自宅で腕立て伏せを続けているのに、手首が痛くて途中でやめてしまう。フォームを工夫しても改善せず、「このまま続けて本当に効果があるのか」と不安になっていませんか?
通常の腕立て伏せには構造的な限界があります。床に手をつく姿勢では手首が90度以上曲がり、関節への負担が集中。さらに、胸が床に触れた時点で動作が止まるため、可動域が制限され筋肉への刺激も不十分になりがちです。
プッシュアップバーは、この2つの課題を同時に解決します。複数の筋電図研究でも、グリップを握ることで肩安定筋の活性化が向上し、可動域の拡大による筋刺激の増加が確認されています。
この記事では、プッシュアップバーの科学的な効果、正しい向き(ハの字・平行・逆ハの字)、初心者から上級者までの回数目安、失敗しない製品の選び方まで網羅的に解説します。
読み終える頃には、手首の痛みを気にせず、自宅で本格的な大胸筋トレーニングを始められるようになります。
結論から言えば、プッシュアップバーは1,500円程度の投資で腕立て伏せの質を大きく変えられる、費用対効果の高いトレーニング器具です。
プッシュアップバーとは|腕立て伏せとの違い

プッシュアップバーは、床から手を浮かせた状態で腕立て伏せを行うためのトレーニング器具です。グリップを握ることで手首が自然な角度を保てるため、通常の腕立て伏せよりも安全かつ効果的なトレーニングが可能になります。
プッシュアップバーの基本構造と特徴
プッシュアップバーは、グリップ部と接地部から構成されるシンプルな器具です。トレーニングの目的や好みに応じて、様々な素材や形状の製品から選択できます。
主な素材と特徴:
| 素材 | 特徴 | 耐荷重目安 | 価格帯 |
|---|---|---|---|
| プラスチック製 | 軽量で持ち運びやすい | 90〜100kg | 1,000〜2,000円 |
| スチール製 | 高い耐久性と安定性 | 150kg以上 | 2,000〜4,000円 |
| 木製 | 自然な握り心地と高級感 | 200〜300kg | 3,000〜6,000円 |
通常の腕立て伏せとの3つの違い
プッシュアップバーと通常の腕立て伏せには、以下の明確な違いがあります。

① 手首の角度が異なる 通常の腕立て伏せでは手首が90度以上曲がり、手根管への圧迫が生じます。プッシュアップバーを使用すると手首は15〜30度程度の自然な角度を維持できるため、関節への負担が軽減されます。

② 可動域が拡大する 床に手をつく腕立て伏せでは、胸が床に触れた時点で動作が止まります。プッシュアップバーを使用すると手の位置より深く体を沈められるため、大胸筋の伸張範囲が広がります。

③ グリップの安定性が向上する バーを握ることで手のひら全体に力が分散され、より安定したフォームを維持しやすくなります。
プッシュアップバーの効果とメリット
プッシュアップバーの効果は、複数の筋電図(EMG)研究によって検証されています。特に肩安定筋の活性化や可動域拡大による筋刺激の増加が確認されています。
可動域が広がり筋肉への刺激が増加する

プッシュアップバーを使用する最大のメリットは、可動域の拡大です。バーの高さ分(一般的に10〜15cm)だけ深く体を沈められるため、大胸筋の伸張性収縮が強化されます。
筋トレにおいて**フルレンジモーション(最大可動域での運動)**は筋肥大に効果的とされており、プッシュアップバーはこれを実現する手軽な方法です。
可動域拡大による効果:
- 大胸筋全体への刺激増加:より深い位置まで胸を落とすことで、上部・中部・下部をバランスよく刺激
- 上腕三頭筋への負荷向上:肘関節の屈曲角度が深くなり、より強い収縮が促進される
- 肩甲骨周辺筋群の活性化:グリップ厚さと肩安定筋の活性化に関する研究では、適切なグリップ厚さで三角筋前部や大胸筋の活性化が有意に増加
手首への負担が軽減される

通常の腕立て伏せでは、手首が大きく背屈(反る方向に曲がる)した状態で体重を支えます。この姿勢は手根管症候群や腱鞘炎のリスク要因となります。
プッシュアップバーを使用すると、手首はニュートラルポジション(自然な角度)を維持できます。これにより以下のメリットが得られます。
手首保護のメリット:
- 長時間のトレーニングが可能:手首の疲労や痛みを軽減
- 既存の手首トラブルがある方も継続しやすい:負担を最小限に抑えられる
- 正しいフォームを維持しやすい:手首の不快感による姿勢の崩れを防止

