「若い頃と同じメニューなのに、なぜこんなに痛むのか」——40代になって筋トレを続けていると、肩や膝に走る鋭い痛みに戸惑うことが増えてきます。休むべきなのか、それとも続けていいのか。その判断がつかないまま、不安を抱えながらジムに通っている方も多いのではないでしょうか。
実は、40代は体が大きく変わる時期。厚生労働省のデータによると筋肉量は40歳以降で急激に減少し、関節軟骨も弾力性を失っていきます。若い頃と同じ感覚でトレーニングを続けることが、知らず知らずのうちに関節への負担を蓄積させているのです。
この記事では、日本整形外科学会や厚生労働省の情報をもとに、40代で関節痛が増える理由から筋肉痛との見分け方、肩・肘・膝・手首の部位別対処法、そして痛みがあっても筋トレを継続する方法まで詳しく解説します。
読み終える頃には、自分の痛みが「休むべきサイン」なのか「続けてよい痛み」なのかを判断でき、関節を守りながら筋トレを長く続ける方法が分かるようになります。
結論から言えば、40代の関節痛は「諦めるサイン」ではなく、トレーニング方法を見直すタイミング。正しい知識があれば、痛みと上手に付き合いながら体づくりを続けることは十分に可能です。
40代で筋トレ中の関節痛が増える理由
加齢による体の変化を理解する
40代は体が大きく変わる時期です。厚生労働省の情報によると、筋肉量は40歳以降で急激に減少するとされています。
40代の体に起こる主な変化:
- 🦴 筋肉・靭帯の萎縮:ホルモンバランスの変化により筋肉や靭帯が萎縮しやすくなる
- 🦴 軟骨のすり減り:長年の使用により関節軟骨が摩耗し、弾力性が低下する
- 🦴 回復力の低下:若い頃より筋肉や組織の修復に時間がかかる
- 🦴 関節液の減少:潤滑油の役割を果たす関節液が減り、動きがスムーズでなくなる
日本整形外科学会によると、関節軟骨は加齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減って関節が変形することがあります。50歳以上の1,000万人が変形性膝関節症による膝痛を経験しているというデータもあり、40代から予防を意識することが重要です。
関節痛を引き起こす筋トレ習慣
年齢による体の変化に加え、日々のトレーニング習慣も関節痛の原因になります。
関節痛を招きやすい習慣:
- ⚠️ 若い頃と同じ重量・頻度での継続:回復力が落ちている体に過剰な負荷がかかる
- ⚠️ フォームの崩れ:疲労時にフォームが乱れ、関節に不自然な力がかかる
- ⚠️ ウォームアップ不足:関節が温まっていない状態での高負荷トレーニング
- ⚠️ オーバーユース(使いすぎ):同じ部位を休息なく鍛え続ける
特に40代で筋トレを再開した方は、久しぶりの運動で関節の可動域が狭くなっているにもかかわらず、必要以上に動かそうとして痛みを引き起こすケースが多く見られます。
筋肉痛と関節痛の見分け方|休むべき痛みの判断基準
トレーニング後の痛みが「筋肉痛」なのか「関節痛」なのかを見極めることは、適切な対処をするうえで非常に重要です。
筋肉痛と関節痛のセルフチェック
| チェック項目 | 筋肉痛の特徴 | 関節痛の特徴 |
|---|---|---|
| 可動域 | 正常に動かせる | 動きに制限がある |
| 持続期間 | 2〜3日で治まる | 1週間以上続くことが多い |
| 痛みの場所 | 筋肉全体に広がる | 関節の一点に集中 |
| 痛みの出方 | 動かすと軽くなることも | 動かすと悪化しやすい |
| 腫れ・熱感 | ほとんどない | 伴うことがある |
筋肉痛がある時の筋トレ完全ガイドでも解説していますが、可動域が正常で2〜3日で治まれば筋肉痛、可動域に異常があり1週間以上続くなら関節痛を疑いましょう。
筋トレを休むべき痛みのサイン
以下の症状がある場合は、無理せずトレーニングを中断すべきです。
🚨 休息が必要なサイン:
- 動作中に鋭い痛みが走る
- 腫れや熱感がある
- 痛みで可動域が狭くなっている
- 日常生活に支障が出ている(着替え、階段など)
- 夜間も痛む
これらの症状があるまま筋トレを続けると、症状が悪化して回復に長期間かかる可能性があります。
筋トレを続けてよい痛みの目安
一方、以下の特徴があれば筋肉痛と判断でき、軽めのトレーニングは継続可能です。
