腕相撲が強くなる方法|使う筋肉と道具なしでできる筋トレ・勝つコツ

屋外のBBQパーティーで、筋肉質な女性が驚いた表情の男性と腕相撲をしている様子。

飲み会や職場で突然始まった腕相撲で、鍛えているはずなのに負けた——という経験はありませんか。腕相撲の強さは腕の太さでは決まりません。競技団体や指導者が最優先に挙げるのは前腕筋群で、そこに技術と姿勢が加わって勝敗が決まります。

この記事では、鍛えるべき筋肉、道具なしから始められる筋トレ、技の使い分け、体重差の埋め方までをまとめます。

目次

腕相撲が強くなる方法|鍛える順番と勝敗を分ける3要素

腕相撲の勝敗を分けるのは、筋力・技術・姿勢の3つです。多くの人が取りこぼしているのは後ろの2つで、こちらは筋肉がつく前から改善できます。まず技術と姿勢を直し、並行して筋力を積み上げるのが最短ルートです。

強くなる最短の順番|前腕 → 技 → 全身の連動

鍛える順番には優先度があります。アームレスリングは「肩と肘を固定し、動くのは手首だけ」という構造の競技で、手首をどれだけ支配できるかが主導権を決めます。

🔸 取り組む順番:

  • 前腕(握力・手首の屈曲・回内)を鍛えて、手首を支配できる状態を作る
  • つり手・かみ手など技を覚え、力の向きを自分に有利な方向へ変える
  • 背中・胸・体幹・脚を鍛え、全身の力を腕まで伝える

腕の太さだけを追いかけると、この順番が逆になります。上腕二頭筋を大きくしても、手首を返されれば力は伝わりません。

筋力が上がるまでの期間|最初の2〜4週間は神経系の適応

筋トレを始めて最初に起きるのは、筋肉が太くなることではなく神経系の適応です。4週間のトレーニングで運動単位の動員閾値が下がり、発火頻度が増えることを示した筋力向上の神経メカニズムに関する研究(Del Vecchio et al.)があります。

つまり同じ筋肉量でも、眠っていた筋線維を動員できるようになるぶんだけ発揮できる力が増えます。見た目が変わる前に力が伸びるのはこのためで、目安としては2〜4週間で変化を感じ始める人が多くなります。逆に「1週間で強くなる」といった短さを裏づける根拠は見当たりません。

腕相撲で使う筋肉|どこの筋肉を鍛えるべきか

腕相撲は全身を使う競技ですが、貢献度には明確な差があります。どこの筋肉が何をしているのかを押さえると、トレーニングの優先順位が決まります。

前腕筋群|握力・手首の屈曲・回内を担う最優先部位

前腕筋群は、握力・手首の屈曲(掌屈)・前腕の回内という腕相撲の中心動作をすべて担当します。アジアメダリストが監修する解説では、前腕筋群が「アームレスリングの強さの半分以上を占める」と位置づけられており、競技が「前腕の競技」と呼ばれる理由もここにあります。

なかでも橈側手根屈筋は、手首を曲げたまま相手を押さえ込む局面で働きます。手首が伸びきった状態では力が入らず、相手に主導権を奪われるため、前腕は「太くする」より「曲げた形を保てる」ことが重要です。

上腕二頭筋|長頭はつり手、短頭はかみ手で働く

上腕二頭筋は肘を曲げ、相手の腕を自分側へ引き寄せる筋肉です。腕相撲では、使う技によって働く部位が変わる点が特徴になります。

長頭は相手の指先を吊り上げるつり手(トップロール)で、短頭は相手の手を巻き込むかみ手(フック)で主に働きます。どちらの技を主武器にするかで、カールの持ち方(ハンマーカールか通常のカールか)を変える価値があります。

広背筋と肩の内旋筋群|勝率との相関が最も高いという測定結果

背中と肩は「腕の筋肉ではない」と見落とされがちですが、実測データでは最も強い関連が報告されています。健康な男性16名を対象に身体機能と腕相撲の勝率を調べた腕相撲の強さに影響する身体的因子の研究(Hirai et al.)では、勝率との相関は次の順でした。

