
「筋トレは何セットやればいいのか」という疑問には、先に単位を決めないと答えが出ません。1回のトレーニングで1種目を何セットやるかと、1週間でその筋肉に何セット当てるかは、まったく別の数字だからです。
結論を先に書きます。筋力を伸ばしたいなら1種目2〜3セット、筋肉を大きくしたいなら1つの筋肉あたり週10セット以上。この2つを押さえれば、2セットで足りるのか、6セットは多すぎるのかも判断できるようになります。
筋トレは何セットが正解か:結論

1種目あたりは2〜3セット、筋肥大は「週あたり」で数えて10セット以上
セット数の目安は、目的によって「数える単位」そのものが変わります。
| 目的 | 数える単位 | 目安 | 重量 |
|---|---|---|---|
| 筋力向上 | 1種目あたり | 2〜3セット(週2回以上) | 1RMの80%以上 |
| 筋肥大 | 1つの筋肉あたりの週合計 | 週10セット以上 | 1RMの30〜100%と幅がある |
レジスタンストレーニングの処方を包括的に整理した指針では、筋力向上には1種目2〜3セットを週2回以上、負荷は1RMの80%以上が挙げられています。一方、筋肥大については負荷の要件が緩く、1RMの30%から100%まで幅広い重量で同程度の効果が確認されており、代わりに週あたりの合計セット数が効いてきます。
つまり「何セットが正解か」への答えは、筋力なら1回あたりのセット数と重量、筋肥大なら1週間の合計セット数を見るのが正しい、ということになります。
経験レベル別の目安と、初心者が2〜3セットから始めてよい理由
トレーニング経験別の目安として、以下が一つの基準になります。
| 経験レベル | 1種目あたり | 週の頻度 |
|---|---|---|
| 初心者 | 1〜3セット | 週2〜3回 |
| 中級者 | 1〜3セット | 週3〜4回 |
| 上級者 | 3〜6セット(周期的に変動) | 週4〜6回 |
初心者が2〜3セットから始めてよい理由は、この段階で伸びを決めるのがセット数ではなくフォームの習得と継続だからです。トレーニング未経験の男性48名を6か月追跡し、1セット・3セット・5セットに分けて比較した研究では、脚のプレス系種目の筋力は1セット群でも3・5セット群と同程度(約13%)に伸びました。筋力の初期の伸びは、力を出す動作を神経系が覚えることで起きるためです。
ただし同じ研究で、上腕の筋厚は1セット群で有意な増加が確認できませんでした。筋肉を大きくすることが目的なら、1セットでは足りない可能性が高いということです。なお、近年まとめられた指針は経験による層別を行っていません。経験年数は参考にとどめ、「今の量で伸びているか」で判断するほうが確実です。
セット数より先に決まるもの:1セットをどこまで追い込むか

セット数を議論する前に、1セットの中身が決まっている必要があります。余力を大きく残した5セットより、限界近くまで行った2セットのほうが効く場面があるからです。
限界までの距離(RIR=あと何回挙げられるか)と筋肥大の関係を複数の研究から解析した報告では、セットを限界に近づけて終えるほど筋肥大が大きくなる傾向が示されています。一方、筋力の向上は限界までの距離にあまり左右されません。
実践的な目安はRIR 2〜3、つまり「あと2〜3回はできる」ところで止めることです。反復不能まで追い込んだ場合と同程度の結果が得られ、疲労は少なくて済みます。
筋トレの「セット」とは:レップ・インターバルとの関係
セット・レップ(回数)・インターバルの定義と関係
セットとは、休憩を挟まずに続けて行う一連の反復動作のまとまりです。ベンチプレスを10回続けて行い、そこで一度バーを置いたら、これで1セットが終わります。
📌 セットを構成する3要素:
- レップ(反復回数):1セットの中で動作を繰り返す回数
- 重量(負荷):そのセットで扱うウェイトの重さ
- インターバル:セットとセットの間に取る休憩時間
