット・ベンチプレスなど食いしばりが強くなる種目に取り組む人
- 普段から歯ぎしりや食いしばりの癖がある人
- 顎関節に違和感がある人
❌ 効果が期待しにくい人:
- 軽い重量でのマシントレーニングやストレッチが中心の人
- 有酸素運動がメインの人(後述するデメリットあり)
- 既製品の安価なマウスピースのみを使用する人(研究ではカスタムフィットで効果が出やすい)
なお、歯列矯正中や歯の損傷経験がある人は、パフォーマンスとは別に口腔保護の観点からマウスピースの使用を検討する価値があります。
筋トレ用マウスピースのデメリットと注意点
マウスピースにはメリットだけでなく、知っておくべきデメリットがあります。特に有酸素運動への悪影響は、メタアナリシスで明確に確認されています。

有酸素運動時のパフォーマンス低下
マウスピースの使用は有酸素運動のパフォーマンスを低下させます。これは2017年のシステマティックレビュー・メタアナリシス(14試験)で統計的に確認されている事実です。
マウスピースなしの条件と比較して、装着時はVO2max(最大酸素摂取量)とVEmax(最大換気量)のいずれも有意に低下することが示されています。口腔内にマウスピースがあることで口呼吸が制限され、酸素の取り込み効率が落ちるためです。
ただし、カスタムメイドのマウスガードではこの悪影響が小さいとする報告もあり、薄型設計やベント(通気孔)のあるモデルを選ぶことで呼吸への影響を軽減できます。
⚠️ 対策のポイント:
- ウエイトトレーニングのセット間に一時的に外して呼吸を整える
- ランニングなどの有酸素運動では使用しない
- 薄型・通気孔ありのモデルを選ぶ
個人差が大きく効果が出ない場合もある
マウスピースの効果に関する研究で一貫しているのは、個人差が非常に大きいという点です。
東京消防庁の検証実験では、マウスピース装着により握力や背筋力が向上した被験者がいた一方で、立ち幅跳びの測定値が低下したケースも報告されています。この差は、個人の口腔構造・咬合状態・顎関節の状態によるところが大きいと考えられています。
また、フィット感が悪いマウスピースはかえって違和感の原因となり、集中力の低下を招く可能性もあります。効果が感じられない場合は、マウスピースのタイプ変更やカスタムメイドへの移行を検討してください。
慣れるまでの違和感と呼吸への影響
初めてマウスピースを使用する場合、口腔内の異物感により集中力が低下する可能性があります。慣れていない状態で高重量を扱うと、違和感が気になって本来のパフォーマンスを発揮できません。
🔰 導入時のコツ:
- 最初は軽い重量(50%RM程度)から使い始める
- 1〜2週間かけて通常の重量に戻す
- 違和感が続く場合はフィットの調整を行う
完全に慣れるまでには2〜4週間程度かかるのが一般的です。
筋トレにマウスピースは必要か?判断基準を解説
マウスピースが必要かどうかは、トレーニング強度と口腔の状態で判断できます。

マウスピースが必要な人
以下のいずれかに該当する方は、マウスピースの使用をおすすめします。
① 高重量のフリーウエイトを扱う人
最大重量の80%以上でデッドリフト・スクワット・ベンチプレスを行う方は、マウスピースの恩恵を受けやすいです。これらの種目では全身に大きな負荷がかかるため、無意識の食いしばりが強くなります。歯の保護としても、CAP効果による筋力発揮の向上としても、使う価値があります。
ベンチプレス完全ガイド:体重別の平均値から目標設定100kgまでの成長曲線
② 食いしばり・歯ぎしりの癖がある人
トレーニング強度に関わらず、普段から食いしばりや夜間の歯ぎしりがある方にはマウスピースが有効です。
🦷 食いしばり癖のセルフチェック:
- 朝起きた時に顎の疲労感がある
- 頬の内側に歯型の跡がつく
- 歯の先端が平らに摩耗している
- 慢性的な頭痛や肩こりがある
これらの症状がある方は、トレーニング中の食いしばりによってエナメル質の摩耗や顎関節障害のリスクがさらに高まります。
③ 顎関節に不調がある人
口を開ける時にクリック音がする、開口時に痛みや違和感がある、顎の動きが制限されるといった症状がある方は、トレーニング強度に関わらず歯科医師に相談の上でマウスピースの使用を検討してください。歯列矯正中の方も、口腔保護の観点から使用が推奨されます。