測定項目勝率との相関係数
肩関節内旋の最大ベクトル値0.75
前腕長0.64
握力0.45
体重0.31

⚠️ 16名の小規模な研究であり、これだけで結論は出せません。ただし広背筋・大胸筋・肩甲下筋といった肩を内側にひねる筋肉が、前腕や握力と同等以上に効いている可能性を示しています。競技側でも広背筋は「肩関節を固定し、つり手でバックプレッシャーをかける筋肉」として重視されています。

大胸筋・三角筋・上腕三頭筋|倒し込みと防御の局面

この3つは、勝負が決まる局面で働きます。大胸筋は相手の腕を体の中心へ引き寄せて倒し込み、三角筋は肩の位置を保って力の方向を制御し、上腕三頭筋は相手に押し返されたときに肘の角度を守ります。

いずれも単独で勝負を決める筋肉ではなく、前腕で作った有利を最後まで運ぶ役割です。プッシュアップやディップスなど、胸と三頭筋をまとめて使う種目でカバーできます。

体幹と下半身|力を腕まで伝える土台

体幹と下半身は、腕が生む力の土台になります。腹斜筋を含む体幹が緩むと、腕でどれだけ力を出しても上半身が逃げて相手に伝わりません。脊柱起立筋は姿勢を保ち、大腿四頭筋と大殿筋は立位での踏ん張りと体重移動を支えます。

競技の横倒し(サイドアタック)では、脚のドライブから体幹を通って拳まで一直線に力を伝えることが要点とされています。腕相撲が「全身競技」と言われるのは、この伝達経路があるからです。

腕相撲で使う筋肉の重要度ランキング

競技団体・指導者の解説と、上記の測定データを合わせて整理すると、優先順位は次のようになります。

順位筋肉主な役割
1位前腕筋群握力・手首の屈曲・回内。手首の主導権を決める
2位広背筋・肩の内旋筋群肩関節の固定と、引き込む方向の力
3位上腕二頭筋肘の屈曲。長頭はつり手、短頭はかみ手
4位大胸筋倒し込みの局面で腕を体の中心へ引き寄せる
5位三角筋・回旋筋腱板肩の安定と力の方向の制御
6位体幹(腹斜筋・脊柱起立筋)上半身の固定と力の伝達
7位上腕三頭筋防御時に肘の角度を保つ

なお「円回内筋と手首の屈筋が最重要」と名指しで示した研究は見当たりません。前腕筋群を最優先に置くという方向性は競技側の解説と一致しますが、断定はできない領域です。

腕相撲が強くなる筋トレメニュー|道具なし・自宅・ジム

環境別に、腕相撲に直結する種目を挙げます。すべてを行う必要はなく、前腕を含む種目を毎回入れることが条件です。

道具なしでできる腕相撲の筋トレ

道具がなくても、前腕・胸・背中を鍛える手段はあります。

🔸 器具なしで行える種目:

  • タオルリストカール:濡らしたタオルを絞る動作を、内側・外側へ交互に各20回×3セット。回内筋と回外筋を同時に使える
  • 指立て伏せ:指先だけで体を支えるプッシュアップ。膝つきから始め、握力と指の強度を上げる
  • テーブルプル:テーブルの下に潜り、縁を掴んで体を引き上げる。8〜12回×3セット。広背筋と上腕二頭筋に効く
  • 壁アイソメトリック:壁に向かって腕相撲の構えを取り、30秒×3セットを左右で押し続ける

テーブルプルが軽く感じるようになったら、懸垂へ移行すると引く力を伸ばせます。目安は懸垂の平均回数とレベル別の基準を参考にしてください。プッシュアップから発展させる場合は、ディップスができない原因と段階的な練習法で三頭筋と胸を厚くする方法をまとめています。

自宅で器具を使うトレーニング

自宅に器具を置ける場合、前腕への刺激を大きく増やせます。

ハンマーカールはダンベルを縦に持ち、親指を上に向けたままカールします。12〜15回×3セット。前腕の回内・回外に関わる筋肉への刺激が強く、腕相撲の動作との関連が高い種目です。重量選びに迷う場合は、ダンベルを何キロから始めるかの目安を確認してください。

リストローラーは、ローラーに巻いた紐で重りを巻き上げる種目です。8〜10回×3セットで、前腕の筋力と持久力の両方を鍛えられます。リストハンマーは片側にだけ重量がついた棒を使い、手首を返す動きで回内・回外・橈屈を鍛えます。