「ベンチプレス80kg×10回×3セット、インターバル2分」と書けば、この4つの情報がすべて含まれます。重量の決め方はRM法による重量・回数の設定と1RMの計算方法で解説しています。
重量とレップ数は連動し、重い重量ほどレップ数は少なくなります。重量とレップ数を先に決めれば、そのセットの性格(筋力寄りか筋肥大寄りか)はほぼ決まります。
「1種目◯セット」と「週◯セット」は別の数字

セット数の情報が混乱しやすい最大の原因が、この2つの数字が同じ「セット」という言葉で語られていることです。
- 1種目あたりのセット数:そのトレーニングでベンチプレスを何セットやるか(例:3セット)
- 週あたりのセット数:1週間の合計で、その筋肉に何セット当てたか(例:胸に週12セット)
たとえば胸の日にベンチプレス3セット・インクラインダンベルプレス3セット・ケーブルフライ3セットを行い、これを週2回やった場合、胸の週あたりセット数は18セットです。1種目3セットという数字と、週18セットという数字は、まったく違うものを指しています。
筋肥大の目安として使われる「週10セット以上」は後者です。1種目10セットという意味ではありません。
週あたりのセット数の数え方:直接効く種目と間接的に関与する種目

週の合計を数えるとき、多関節種目をどう扱うかが問題になります。ベンチプレスは胸だけでなく三頭筋と肩前部も使うからです。
67研究・2,058名分のデータを解析した報告では、直接的に鍛えている筋群を1.0セット、間接的に関与する筋群を0.5セットとして数える方法が、実際の筋肥大量を最もよく説明できたとされています。
📊 数え方の例(ベンチプレス3セットの場合):
- 大胸筋:3セット(直接)
- 上腕三頭筋:1.5セット(間接)
- 三角筋前部:1.5セット(間接)
この数え方を使うと、腕を直接鍛える種目を入れなくても、プレス系・プル系の種目だけで腕にはそれなりのセット数が入っていることがわかります。腕だけ回復しないという悩みの原因が、この間接分の見落としであることは少なくありません。
セット数別の効果:2セット・3セット・4〜5セット・6セット以上

2セットで十分?効果が出る条件と足りなくなる条件
2セットでも効果は出ます。ただし条件があります。
1セットと複数セットを比較した8研究・55の効果量をまとめた解析では、筋肥大の効果量が1セットで0.24、2〜3セットで0.34でした。「多セットは1セットより約40%大きい」と表現されることがありますが、これは効果量どうしの比較であって、筋肉が40%多く増えるという意味ではありません。
⚠️ 「2セットと3セットの差は15〜20%」といった数値が紹介されることがありますが、2セットと3セットを分離して比較した報告は確認できていません。この解析でも2セットと3セットは同じ群にまとめられています。
2セットが機能するかどうかは、次で分かれます。
✅ 2セットで足りる条件:
- 各セットをRIR 2〜3(あと2〜3回)以内まで持っていく
- 種目数か頻度で、週の合計セット数を確保できている
- 筋力の維持・向上が主な目的である
❌ 2セットでは足りなくなる条件:
- 週1回しかその部位をやらない(1種目2セット×週1回=週2セット)
- 余力を大きく残して終えている
- 種目数が少なく、週の合計が10セットに届かない
計算してみます。1種目2セットでも、胸に3種目・週2回なら週12セットになり、筋肥大の目安を満たします。逆に1種目2セット×週1回では週2セットにしかならず、筋肥大には明らかに不足です。
時間がないから2セットにする、という判断は成立します。その場合は種目数を減らさず、1種目あたりを削るほうが週の合計を維持しやすくなります。
3セットが標準として使われている理由
3セットが標準扱いされているのは、効果と実行しやすさの折り合いがつくためです。
📌 3セットが使われる理由:
- 従来の指針が初心者・中級者に示す「1種目1〜3セット」の上限にあたる