✅ 継続してよい痛みの特徴:
- 筋肉全体に広がる鈍い痛み
- 動かすと軽くなる
- 2〜3日で自然に軽減する
- 可動域は正常
ただし、痛みが残っている部位は避け、別の部位を鍛える「分割法」を活用するのがおすすめです。
【部位別】40代の筋トレ関節痛への対処法
ここからは、筋トレで痛めやすい4つの部位(肩・肘・膝・手首)について、それぞれの特徴と対処法を解説します。
肩の痛み|四十肩・五十肩への対応
40代で最も多い肩の悩みが**四十肩(肩関節周囲炎)**です。肩の関節を構成する骨、軟骨、靭帯が老化して炎症を起こすことで痛みが生じます。
四十肩・五十肩の特徴と見極め方
🔍 四十肩を疑うべき症状:
- 腕を上げる途中で痛みが出る(特に横から上げるとき)
- 服の着脱など腕を後ろに回す動作が困難
- 夜間にじっとしていても痛む(夜間痛)
四十肩には「急性期(炎症期)」「拘縮期」「回復期」があり、急性期は安静が必要です。無理に動かすと症状が悪化します。
痛みがあるときに避けるべき種目
❌ 避けるべき種目:
- ショルダープレス:肩関節に大きな負荷がかかる
- ベンチプレス(肩甲骨を寄せられない場合):肩に負担が集中
- 懸垂:ぶら下がる動作で肩に牽引力がかかる
肩に痛みがあってもできる代替種目
⭕ 代替種目:
- インクラインダンベルプレス:角度を調整して可動域を制限
- ケーブルフライ:軽負荷で胸筋を刺激できる
- ラットプルダウン:狭い可動域でゆっくり行う
肩のインナーマッスル(ローテーターカフ)強化法
慢性期以降は、肩を安定させる**ローテーターカフ(回旋筋腱板)**を強化することで回復を早められます。
💪 おすすめのトレーニング:
- エクスターナルローテーション:軽いダンベルで外旋運動
- インターナルローテーション:チューブを使った内旋運動
- サイドライイングローテーション:横向きに寝て行う外旋運動
重量は0.5〜2kg程度の軽いもので十分です。重すぎると逆効果になります。
肘の痛み|筋トレで起こりやすい肘関節の問題
肘の痛みは痛む場所によって原因が異なります。
肘の痛みの原因と特徴
| 痛む場所 | 考えられる原因 | 関連する動作 |
|---|---|---|
| 肘の内側 | 屈筋群の過負荷(ゴルフ肘) | アームカール系 |
| 肘の外側 | 伸筋群の過負荷(テニス肘) | プッシュ系・グリップ |
| 肘を伸ばすと痛い | 上腕三頭筋・腱への負担 | ディップス・プレス系 |
肘に痛みがあるときに避けるべき種目
❌ 避けるべき種目:
- スカルクラッシャー:肘関節への負担が極めて大きい
- プリーチャーカール:肘が固定されるため負荷が集中
- ナローグリップベンチプレス:肘への負担増
肘を守る代替種目と工夫
⭕ 代替の工夫:
- ケーブル種目への切り替え:負荷が一定で関節に優しい
- EZバーの活用:手首・肘への負担を軽減するグリップ
- 重量を下げて回数を増やす:関節への衝撃を減らす
膝の痛み|40代に多い膝関節の悩み
膝は体重を支える荷重関節であり、40代から痛みを感じる方が急増します。
膝の痛みの原因と特徴
🔍 膝痛のパターン:
- 立ち上がり・歩き始めの痛み:動作開始時に強く、動いているうちに軽減
- 階段の上り下りでの痛み:特に下りで痛みやすい
- しゃがむときの痛み:深くしゃがむほど痛みが増す
これらは変形性膝関節症の初期症状である可能性があります。
膝に痛みがあるときに避けるべき種目
❌ 避けるべき種目:
- フルスクワット:深くしゃがむと膝関節への負担大
- レッグプレス(高重量):膝の曲げ角度が深い場合
- ランジ:膝が前に出すぎるフォームの場合
膝を守る代替種目
⭕ 代替種目:
- ボックススクワット:椅子や台に座る高さで止めて可動域を制限
- レッグエクステンション(低負荷):座った状態で膝を伸ばす
- ヒップスラスト:膝への負担を軽減しながら臀筋・ハムストリングスを鍛える
膝を支える筋肉の強化法
膝周りの筋肉を強化することで、関節への負担を分散できます。
💪 おすすめのトレーニング:
- 大腿四頭筋セッティング:膝を伸ばしたまま太ももの前側に力を入れる
- クッション挟み運動:内転筋を鍛えて膝を安定させる
- ヒップリフト:仰向けでお尻を持ち上げて大臀筋を強化
手首の痛み|筋トレで傷めやすい手首への対策