鍛えられる筋肉と期待できる変化
プッシュアップバーで鍛えられる主な筋肉は、通常の腕立て伏せと同じです。ただし、可動域の拡大により各筋肉への刺激強度が増加します。
| 筋肉 | 役割 | 期待できる変化 |
|---|---|---|
| 大胸筋 | メインターゲット | 胸板の厚み・横幅の増加 |
| 上腕三頭筋 | 押す動作の補助 | 二の腕の引き締め・筋力向上 |
| 三角筋前部 | 肩の安定化 | 肩周りのシルエット改善 |
| 前鋸筋 | 肩甲骨の安定化 | 姿勢改善・肩こり予防 |
| 体幹筋群 | 姿勢保持 | コア強化・腹筋の引き締め |
プッシュアップバーの正しい使い方
プッシュアップバーの効果を最大限に引き出すには、正しいフォームと適切な設置方法が不可欠です。
基本フォームとグリップの握り方

🔰 グリップの基本 プッシュアップバーを握る際は、手のひら全体でバーを包み込むように握ります。力加減は、バーが回転しない程度の自然な強さを意識しましょう。過度な握力は前腕に余計な負担をかけます。
📐 正しい体勢のポイント
基本姿勢の重要な要素:
- 肩幅よりやや広めの設置で安定感を確保
- 背筋をまっすぐに伸ばし、頭からかかとまでを一直線に保つ
- 腹筋に力を入れ、体幹を安定させる
- 肘は45度程度の自然な開きを維持
- 視線は床から30cm程度前方に向ける
⚠️ よくある間違いと修正方法
| 間違い | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 腰が下がる・反る | 腰椎への負担増加 | 腹筋に力を入れ一直線を維持 |
| 肘が開きすぎる | 肩関節への負担増加 | 上腕を体に近づけ45度を意識 |
| 反動を使う | 筋肉への刺激が減少 | ゆっくりコントロールした動作 |
| 呼吸を止める | 血圧上昇・パフォーマンス低下 | 下降時に吸い、上昇時に吐く |
プッシュアップバーの向きと効果の違い|ハの字・平行・逆ハの字

プッシュアップバーの配置を変えることで、異なる筋肉への刺激を得ることができます。
ハの字配置(初心者におすすめ)
バーを外側に30度程度開いた状態で設置します。
- 肩甲骨の自然な可動により、スムーズな動作が可能
- 大胸筋外側への効果的な刺激
- 関節への負担が少なく、安全性が高い
平行配置(標準的な配置)
バーを肩幅に合わせて平行に設置します。
- 大胸筋全体をバランスよく刺激
- オーソドックスかつ万能な配置
- 深い胸の沈みで可動域を最大化
逆ハの字配置(上級者向け)
バーを内側に20〜30度向けて設置します。
- 大胸筋内側部への集中的な刺激
- 上腕三頭筋への負荷増加
- 手首・肩への負担がやや増加するため、慣れてから挑戦
傾斜タイプの使い方と効果

傾斜(スロープ)付きのプッシュアップバーは、角度調整によってトレーニング強度を変えられる製品です。
📊 傾斜の有無による違い
| 項目 | 傾斜なし(フラット) | 傾斜あり |
|---|---|---|
| 手首の角度 | ニュートラル | より自然な角度を維持 |
| グリップ感 | 標準的 | 手のひらにフィットしやすい |
| 強度調整 | 配置変更で対応 | 角度で細かく調整可能 |
| 価格帯 | 安価 | やや高め |
傾斜タイプは手首への負担をさらに軽減したい方や、微調整しながらトレーニングしたい方に適しています。一方、シンプルなフラットタイプでも十分な効果が得られるため、初心者はフラットタイプから始めることをおすすめします。
よくある間違いと修正方法
🚫 避けるべき動作パターン
- スピードを重視しすぎる:筋肉への刺激が減少。2秒で下降、1秒で上昇を目安に
- 可動域を途中で止める:せっかくの深さを活かせない。胸がバーより下がるまで沈む
- 首を上げすぎる・下げすぎる:頸椎への負担増加。視線は床の少し前方に固定
- 息を止める:血圧上昇のリスク。動作中は自然な呼吸を継続
プッシュアップバーの回数と頻度|効果的なトレーニング設計
プッシュアップバーを使ったトレーニングで効果を出すには、適切な回数設定と継続的な実施が重要です。
初心者の目安回数と段階的な増やし方