- 1種目3セットを2〜4種目・週2回組めば週12〜24セットとなり、筋肥大の目安に入る
- 多くのプログラムが3セットを前提に設計されており、情報を探しやすい
ただし、3セットに特別な根拠があるわけではありません。2セットでも4セットでも、週の合計と1セットの追い込み度が同じなら結果は大きく変わりません。3セットは「迷ったときに外しにくい設定」と考えるのが妥当です。
4〜5セット:伸びが止まったときに増やす順番
3セットで伸びが止まったとき、次の一手として1種目あたりを4〜5セットに増やす選択肢があります。
前述の未経験者48名・6か月の比較では、上腕伸筋群の筋厚で5セット群だけが他の群より明確に優れ、ベンチプレスの5RMも5セット群が最も伸びました(約11%)。少なくとも未経験者では、5セットまで増やすことに意味があったことになります。
⚠️ 増やすときの注意点:
- 1種目5セットにするより、種目を1つ足して週の合計を増やすほうが疲労が分散する
- 重量・回数・セット数を同時に増やさない。変えるのは一度に1つだけにする
- 2週間ごとに1セットずつが扱いやすい単位。一気に増やすと伸びなかったときの原因が切り分けられない
6セット以上:増やすほど伸びるが効率は落ちる
6セット以上でも筋肥大は伸び続けます。ただし1セットあたりの見返りは確実に小さくなります。
67研究・2,058名分のデータを解析した報告では、平均的なボリューム付近で**1セット追加あたりの筋肥大の増分は約0.24%**とされています。そして、同じだけ上乗せするために必要な追加セット数は段階的に増えていきます。
| 現在の週あたりセット数 | 次の一段を得るのに必要な追加セット数 |
|---|---|
| 5〜10セット | 約6セット |
| 11〜18セット | 約8.5セット |
| 19〜29セット | 約10.75セット |
| 30〜42セット | 約12.5セット |
検討された最高水準(週30〜42セット程度)まで増加は続いており、「週15〜20セットが上限で、それを超えると効果がなくなる」という線は確認されていません。この数値は指導の実務で広まった目安であり、査読された研究に由来するものではありません。
📌 6セット以上を採用する場合の組み方:
- 全種目ではなく、主要種目1〜2種目に限定する。それ以外は3〜4セットに抑える
- 疲労が抜けなくなったら、4〜6週間おきに1週間だけボリュームを30〜50%落とす期間を挟む
- 睡眠時間と食事量を確保できていない時期には増やさない
「多ければ多いほど良い」ではなく、回復が追いついている範囲でだけ増やすというのが実際の運用です。回復の考え方は超回復理論とフィットネス-疲労理論の違いで整理しています。
1部位の週間セット数の決め方と増やし方

週10セットが最低ライン、上限は「効果が消える線」ではない
週あたりのセット数と筋肥大の関係を15研究から解析した報告では、以下の傾向が示されています。
| 週あたりのセット数 | 筋量の増加率 |
|---|---|
| 5セット未満 | 約5.4% |
| 5〜9セット | 約6.6% |
| 10セット以上 | 約9.8% |
この結果から、筋量の増加を最大化するには少なくとも週10セットが必要と示唆されています。近年の指針でも同じ数字が筋肥大の目安として挙げられています。
上限については明確な天井は確認されていません。**「週20セットを超えたら逆効果」ではなく、「増やすほど効率は落ちるが、回復できていれば伸びは続く」**というのが現在確認できる範囲での整理です。
筋力向上は週5セット前後で頭打ちになる
筋肥大と筋力では、ボリュームへの反応が大きく異なります。
同じ67研究の解析では、筋力の向上は週2セット付近まで効率が高く、週5セットを超えると追加のボリュームが一貫した向上をもたらさなくなるとされています。筋肥大が緩やかに伸び続けるのに対し、筋力は早い段階で頭打ちになる形です。
つまり、目的によってセット数の決め方が変わります。