プッシュアップ、ベンチプレス、ショルダープレスなど、手首に体重や重量がかかる種目で痛みが出やすくなります。
手首の痛みの原因
⚠️ 手首を痛める要因:
- プッシュ系種目での過負荷:手首が過度に反る姿勢
- グリップの握りすぎ:前腕の過緊張
- 手首の角度の問題:まっすぐ保てずにひねった状態
手首を守る工夫
⭕ 対策:
- リストラップの活用:手首を固定して安定させる
- ニュートラルグリップへの変更:手首をまっすぐ保てるグリップ
- ダンベル種目への切り替え:バーベルより手首の自由度が高い
関節痛対策に役立つサポーターの選び方と使い方
サポーターは痛みのある関節を保護し、安心してトレーニングを行うための有効なツールです。ただし、使い方を間違えると逆効果になることもあります。
部位別サポーターの選び方
| 部位 | 種類 | 用途・特徴 |
|---|---|---|
| 膝 | 日常用サポーター | 保温・軽い固定。歩行時の安心感 |
| 膝 | スポーツ用サポーター | 関節の安定化。運動中の横ブレ防止 |
| 肘 | エルボーバンド | 腱への負担軽減(テニス肘・ゴルフ肘向け) |
| 肘 | エルボースリーブ | 圧迫・保温。軽い運動時のサポート |
| 手首 | リストラップ | 押す動作のサポート。ベンチプレス等に |
| 手首 | リストストラップ | 引く動作のサポート。デッドリフト等に |
筋トレ時のサポーター使用で注意すべきこと
サポーターは便利ですが、依存しすぎると問題が生じます。
⚠️ 注意点:
- 長時間使用による筋力低下のリスク:常に着用すると、本来働くべき筋肉が弱くなる
- 動作中のみ使用し、休息時は外す:血行を妨げないため
- サポーターに頼りすぎず筋力強化を並行する:根本的な解決は筋力アップ
サポーターはあくまで一時的なサポートと考え、痛みの原因に対処することが大切です。
痛い部位を休ませながら筋トレを継続する方法
関節痛があるからといって、すべての運動を中止する必要はありません。痛い部位を避けながらトレーニングを継続することで、筋力の低下を防げます。
分割法で痛みのない部位を鍛える
🔄 分割法の例:
- 肩が痛いとき:下半身・腹筋に集中(スクワット、レッグプレス、クランチなど)
- 膝が痛いとき:上半身・体幹に集中(ベンチプレス、ロウイング、プランクなど)
- 全身に痛みがあるとき:軽い有酸素運動(ウォーキング、水中運動など)
重量・回数の設定についてはRM法を参考に、無理のない範囲で調整しましょう。
低負荷トレーニングへの切り替え方
高重量トレーニングが難しい場合は、負荷を下げて回数を増やすアプローチが有効です。
📉 切り替えの目安:
- 重量を50%に落として回数を増やす:関節への衝撃を減らしつつ筋肉を刺激
- マシン種目への切り替え:軌道が安定しており関節への負担を軽減
- 自重トレーニングの活用:自分の体重を使った低負荷エクササイズ
痛みがあっても行える運動
関節への負担が少ない運動として、以下がおすすめです。
✅ 関節に優しい運動:
- 水中ウォーキング:浮力で関節への負担が大幅に軽減
- エアロバイク:膝痛時でも可動域を調整しながら有酸素運動が可能
- 軽いストレッチ:可動域を維持しながら血行を促進
40代からの関節痛を予防する筋トレ習慣
痛みが出てから対処するのではなく、予防習慣を身につけることが40代以降のトレーニングには欠かせません。
関節を守るウォームアップの具体例
ウォームアップは単なる準備運動ではなく、関節を保護するための重要なプロセスです。
🔥 ウォームアップメニュー:
- 動的ストレッチ(5分):体を動かしながら関節の可動域を広げる
- 関節の回旋運動:肩、肘、手首、股関節、膝、足首をゆっくり回す
- 軽い重量でのアップセット:メインセットの50%程度で2〜3セット
筋トレとストレッチの正しい順番も参考にしてください。
インナーマッスルを鍛えて関節を安定させる
大きな筋肉だけでなく、関節を支えるインナーマッスルを鍛えることで怪我のリスクを減らせます。
💪 部位別インナーマッスルトレーニング:
- 肩:ローテーターカフトレーニング(前述)
- 腰・体幹:腹圧を高めるコアトレーニング(ドローイン、プランク)
- 股関節:中臀筋トレーニング(サイドレッグレイズ)