マウスピースが不要な人
以下に該当する方は、マウスピースなしでも問題ありません。
軽い重量でのマシントレーニング、ヨガ、ピラティス、ストレッチ、有酸素マシン(ランニングマシン、エアロバイク)が中心の方は、歯や顎関節への負担が限定的です。これらの運動ではマウスピースの恩恵は小さく、有酸素運動では呼吸制限のデメリットのほうが大きくなります。
筋トレ用マウスピースの種類と選び方

筋トレ用・格闘技用・歯ぎしり用マウスピースの違い
マウスピースは用途によって設計が異なります。「家にある歯ぎしり用で代用できるか」という疑問をよく見かけますが、用途に合ったものを選ぶことが重要です。
| 種類 | 設計の特徴 | 筋トレへの適合性 |
|---|---|---|
| 筋トレ用 | 奥歯の噛みしめに最適化。適度な厚みでCAP効果を引き出す | ◎ 最適 |
| 格闘技用 | 衝撃吸収を重視。全体的に厚く、前歯の保護も強化 | ○ 使用可能だが、やや厚く呼吸しにくい場合あり |
| 歯ぎしり用(ナイトガード) | 就寝時の歯の保護に特化。薄い設計が多い | △ 保護としては使えるが、CAP効果を引き出す設計ではない |
格闘技用は衝撃から歯を守ることが最優先のため、分厚く違和感が出やすい傾向があります。歯ぎしり用(ナイトガード)は保護目的なら使えますが、筋トレ時の強い噛みしめを想定した設計ではありません。筋トレ用として効果を求めるなら、スポーツ用マウスガードを選んでください。
マウスピースの3つのタイプ(既製品・ボイル&バイト・カスタムメイド)
① 既製品(ストックタイプ)
あらかじめ形状が決まっているタイプです。購入後すぐに使えますが、個人の歯型に合わせた調整ができないためフィット感に限界があります。価格は1,000円〜2,000円程度で、お試し用として適しています。
② ボイル&バイトタイプ
お湯で柔らかくして自分の歯型に合わせるタイプです。筋トレ用として最も人気が高く、2,000円〜4,000円程度で購入できます。自宅で成型できる手軽さと、ある程度のフィット感を両立しています。研究でもカスタムメイドに次ぐ効果が確認されています。
③ カスタムメイド
歯科医師が歯型を採取して作製するオーダーメイドです。フィット感・保護性能ともに最高レベルで、研究でも一貫して既製品・ボイル&バイトより優れた結果を示しています。価格は5,500円〜(単色の場合)で、製作期間は約10日です。
材質・厚さ・トレーニング強度別の選び方

マウスピースの材質と厚さは、効果と快適性に大きく影響します。
📏 材質と厚さのポイント:
- 主流素材は**EVA樹脂(エチレン酢酸ビニル)**で、適度な弾力と衝撃吸収性を持つ
- 厚さは3〜4mmが筋力向上と装着感のバランスが良い(日本補綴歯科学会の研究では、ソフト材質・3mm厚が最も咬筋活動を増加させた)
- 6mm以上の厚みは保護性能は高いが、違和感と呼吸制限が増す
トレーニング強度別の推奨タイプ:
| 強度 | 推奨タイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 高強度(80%RM以上) | カスタムメイドまたは高品質ボイル&バイト | フィット感が重要。不安定なマウスピースは集中力を阻害する |
| 中強度(60〜80%RM) | ボイル&バイトタイプ | コストと効果のバランスが良い |
| 軽強度(60%RM未満) | 既製品でも可 | 保護目的なら薄型の既製品で十分 |
歯医者でのカスタムメイドの値段と製作の流れ
歯科医院でのカスタムメイドマウスピースは、思っているよりもリーズナブルです。
💰 費用の目安:
- 単色タイプ:5,500円〜15,000円
- 多色・デザイン入り:15,000円〜30,000円
- 高機能素材:20,000円〜40,000円
スポーツ外傷予防目的のため医療保険は適用されません。製作期間は通常約10日で、急ぎの場合は追加料金で2〜3日での完成も可能な医院があります。
📋 製作の流れ:
- 歯科医院で歯型採取(15〜30分程度)
- 技工所で作製(約10日)
- 完成後に装着確認・調整
定期的なメンテナンスを受けられるのもカスタムメイドの大きなメリットです。咬合の変化に合わせた微調整により、長期間にわたって最適な状態を維持できます。