- 筋力が目的:セット数を増やすより、重量(1RMの80%以上)と頻度を優先する
- 筋肥大が目的:重量の幅は広く取れるので、週の合計セット数を積む
週の総セット数が同じなら、何回に分けるかは大きく変わらない
「週12セットを1日でやるか、3日に分けるか」という頻度の問題については、25研究をまとめた解析で総ボリュームを揃えた場合、頻度の高低で筋肥大に有意な差はないと報告されています。上半身と下半身に分けて解析しても差はありませんでした。
つまり、筋肥大が目的なら、週の合計セット数が同じである限り、分け方は続けやすさで決めてよいことになります。
⚠️ ただし筋力については話が変わります。同じ67研究の解析では頻度を増やすと筋力が向上するという関係が明確に示されており、指針でも各主要筋群を週2回以上鍛えることが推奨されています。
落としどころは、週2回以上に分けて、1回あたりの疲労を抑えつつ週の合計を積むという形です。1日に週の全量を詰め込むと、後半のセットの質が落ちて追い込めなくなります。
セット数を増やすタイミングと増やし方

セット数を増やすかどうかは、感覚ではなく記録で判断します。
✅ セット数を増やす判断基準:
- 同じ重量・回数で2週間以上、伸びが止まっている
- 最後のセットを終えてもRIR 3以上(あと3回以上できる余裕がある)
- 前回のトレーニングからの疲労が明らかに残っていない
増やすときは1セットずつ、新しい設定で最低2週間続けてから次の判断をします。
逆に、セット数を減らすべきサインもあります。前回挙がった重量が挙がらない、筋肉痛が1週間以上引かない、日常生活に響くレベルの疲労が続く。これらが揃ったら、1〜2週間ボリュームを落とすほうが結果的に早く伸びます。
週の総セット数を記録して数える
週あたりのセット数を目安として使うなら、記録して数える必要があります。記録する項目は、日付・種目・重量・回数・セット数の5つで足ります。ここに体調やRIRを添えておくと、伸びが止まったときの原因が追いやすくなります。
📌 この目的でアプリを選ぶなら重視したい機能:
- 筋群別の週間ボリューム(週あたり総セット数)を自動で集計できる
- RIRまたはRPEを記録できる
- インターバルタイマーが内蔵されている
週間ボリュームの自動集計に対応しているアプリは限られており、筋群別の分析グラフを備えたHevyや、ボリュームの自動グラフ化を明示しているバーンフィットが該当します。国内で長く使われている筋トレMemoは配信が続いていますが、週間ボリュームの集計機能は公式には示されていません。詳しくは記録管理・Apple Watch対応で選ぶ筋トレアプリの比較にまとめています。
紙のノートやスプレッドシートでも問題ありません。続く方法を選ぶことが、機能の多さより優先されます。
セット数と一緒に決める3つの条件:重量・回数・インターバル

重量と回数の決め方
セット数だけを議論しても意味がないのは、重量と回数が結果を左右するからです。
| 目的 | 重量 | 回数 |
|---|---|---|
| 筋力向上 | 1RMの80%以上 | 1〜6回 |
| 筋肥大 | 1RMの30〜100%と幅がある(実用域は60〜85%) | 6〜20回 |
| 筋持久力 | 1RMの50〜60%程度 | 15回以上 |
筋肥大に「この重量でなければならない」という要件はありません。総負荷量を揃えた条件で1RMの20%・40%・60%・80%を比較した研究では、いずれの条件でも筋肉の断面積が増えました。ただし20%の条件は80%の条件より増加幅が小さく、極端に軽い重量では不利になります。
ここから、よく言われる「筋トレの効果は総負荷量(セット数×回数×重量)で決まる」という説明の限界も見えてきます。総負荷量は目安として使えますが、同じ総負荷量でも、重量が極端に軽い場合や限界から遠い場合には結果が下振れします。
セット間インターバルは何秒取るか