ジムでできる腕相撲のトレーニング

ジムでは、実際の競技動作に近い負荷のかけ方ができます。

種目回数の目安狙う部位
ケーブルでの斜め引き12〜15回×3セット広背筋・前腕。競技動作に近い方向で引ける
ラットプルダウン10〜12回×3セット広背筋。肩関節を固定する力
プリーチャーカール8〜12回×4セット上腕二頭筋。肘を固定して負荷を集中
リストカール/リバースリストカール15〜20回×3セット手首の屈筋・伸筋をバランスよく

ケーブルマシンは、腕相撲のトレーニングで最も応用範囲が広い設備です。設備の有無で選択肢が変わるため、これから通う場合はジムの選び方と種類ごとの違いを確認しておくと無駄がありません。

アイソメトリック(等尺性)トレーニング|肘90度・掌屈位で行う理由

腕相撲の試合は、拮抗した状態で数秒から十数秒、動かないまま力を出し続ける時間が中心です。この特性から、関節を動かさずに力を出すアイソメトリックトレーニングの相性がよいとされます。

ここで押さえたいのが角度特異性です。膝関節65度で4週間の等尺性トレーニングを行った等尺性トレーニングの関節角度特異性を検証した研究(Lanza et al.)では、鍛えた角度で最大トルクが12%向上した一方、離れた角度ほど効果が小さくなりました。ただし前後30度程度までは効果が移ることも確認されています。

🔸 腕相撲での実践ポイント:

  • 実際に力を出す角度、つまり肘90度前後・手首を曲げた掌屈位で行う
  • 30秒を上限に、全力に近い力で押し続ける
  • 角度を1つに固定せず、開いた角度と閉じた角度でも行うと守備範囲が広がる

1週間のトレーニング例と休ませ方

前腕は回復が早い部位ですが、毎日全力で追い込むと腱の炎症につながります。次のように分けると続けやすくなります。

曜日内容
月曜前腕集中:リストカール、リストローラー、タオル絞り
火曜胸・腕:プッシュアップ各種、ハンマーカール
水曜休息(軽いストレッチのみ)
木曜背中・肩:懸垂またはテーブルプル、ラットプルダウン
金曜前腕+実戦:グリッパー、壁アイソメトリック
土曜全身を軽めに
日曜完全休息

⚠️ 続けるうえでの注意点:

  • 肘の内側や手首に痛みが出たら、その日は中止する
  • 前腕のトレーニングは毎日行わず、間に1日空ける
  • 十分なウォームアップを行ってから最大努力に入る

腕相撲に効くトレーニング器具の選び方

器具は「握る・巻く・ひねる」の3方向で選ぶと重複しません。競技者向けの器具は、技ごとに専用のものが用意されています。

握力を鍛える器具|ハンドグリッパー

ハンドグリッパーは、最も導入しやすい器具です。負荷が段階的に用意されている製品を選ぶと、上達に合わせて買い足せます。代表的なのがIRONMIND社のキャプテンズ・オブ・クラッシュで、Captains of Crushグリッパーの公式仕様では強度が次のように定められています。

モデル強度目安
Trainer100 lb(約45kg)握力トレーニング未経験者の入り口
No.1140 lb(約63kg)一般的な成人男性が目標にする水準
No.1.5167.5 lb(約76kg)No.2への橋渡し
No.2195 lb(約88kg)閉じられれば競技者水準

国産では福発メタルなどの製品が2,000円前後から入手できます。レベル別の選び方はCOCグリッパーの選び方と握力の鍛え方で詳しく解説しています。

前腕・手首を鍛える器具|リストローラー・リストハンマー・パワーボール

3種類は狙う要素が違うため、目的で選び分けます。

🔸 器具ごとの役割:

  • リストローラー:紐を巻き上げる動作で、前腕の筋力と持久力を鍛える。2,000〜4,500円程度で入手できる
  • リストハンマー:片側だけに重量がある棒で、回内・回外・橈屈を鍛える。国内既製品は4,000円台が中心
  • パワーボール:内部のローターが生む遠心力に抗い、前腕を等尺性に近い形で刺激する。1,200〜4,800円程度