筋トレ用マウスピースおすすめ10選【価格帯別】

予算重視(1,000円〜2,000円)
初めてマウスピースを試す方向けの価格帯です。基本的な保護機能を備えており、マウスピースの感覚を知るのに最適です。
G&S ONLINE スポーツ用マウスピース
2個セット+ケース付きのコスパ重視モデルです。ボイル&バイトタイプで自分の歯型に合わせて成型でき、EVA素材による適度な柔軟性があります。予備が1個あるため、成型に失敗しても安心です。筋トレ初心者やマウスピースを試してみたい方の入門用に最適です。
オーラルマート スポーツマウスガード
BPAフリーの医療グレード素材を使用したモデルです。ストラップ付きで落下・紛失を防止でき、8色展開で好みに合わせて選べます。日本語解説書付きで、初めてのマウスピースでも成型しやすいのが特長です。
基本的な2個セット商品
価格:1,000円〜1,500円
Amazon売れ筋ランキングでも人気の基本モデルです。2個セット+専用ケース付きで、練習用と本番用の使い分けが可能です。シンプルな設計でコスパを最重視する方に適しています。
バランス重視(2,000円〜4,000円)
本格的なトレーニングにも対応できる品質を備えた、性能と価格のバランスが良い価格帯です。定期的にウエイトトレーニングを行う方にはこの価格帯からがおすすめです。
ショックドクター ジェルマックス
スポーツマウスガードの世界的定番ブランドによるフラッグシップモデルです。3層構造による優れた保護性能とジェル素材のフィット感が特長です。ラテックスフリーでアレルギーの心配がなく、格闘技からラグビーまで幅広いスポーツに対応。高重量トレーニングにも耐えうる耐久性を備えています。
OPRO マウスガード セルフフィット
イギリスの歯科ラボが開発した高品質モデルです。独自フィッティングツールにより、ボイル&バイト方式ながら精度の高いフィットが可能です。薄型設計で呼吸や会話がしやすく、長時間のトレーニングでも違和感が少ないのが特長です。
ヴェヌム マウスガード チャレンジャー
格闘技ブランドとして知名度の高いヴェヌムの人気モデルです。歯だけでなく唇やあごも保護する高強度設計で、パワーリフティングや高強度の筋トレを行う方に適しています。耐久性が高く、長期使用にも対応します。
Mueller OPRO シールドシルバー
スポーツ医療ブランドMuellerの中上級モデルです。医療グレードの安全性と、OPROのフィッティング技術を組み合わせた信頼性の高い製品です。男女兼用設計で、トレーニング・フィットネスに特化しています。
高機能モデル(4,000円〜10,000円)
カスタムメイドに近い品質を既製品で実現する、上級者・高重量トレーニング向けの価格帯です。
SISU 3Dマウスガード
わずか1.6mmの薄さを実現した米国製の次世代マウスピースです。無数の小さな穴が唾液の流れを最適化し、約5回の再成型が可能です。立体型設計で装着感が自然なため、呼吸のしやすさと会話のしやすさを重視する方に最適です。
OPRO インスタントカスタムフィット
独自のフィッティングケージを搭載し、カスタムメイドに近いフィット感を自宅で実現できる最上位モデルです。歯科ラボ開発による高い信頼性を備え、プロアスリートにも使用されています。
BODYMAKER 奥歯用マウスピース
奥歯に特化した独特な設計により、前歯部分が自由なため違和感を最小限に抑えられます。呼吸制限がほぼなく、ウエイトトレーニングに特化した設計です。前歯部分の違和感が苦手な方や、呼吸のしやすさを重視する方におすすめです。
カスタムメイド・プロ仕様(10,000円以上)
最高レベルのフィット感と保護性能を求める方向けの選択肢です。
歯科医院でのカスタムメイド
価格:5,500円〜40,000円
精密な歯型採取による完全オーダーメイドです。個人の噛み合わせに完全対応し、材質と厚さを用途に合わせて調整できます。単色であれば5,500円から製作可能で、定期的なメンテナンスにより長期使用が可能です。研究で一貫して最も優れた効果を示しているのがこのタイプです。
高機能スポーツ用モデル
価格:15,000円〜30,000円