筋肥大には60〜90秒が最適で、短い休憩が成長ホルモンの分泌を促して筋肥大に有利になるという説明が広く流通していますが、これは現在の知見とは整合しません。
トレーニング経験のある男性21名を8週間追跡し、インターバル1分と3分を比較した研究では、3分のほうがベンチプレスとスクワットの1RM、大腿前面の筋厚のいずれでも優れていました。9件のランダム化比較試験をまとめた解析でも、60秒を超えるインターバルには小さいながら筋肥大上の利点があり、90秒を超えて延ばしても差はほとんどないとされています。
成長ホルモンについても検証されています。若年男性12名が左右の腕で異なる条件を15週間行った比較では、片腕は腕種目のみ、もう一方は腕種目の直後に高ボリュームの脚トレーニングを行ってホルモンを意図的に上昇させました。ホルモンは明確に上昇したにもかかわらず、筋線維の断面積の増加も1RMの伸びも両条件で差がありませんでした。運動後の一時的なホルモン上昇は、筋肥大の量とは結びついていないということです。
📌 インターバルの実用的な目安:
- 筋肥大:90秒〜2分。60秒未満は次のセットの質が落ちる
- 筋力向上(高重量の多関節種目):2〜3分以上
- 単関節の補助種目:1〜2分
短い休憩に価値があるとすれば、それは筋肥大に有利だからではなく、限られた時間内に週の合計セット数を積めるからです。
限界まで追い込むか:RPE・RIRでセットの強度を決める
**RPE(自覚的運動強度)**は、そのセットがどれだけきつかったかを数値化する指標です。ただし、筋トレで使う場合には注意点があります。
有酸素運動で使われる6〜20のスケールは、数値に10を掛けるとその時の心拍数に近くなるように設計されたものです。この対応関係は条件によってずれることが指摘されており、心拍数が指標になりにくい筋トレでの使用は本来の想定外です。
一方、ウェイトトレーニングで使われる1〜10のRPEは、これとは別のスケールです。RIR(Reps In Reserve=あと何回挙げられるか)に対応させたもので、トレーニング現場から生まれた考え方が後に研究として形式化されました。
| RPE | RIR | 感覚 |
|---|---|---|
| 10 | 0 | もう1回も挙がらない |
| 9 | 1 | あと1回できる |
| 8 | 2 | あと2回できる |
| 7 | 3 | あと3回できる |
**実用的な基準はRPE 7〜8(RIR 2〜3)**です。この設定なら、翌日以降のトレーニングの質を落とさずに週の合計セット数を積めます。
RPEを使う利点は、その日の体調に合わせて重量を動かせることです。「80kg×10回×3セット」と固定するのではなく「RPE 8になる重量で10回×3セット」と決めておけば、調子の悪い日は自動的に重量が下がり、良い日は上がります。
目的別のセットの組み方:筋肥大・筋力向上・減量

筋肥大目的のセットの組み方
📌 筋肥大の設定:
- 週あたりセット数:1つの筋肉あたり10セット以上
- 1種目あたり:2〜4セット
- 回数:6〜20回(実用域は8〜12回)
- 重量:1RMの60〜85%
- インターバル:90秒〜2分
- 追い込み度:RIR 2〜3
負荷を増やしていく順番は、回数 → 重量 → セット数です。8回で組んでいたなら12回まで伸ばし、12回に届いたら重量を2.5〜5kg上げて8回に戻す。これを繰り返して伸びが止まったところで、初めてセット数を検討します。一度に複数の要素を動かすと、伸びたときも止まったときも原因がわかりません。
筋力向上目的のセットの組み方
📌 筋力向上の設定:
- 1種目あたり:2〜3セット(主要種目はセッションの前半に配置)
- 回数:1〜6回
- 重量:1RMの80%以上
- 頻度:週2回以上
- インターバル:2〜3分以上
- 週あたりセット数:5セット前後で頭打ちになるため、積み増しの優先度は低い
筋力の場合、セット数を増やしても筋肥大ほどの見返りはありません。伸ばすべきは重量と頻度で、週5セットを超えて積むより週2回を週3回にするほうが効きます。