関節の回復を助ける栄養素と食材
食事面からも関節の健康をサポートできます。日本で手に入りやすい食材を中心に、意識的に摂取しましょう。
| 栄養素 | 働き | おすすめ食材 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 筋肉・靭帯の修復 | 鶏胸肉、卵、大豆製品 |
| コラーゲン | 軟骨・腱の構成成分 | 手羽先、牛すじ、魚の皮 |
| ビタミンC | コラーゲン合成を促進 | ピーマン、ブロッコリー、柑橘類 |
| オメガ3脂肪酸 | 炎症を抑える働き | サバ、イワシ、サンマ |
筋肉痛に効く食べ物と栄養素でも詳しく解説しています。
クールダウンとリカバリーの重要性
トレーニング後のケアも、関節の健康を維持するうえで欠かせません。
❄️ クールダウンメニュー:
- 静的ストレッチ(10分):トレーニングで使った筋肉を伸ばす
- フォームローラーでの筋膜リリース:筋肉のこわばりをほぐす
- 入浴による血行促進:温かいお湯で筋肉と関節を温める
フォームローラーの効果と正しい使い方や筋トレ後の入浴で疲労回復効果アップも参考になります。
関節痛で病院を受診すべきサイン
セルフケアで改善しない痛みは、専門家の診断を受けるべきです。
こんな症状は整形外科へ
🏥 受診が必要なサイン:
- 痛みが2週間以上続く
- 腫れ・熱感が引かない
- しびれを伴う
- 夜間痛で眠れない
- 関節がロックして動かない
早期に受診することで、重症化を防げる場合があります。
病院で行われる検査と治療
🩺 主な検査・治療:
- レントゲン・MRIによる画像診断:骨や軟骨の状態を確認
- 消炎鎮痛薬の処方:炎症と痛みを抑える
- リハビリテーション:理学療法士による運動療法
- 注射療法:ヒアルロン酸注射など
整形外科を受診する際は、「どのような動作で痛むか」「いつから痛むか」「どの程度の痛みか」を具体的に伝えられるよう準備しておきましょう。
よくある質問
- 四十肩・五十肩は筋トレで治る?
-
急性期(強い炎症期)は安静が必要ですが、慢性期以降は適切な筋トレで回復を早められます。特にインナーマッスル(ローテーターカフ)の強化が有効とされています。
- 筋肉痛が少し残っている状態で筋トレしてもいい?
-
軽い筋肉痛なら問題ありませんが、強い痛みが残っている場合は回復を優先しましょう。別の部位を鍛える分割法がおすすめです。
- 膝が痛いときにやってはいけないことは?
-
深くしゃがむ動作、ジャンプ、急な方向転換、長時間の正座は避けましょう。階段の上り下りも控えめにするのが無難です。
- 関節が痛いとき、冷やすべき?温めるべき?
-
急性期(腫れ・熱感あり)は冷やして炎症を抑えます。慢性期(鈍い痛み)は温めて血行を促進することで回復を助けます。
- 関節痛があるとき、プロテインは飲んでいい?
-
問題ありません。むしろタンパク質は筋肉の修復に必要です。コラーゲンやビタミンCも意識して摂取すると関節の回復をサポートできます。
- サポーターをつけたまま筋トレしてもいい?
-
トレーニング中の使用は可能です。ただし、長期間頼りすぎると周囲の筋力が低下するため、筋力強化と並行して使用することが大切です。
- 関節が鳴るのは異常?
-
痛みや腫れを伴わない「ポキポキ」という音だけであれば、多くの場合は問題ありません。ただし、痛みや違和感を伴う場合は受診をおすすめします。
- 40代でも筋肉はつく?
-
つきます。筋肉量の減少は避けられませんが、適切なトレーニングと栄養摂取により、40代以降でも筋肉を増やすことは可能です。
まとめ
40代の筋トレで関節痛が増えるのは、加齢による体の変化が主な原因です。痛みを放置せず、筋肉痛と関節痛を見分け、適切に対処することが大切です。
ポイントを整理すると、可動域の異常や1週間以上続く痛みは関節痛を疑い、無理せず休息をとること。部位別の代替種目を活用すれば、痛い箇所を休ませながら筋トレを継続できます。インナーマッスルの強化、ウォームアップの徹底、栄養面からのケアで予防も可能です。
2週間以上痛みが続く場合や、腫れ・しびれ・夜間痛がある場合は、自己判断せず整形外科を受診しましょう。40代からのトレーニングは「無理をしない」「体と対話する」姿勢が、長く健康を維持する秘訣です。
【参考情報】