プロアスリート仕様の高級既製品です。多層構造による衝撃吸収、抗菌・防臭加工、専用調整ツール付属など、あらゆる面で高い品質を備えています。競技団体認定モデルも選択可能です。
💡 価格帯別の選び方まとめ:
| 対象 | 価格帯 | おすすめタイプ |
|---|---|---|
| 初心者・お試し | 1,000〜2,000円 | ボイル&バイト基本モデル |
| 中級者・定期的にトレーニング | 2,000〜4,000円 | 高品質ボイル&バイト |
| 上級者・高重量 | 4,000〜10,000円 | 高機能モデル |
| 競技者・長期投資 | 10,000円以上 | カスタムメイド |
まずは中価格帯のボイル&バイトタイプから始め、必要に応じてグレードアップしていくのが効果的です。
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筋トレ種目別マウスピースの使い方|ベンチプレス・スクワット・デッドリフト

ウエイトトレーニングの三大種目でのマウスピースの使い方は、基本的に共通しています。ポイントは装着タイミング、噛みしめの強さ、呼吸との連動の3つです。
📋 基本の使い方(全種目共通):
- セットアップ時に装着し、フィット感を確認してからポジションに入る
- 力を入れる局面(コンセントリック)で軽〜中程度の力で噛みしめる。全力で噛みしめる必要はない
- 下ろす局面で吸気、挙げる局面で段階的に呼気を行う。マウスピース装着時でも呼吸パターンは通常と同じ
種目別の補足ポイント:
ベンチプレスでは、仰向けの姿勢で顎が不安定になりやすいため、マウスピースによる顎関節の安定化効果が活きます。バーを胸に下ろす際に吸気し、プレス動作中に段階的に呼気を行います。
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デッドリフトでは、バーベルを握る前にマウスピースを装着します。リフト開始時に軽く噛みしめながらヴァルサルヴァ呼吸(腹圧を高める息止め)を行い、バーが膝を超えたタイミングから段階的に呼気を開始します。全身の筋連鎖が重要な種目のため、顎の安定がフォーム維持に寄与します。
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スクワットでは、バーベルを担ぐ前に装着してラックアウトの安定性を確保します。ボトムポジションから立ち上がる際に噛みしめながら腹圧を高め、上半身のブレを抑えます。
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初めてマウスピースを使用する場合は、各種目とも軽い重量からスタートし、装着時の感覚に慣れることが最優先です。
マウスピースの使い始め方とメンテナンス

ボイル&バイトタイプの正しい成型方法
ボイル&バイトタイプのマウスピースは、正しい成型が効果を左右します。成型の手順は以下の通りです。
📋 成型の手順:
- 70〜80℃のお湯に指定時間(通常30〜60秒)浸ける。沸騰したお湯は使わない
- 柔らかくなったら取り出し、数秒間冷まして口に入れる(火傷に注意)
- 上の歯に被せて均等に噛みしめる。同時に舌で内側から押し付けると歯列への密着度が上がる
- 30秒程度噛み続けたら取り出し、冷水で急冷して形状を固定する
⚠️ 成型時の注意点:
- 温度が高すぎると材質が劣化し、低すぎると十分に柔らかくならない
- 成型のやり直しは2〜3回まで可能な製品が多いが、繰り返すと材質が劣化する
- カスタムメイドの場合は歯科医院での受け取り時に装着感を確認し、違和感があれば遠慮なく調整を依頼する
段階的な導入方法
マウスピースの効果を引き出すには、慣らし期間を設けることが重要です。
📅 導入スケジュール:
- 第1週:軽い重量(50%RM程度)で15〜20分程度の使用。フォームの確認と装着感に慣れることを優先
- 第2〜3週:通常の重量(70〜80%RM)に移行。呼吸パターンの調整も行う
- 第4週以降:高重量(85%RM以上)での使用を開始。違和感が続く場合はフィット調整や製品変更を検討
お手入れと交換の目安
🧹 日常のケア:
- 使用後は**中性洗剤(食器用洗剤)**で洗浄し、清潔なタオルで水分を除去する
- 週1回、マウスピース専用クリーナーまたは入れ歯洗浄剤で深層洗浄を行う