期間ごとに重量と回数の配分を変える方法(準備期に8〜12回の中重量、強化期に3〜6回の高重量、ピーキング期に1〜3回の最大重量)も使われますが、これは競技として重量を追う場合の話です。一般的な筋力向上であれば、1RMの80%以上を週2〜3回、2〜3セットで十分に伸びます。
減量期のセットの組み方:重量は落とさない
減量期には重量を下げて回数を増やす、という組み方が広く紹介されています。これは必要ありません。
トレーニング歴6か月以上の130名を対象に、20%のエネルギー不足下で**高重量(1RMの約80%・10回未満)と高回数(1RMの約60%・20回未満)**を比較したクロスオーバー試験では、体脂肪の減少(−0.67kg対−0.55kg)も除脂肪量の変化(+0.06kg対+0.22kg)も、実用上は無視できる差でした。筋力の伸びも同等です。
📌 減量期の設定:
- 重量:減量前と同じ重量を維持する(1RMの70〜85%)
- 回数・セット数:減量前の設定をそのまま続ける。ボリュームを増やしても除脂肪量の維持には影響しないと報告されている
- 調整するのは食事:カロリー収支と、体重あたり1.5g以上のタンパク質
エネルギー不足の状態では、除脂肪量の増加は損なわれますが、筋力の向上は損なわれません。減量期の進捗は「重量を維持できているか」で確認し、落ちてきたらカロリー不足の程度を見直します。
種目別・部位別のセット数:スクワット・体幹トレーニング・大筋群と小筋群

スクワットなど多関節種目のセットの組み方
スクワット固有のセット数を示した研究は確認できていません。使えるのは多関節種目(主要種目)としての扱いです。
📌 スクワットの組み方:
- セット数:筋力目的なら2〜3セット、筋肥大目的なら3〜4セット
- 配置:疲労していないセッションの前半に置く
- インターバル:2〜3分以上。重い多関節種目では短い休憩は次のセットの質を明確に落とす
- 可動域:フルレンジで行う
週の合計を数えるときは、スクワットは大腿四頭筋に1.0、ハムストリングスや殿筋には0.5として数える扱いになります。フォームや種類による効き方の違いはスクワットの種類と部位別の効果で解説しています。
体幹トレーニングのセット数と時間の目安
プランクを何秒×何セットやるべきか、という問いに答える査読された研究は確認できていません。「10秒保持を複数回」といった指導は広く流通していますが、原典を特定できませんでした。
一方、トレーニング量の目安は、31件の対照試験・693名をまとめた解析から示されています。
📌 体幹トレーニングの量の目安:
- 1セッション30分以下:スプリントや方向転換の能力の改善に効果的
- 1セッション30分超:競技特有の動作の改善に効果的
- 総セッション数18回超:18回以下より、パワーとスプリントの改善で優れた
この解析で改善が最も大きかったのは局所的な筋持久力でした。体幹トレーニングは、筋肉を大きくするというより持続して力を出せる時間を伸ばす方向に効くということです。
そのため、体幹種目はセット数より「1回にどれだけ時間を使うか」と「何回続けたか」で管理するほうが実態に合います。プランクなら30〜60秒を2〜3セット、週2〜3回から始めれば十分です。
大筋群と小筋群でセット数を変えるべきか
「大筋群は48〜72時間、小筋群は24〜48時間で回復する」「だから大筋群は多め、小筋群は少なめ」という説明が広く流通していますが、この回復時間の差を裏づけるデータは確認できていません。
根拠として引かれることのある研究は、男性6名の片腕で肘関節の屈曲を12セット行い、筋タンパク質合成の推移を追ったものです。運動24時間後に約2倍まで上がり、36時間後には対照側との差がほぼ消えていました。これは小筋群の6名のデータであり、大筋群と比較したものではありません。
さらに、頻度の効果を25研究から解析した報告では、上半身と下半身に分けても頻度の効果に差はありませんでした。回復時間が大きく違うのであれば差が出るはずですが、それは検出されていません。