パワーボールは負荷を自分の回転速度で調整するため、関節への衝撃が小さく、ウォームアップにも使えます。\

技別に鍛える競技用ハンドル|トップロール用・フック用・回内用

汎用の握力グッズでは届かない領域を埋めるのが、競技用ハンドルです。JAWA日本アームレスリング連盟が公開する公認トレーニング器具一覧には、技ごとの対応が明記されています。

器具鍛える動き対応する技
トップロールハンドル手首の外転とロール力つり手
フックハンドル小指〜薬指のストローク力かみ手
ローテーションハンドル回内回旋/回外回旋回内はつり手、回外はかみ手
プロネーションハンドル回内・回外・橈屈つり手
フィンガーベルト「親指の壁」と呼ばれる回内回旋力つり手

価格帯は4,000円前後から20,000円弱までで、ケーブルマシンやプーリーに接続して使います。自分が主武器にする技が決まってから買うのが失敗しない順序です。

一人で負荷をかける腕相撲用グリッパー

相手がいなくても実戦に近い動作を反復できるのが、バネ式の腕相撲用グリッパーです。片手で握り込んで倒す構造で、負荷は約75kgから120kg程度の製品が流通しており、価格は7,000円前後です。

握り込みと手首の返しを同時に使えるため、動作の形ごと繰り返せる点が汎用グリッパーとの違いです。ただし負荷が固定で調整できない製品が多く、自分の水準に合った強度を選ぶ必要があります。

腕相撲のコツとテクニック|握り方・手首・技の使い分け

筋力が同程度なら、勝敗を決めるのは技術です。ここは今日から変えられる部分でもあります。

基本の握り方と手首の角度

握り方で最初に決まるのが、手首の主導権です。相手の手の奥まで指を入れて深く握り、親指は相手の手の甲側へ回してテコを作ります。

最も重要なのが手首をやや曲げた状態(掌屈位)を保つことです。手首が伸びきると前腕の力が伝わらず、そのまま返されます。試合開始前のグリップを組む段階から、自分の手首を相手より高い位置に置けているかを確認してください。

肘と肩のポジション|脇を締める理由

肘は体に近い位置で固定します。肘が外へ開くと力が分散し、肩から腕への力の伝達経路も長くなります。

競技では肘をエルボーパッドから離すこと自体がファウルです。これは公平性のためだけでなく、肘が浮いた状態が怪我につながるためでもあります。カジュアルな腕相撲でも、肘をテーブルから離さないことが安全と強さの両方に効きます。

つり手(トップロール)|手首を屈曲・回内させて相手の指先をめくる

つり手は、相手の指先を吊り上げて腕を伸ばさせ、力を発揮できない状態にする技です。英語ではトップロールと呼ばれます。

🔸 つり手の要点:

  • 手首を屈曲(掌屈)させながら回内し、手の甲が上を向く方向へ回す
  • 肘を支点にして、相手の指先を後方へめくり上げる
  • 肘は体の内側、肩よりも中心寄りに置く

主に使うのは前腕の回内筋・手根屈筋、上腕二頭筋の長頭、そして肩を固定する広背筋です。相手の腕が長い場合や、正面からの力比べを避けたい場合に有効な技です。

かみ手(フック)|手首を屈曲・回外させて相手の手を下敷きにする

かみ手は、小指の付け根で相手の手首を押さえ込み、引き込んでから捻り倒す技です。英語ではフックと呼ばれます。

つり手との最大の違いは前腕の回旋方向で、かみ手は回外(手のひらを上へ返す方向)を使います。手首は同じく屈曲させ、肘はつり手よりやや外側に構えます。主に働くのは橈側手根屈筋、上腕二頭筋の短頭、背筋群と三角筋です。

パワー型の相手や、つり手を仕掛けてくる相手への対抗策として機能します。なお日本語の呼称と英語名の対応はつり手=トップロール、かみ手=フックで、JAWAによる腕相撲の基本技の解説でも同じ対応が示されています。

横倒し(サイドアタック)|脚から拳まで一直線に力を伝える

横倒しは、つり手の後方への圧力とかみ手の横方向への圧力を同時にかける、中間的な技です。技術よりもパワーが優位に働きます。

成立の条件は、肩・肘・手首の3点を固定して力のロスをなくすことです。脚で床を踏み、体幹を通して拳まで一直線に力を届けます。立って行う腕相撲で体重を活かしやすいのはこの技です。