- 保管時は専用ケースを使用し、通気性の良い場所で乾燥させる
- 漂白剤や熱湯は使用禁止(材質の劣化・変形の原因になる)
🔄 交換の目安:
一般的な寿命は6ヶ月〜1年です。高強度トレーニングを頻繁に行う場合は3〜6ヶ月が目安です。以下の症状が出たら交換してください。
- 形状の変形やフィット感の低下
- 表面の摩耗や深い傷
- 変色や取れない異臭
まとめ

筋トレ用マウスピースには、歯と顎関節の保護という確実なメリットと、噛みしめによる筋力発揮の向上(CAP効果)という期待できるメリットがあります。CAP効果については研究間で結果にばらつきがありますが、カスタムフィットのマウスガードを使用した条件では比較的一貫した改善が報告されています。一方で、有酸素運動時の呼吸制限は明確なデメリットです。ウエイトトレーニング専用として使うのが基本になります。
使い始めは2,000〜4,000円のボイル&バイトタイプからで十分です。効果を実感できたら、歯科医院でのカスタムメイド(5,500円〜)へのステップアップを検討してください。高重量トレーニングを行う方や食いしばりの癖がある方は、パフォーマンスの向上だけでなく長期的な歯の健康を守る投資として活用できます。
筋トレに必要なもの完全ガイド|初心者が最低限揃えるべき器具3つから始める段階的プラン
よくある質問(FAQ)
- マウスピースで本当に筋力が上がるの?
-
複数の研究で、噛みしめを介した筋力・パワーの向上(CAP効果)が確認されています。ただし効果は数%程度で、個人差が大きいです。「効果なし」とする研究もあるため、過大な期待は禁物ですが、歯の保護という確実なメリットは全員が受けられます。
- 歯医者で作ると値段はいくら?
-
単色タイプで5,500円〜15,000円程度です。多色やデザイン入りは15,000円〜30,000円、高機能素材は20,000円〜40,000円が目安です。スポーツ外傷予防目的のため医療保険は適用されません。
- ジムで使っても恥ずかしくない?
-
パワーリフティングや高重量トレーニングの場面では一般的に使われており、恥ずかしいことではありません。安全を重視するトレーニーとして見られることが多いです。
- 呼吸しにくくならない?
-
筋トレのセット中は問題ありませんが、有酸素運動では呼吸への悪影響がメタアナリシスで確認されています。ウエイトトレーニング専用として使い、セット間で外して呼吸を整えるのが効果的です。
- マウスピース矯正中に筋トレ用マウスピースは使える?
-
マウスピース矯正(インビザライン等)のアライナーを装着したまま筋トレ用マウスピースを重ねることはできません。矯正中に歯の保護が必要な場合は、担当の歯科医師に相談して筋トレ時の対応を検討してください。
- パワーリフティングの大会でマウスピースは使用できる?
-
使用可能です。JPA(日本パワーリフティング協会)やIPF(国際パワーリフティング連盟)の競技規則では、マウスピースの使用は禁止されていません。実際に大会で使用している選手も多くいます。
参考文献:
- Miró A, et al. (2021) Acute Effects of Wearing Bite-Aligning Mouthguards on Muscular Strength, Power, Agility and Quickness: A Systematic Review.
- Cao R, et al. (2023) Influence of wearing mouthguards on performance among athletes: A systematic review. J Sci Med Sport.
- Caneppele TMF, et al. (2017) Mouthguard Use and Cardiopulmonary Capacity – A Systematic Review and Meta-Analysis.
- Wang JS, et al. (2020) Mouthguard-effect of high-intensity weight training on masticatory muscle tone and stiffness in taekwondo athletes.