📌 実践上の目安:
- 腕や肩は、プレス・プル系種目から間接的に0.5セットずつ入っている前提で数える
- そのうえで足りなければ単関節種目を足す
- 回復の判断は「筋群の大きさ」ではなく、前回の重量が挙がるかどうかで行う
筋肉痛が残っているときの判断は痛みのレベル別に見た筋トレを行うかどうかの基準を参考にしてください。
まとめ

筋トレのセット数は、「1種目あたり」と「週あたり」を分けて考えることで判断できるようになります。筋力向上なら1種目2〜3セット・1RMの80%以上・週2回以上、筋肥大なら1つの筋肉あたり週10セット以上が目安です。
2セットでも効果は出ます。ただしそれは、各セットをRIR 2〜3まで持っていき、種目数か頻度で週の合計を確保できている場合に限ります。6セット以上に増やしても筋肥大は伸び続けますが、1セットあたりの見返りは小さくなります。「週15〜20セットが上限」という線は確認されていません。
そして、セット数より先に決まるのが1セットの中身です。余力を大きく残した5セットより、限界の2〜3回手前まで行った2セットのほうが効きます。
最適なセット数には個人差があり、最終的には記録から見つけるものです。週の合計を数えながら、伸びが止まったところで1セットずつ足していく。この手順の繰り返しが、いちばん確実な近道になります。
筋トレのセット数に関するよくある質問
- 毎回同じセット数でいいですか?
-
同じセット数を続けても構いませんが、重量か回数のどちらかは伸ばしていく必要があります。同じ重量・回数・セット数で2週間以上伸びが止まったら、見直しのタイミングです。
- 1セットだけでも効果はありますか?
-
筋力の向上であれば1セットでも相当程度は得られます。ただし筋肥大については、1セットでは有意な増加が確認できなかった報告もあり、目的が筋肉を大きくすることなら不十分になりやすいと考えられます。
- セット数を減らして重量を上げるのと、その逆はどちらが良いですか?
-
目的によります。筋力が目的なら重量を優先し、筋肥大が目的なら週の合計セット数を優先してください。筋肥大では1RMの30〜100%と幅広い重量で同程度の効果が確認されています。
- 時間がなくてセットが終わらないときはどうすればいいですか?
-
多関節種目を優先し、単関節種目から削ります。1種目のセット数を減らして種目数を維持するほうが、週の合計セット数を保ちやすくなります。
- 体調が悪い日はセット数を減らすべきですか?
-
重量ではなくRPEを基準に調整してください。RPE 8になる重量はその日の体調で変わるため、同じセット数のまま自動的に負荷が下がります。日常生活に響くレベルの疲労がある日は、完全に休むほうが回復は早くなります。
- 部位によってセット数を変えるべきですか?
-
筋群の大きさで変える根拠は確認できていません。プレス・プル系種目から間接的に入っているセット数を0.5として数え、そのうえで週の合計が足りない部位に種目を足す、という順番で判断するのが実態に合います。
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参考サイト・出典:
- トレーニング処方と筋力・筋肥大の関係を扱ったネットワークメタ分析(British Journal of Sports Medicine)
- 週あたりのボリューム・頻度と筋肥大・筋力の用量反応関係(Sports Medicine)
- インターバル1分と3分を比較した8週間の介入研究(Journal of Strength and Conditioning Research)
- 運動後のホルモン上昇と筋肥大・筋力の関係を検証した被験者内比較(Journal of Applied Physiology)
- エネルギー制限下で高重量と高回数を比較した試験(Research Quarterly for Exercise and Sport)