力の配分・体重の使い方と、相手に応じた組み立て

開始から全力を出し続けるのは現実的ではありません。7割程度の力で始めて相手の反応を見て、主導権を取れる瞬間に一気に上げる組み立てが有効です。

🔸 力を伝えるための体の使い方:

  • 上半身をやや前傾させ、体重を腕に乗せる
  • 立位では足で床を踏み、体重移動を使う
  • 肩を前へ出し、テコが有利になる位置を取る
  • 力を入れる瞬間も息を止めず、ゆっくり吐く

相手が力任せに来るなら、正面から受けずにつり手で腕を伸ばさせます。逆に技術で崩してくる相手には、グリップの段階で相手の得意な形を作らせないことが対策になります。

体重差・体格差があっても腕相撲で勝つ方法

体格差は無視できませんが、勝敗を決める唯一の要素でもありません。何がどれくらい効いているのかを整理します。

体重と勝敗の関係|階級制が示していること

先に挙げた身体的因子の研究では、体重と勝率の相関は0.31で、測定した4項目のうち最も弱いものでした。ただしこの研究の対象は体重65〜70kgに限定された16名で、大きな体重差の影響は評価されていません。

一方、競技としてのアームレスリングは体重別の階級制を採用しています。国際アームレスリング連盟のシニア階級は、男子が57・63・70・78・86・95・105・105超kg、女子が52・57・63・70・78・78超kgの区分です。階級制が存在すること自体が、体重差が勝敗に影響するという競技界の合意を示しています。

体格差を技で埋める|つり手が有効になる条件

体格で劣る場合、正面からの力比べは不利です。有効なのは、相手の力が出る形を作らせないことです。

つり手が有効なのは、相手の肘が伸びるほど力が急激に落ちるためです。指先を吊り上げて腕を伸ばさせれば、相手は太い腕を持っていても力を伝えられません。加えて、開始直後の一瞬で有利な形を作る「ファーストムーブ」の精度が、体格差を覆す鍵になります。

前腕の長さとテコ|体格の何が効いているのか

体格のうち、勝率と強く相関していたのは体重ではなく前腕長(相関0.64)でした。これはテコの構造で説明できます。

腕相撲は肘を支点としたテコで、前腕が短いほど支点から力点までの距離が短く、同じ筋力でも大きなトルクを生みます。つまり前腕が短い人は構造的に有利です。ここは鍛えて変えられない部分なので、長い側の人はつり手のように距離を活かす技を選ぶことが対策になります。

腕相撲で腕が折れる原因と防ぎ方

腕相撲は上腕骨が折れることがある競技です。仕組みを知れば避けられる事故なので、押さえておく価値があります。

上腕骨螺旋骨折が起きる仕組み|相反する回旋力

腕相撲で起きる骨折は、ぶつけて折れるのではなくねじれて折れるのが特徴です。自分の肩と腕が生む内向きのトルクと、相手からの外向きの抵抗トルクが上腕骨で拮抗し、骨にねじり応力が集中します。

腕相撲中の上腕骨螺旋骨折の症例報告(Cureus)によれば、骨折部位の約90%は上腕の遠位3分の1で、この部位の皮質が相対的に薄いことが関与すると指摘されています。約20%の症例で橈骨神経麻痺を伴いますが、報告された例ではいずれも回復しています。若い男性に多いのも特徴で、骨が弱いから折れるわけではありません。

危険な姿勢|肘が浮く・肩が落ちる・体をひねる

同じ症例報告では、アマチュアほどリスクが高いと指摘されています。理由は姿勢で、肘をテーブルに置いて肩の高さで腕を安定させる形が取れていないことが挙げられています。

⚠️ 骨折リスクが上がる条件:

  • 肘がテーブルから浮き、腕が体から離れている
  • 肩を肘の高さより下へ落としている
  • 体をひねって腕にトルクを足している
  • ウォームアップなしで、いきなり爆発的に力を入れる

競技ルールでは肩を肘パッドの高さ以下に落とす姿勢が「デンジャラスポジション」としてファウルに指定されており、JAWAの公式ルール規則は肘が浮くエルボーファウルとあわせて、この姿勢を禁じています。ルールがそのまま安全対策になっている例です。

手首・肘を痛めないためのウォームアップと負荷の上げ方

骨折以外では、肘の内側の腱の炎症が起きやすい部位です。前腕を回内させる動作を繰り返すことが原因になります。

対策は単純で、手首と前腕を温めてから始めること、いきなり全力で組まないこと、そして痛みが出たら中断することです。手首のサポーターは過度な背屈を防ぎ、安定性を高める効果があります。前腕のトレーニング日を毎日連続させないことも、腱を守るうえで効果があります。

アームレスリングと腕相撲の違い

同じ動作に見えますが、競技として整備されているかどうかで中身が変わります。

ルールとセッティングの違い

項目腕相撲アームレスリング
場所飲み会や休憩時間などカジュアルな場公認規格の専用テーブル、審判が立ち会う
開始姿勢明確な規定なし手首のセンタリング、肘のパッド固定など細部まで規定
勝敗判定相手の手の甲が机に触れたら勝ち手首の自然な線がタッチパッド下に入った時点
反則規定なしエルボーファウル、ショルダーファウル、危険姿勢など

公認テーブルは上面920×660mm、テーブル面までの高さ1015mm、エルボーパッドは178mm四方と細かく決められています。規定の細かさは公平性のためだけでなく、怪我を防ぐためでもあるという点が、カジュアルな腕相撲との最大の差です。

なお国内には複数の統括団体が並立しています。JAWA日本アームレスリング連盟は国際アームレスリング連盟(IFA)系、オールジャパンアームレスリング連盟(AJAF)は世界アームスポーツ連盟(WAF)系で、それぞれ独自に大会を運営しています。

トレーニング方法と要求される体力要素の違い

腕相撲は短時間で決着するため、瞬発力と爆発的なパワーの比重が高くなります。トレーニングも上半身の筋力と握力を中心とした一般的な内容で足ります。

対してアームレスリングは、拮抗した状態が長引くことを前提に組み立てます。前腕の持久力と等尺性の強さが重視され、技ごとの専用ハンドルで回内・回外を鍛え分けるなど、種目の選び方が競技特有になります。数分に及ぶ攻防に備えるため、心肺機能まで対象に入ります。

まとめ

腕相撲の強さは腕の太さではなく、前腕・技術・姿勢の3つで決まります。まず鍛えるのは握力と手首の屈曲・回内を担う前腕筋群で、そのうえで広背筋と肩の内旋筋群が続きます。実測データでは肩関節の内旋力が勝率と最も強く相関しており、腕だけの競技ではないことがわかります。

技術面では、つり手(トップロール)とかみ手(フック)の使い分けが軸になります。両者の違いは前腕の回旋方向で、つり手は回内、かみ手は回外です。体格で劣る場合はつり手で相手の腕を伸ばさせる戦い方が有効です。

トレーニングを始めて最初の2〜4週間の伸びは神経系の適応によるもので、見た目が変わる前に力は伸びます。そして肘をテーブルから離さないことが、強さと安全の両方に効きます。まずは前腕の種目を1つ、今日から日課に加えてみてください。


まとめ:腕相撲強化のための7つのポイント

腕相撲は握力だけで勝てますか?

握力は必要ですが、それだけでは足りません。健康な男性を対象にした研究では握力と勝率の相関は0.45で、肩関節の内旋力(0.75)や前腕長(0.64)より低い値でした。

腕相撲で左右の強さが違うのは普通ですか?

普通です。利き手は日常生活での使用頻度が高く、神経の伝達効率も高いため差が出ます。両腕を同じように鍛えると、総合的な強さが上がります。

筋トレなしで腕相撲が強くなる方法はありますか?

技術と姿勢の改善だけでも勝率は上がります。手首を曲げた状態を保つ、肘を体から離さない、つり手で相手の腕を伸ばさせるの3点は、筋力を変えずに実行できます。

どの筋肉を鍛えると最も効果的ですか?

前腕筋群を最優先にしてください。次いで広背筋と肩の内旋筋群、上腕二頭筋の順です。ハンマーカール、リストカール、懸垂の3種目で主要部位をカバーできます。

腕相撲で腕が折れることは本当にありますか?

あります。上腕骨のねじれによる螺旋骨折で、約90%が上腕の遠位3分の1で起こります。肘をテーブルから離さず、肩を肘より下に落とさなければ、リスクは大きく下がります。

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参考サイト・出典:


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