プッシュアップバーは通常の腕立て伏せより可動域が広がる分、負荷が高くなります。初心者は無理をせず、段階的に回数を増やしていきましょう。
📈 レベル別の目安回数
| レベル | 1セットの回数 | セット数 | 休憩時間 |
|---|---|---|---|
| 入門(膝つき) | 5〜10回 | 2〜3セット | 60〜90秒 |
| 初心者 | 8〜12回 | 3セット | 60秒 |
| 中級者 | 15〜20回 | 3〜4セット | 45〜60秒 |
| 上級者 | 20回以上 | 4〜5セット | 30〜45秒 |
10回できない場合の対処法

プッシュアップバーで10回できない場合は、負荷を下げた状態から始めることが重要です。無理に回数をこなそうとするとフォームが崩れ、効果が半減します。
✅ 段階的なステップアップ方法
- 膝つきプッシュアップ:膝を床につけて負荷を軽減(体重の約50〜60%の負荷)
- インクラインプッシュアップ:台や椅子に手をついて角度をつける(高さで負荷調整)
- ネガティブのみ:下降動作だけをゆっくり行い、筋力をつける
- 通常のプッシュアップバー:フォームを維持できる回数から開始
💡 ポイント 「きつい」と感じるのは負荷が適切な証拠です。ただし、フォームを維持できる回数で止めることが重要。回数より質を優先しましょう。
継続のコツについては、筋トレが続かない理由と解決法も参考にしてください。
週何回・1日何セットが効果的か
📅 推奨トレーニング頻度
- 週3〜4回が効果的(連続した日に行わない)
- 1日3〜4セットを目安に
- 同じ部位は48〜72時間空ける(筋肉の回復期間)
筋肉はトレーニング後の回復期間に成長します。毎日行うと回復が追いつかず、オーバートレーニングになる可能性があります。
初心者向けトレーニングプログラム
プッシュアップバーを初めて使う方向けに、4週間で基礎を固めるプログラムを紹介します。
膝つきプッシュアップから始める4週間プラン

📋 週ごとの目標
| 週 | 種目 | 回数×セット | 頻度 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1週目 | 膝つきプッシュアップ | 8回×2セット | 週3回 | フォーム習得を優先 |
| 2週目 | 膝つきプッシュアップ | 10回×3セット | 週3回 | 可動域を意識 |
| 3週目 | 通常+膝つき混合 | 5回+8回×3セット | 週3〜4回 | 徐々に負荷を上げる |
| 4週目 | 通常プッシュアップ | 8〜10回×3セット | 週3〜4回 | フォーム維持を確認 |
負荷を調整する方法

プッシュアップバーのトレーニングは、以下の方法で負荷を調整できます。
⬇️ 負荷を下げる方法
- 膝をつく
- 手の位置を高くする(インクライン)
- 動作スピードを上げる(筋持久力向上)
⬆️ 負荷を上げる方法
- 足の位置を高くする(デクライン)
- 動作スピードをゆっくりにする
- 一時停止を入れる(ボトムポジションで2秒停止)
- ウェイトベストを着用する
上級者向けプッシュアップバートレーニング

基本のプッシュアップに慣れたら、バリエーション種目で刺激を変えていきましょう。
応用バリエーション5選

① ワイドプッシュアップ 手幅を肩幅の1.5倍程度に広げて行う。大胸筋外側への刺激が増加。
② ナロープッシュアップ 手幅を肩幅より狭くして行う。上腕三頭筋への負荷が増加。研究では、ナロー幅で大胸筋と上腕三頭筋の活性化が最も高いことが確認されています。
③ デクラインプッシュアップ 足を台や椅子に乗せて行う。大胸筋上部と三角筋前部への刺激が増加。
④ アーチャープッシュアップ 片腕を横に伸ばしながら、もう片腕で体を支える。片腕ずつ強い負荷をかけられる。
⑤ プランシェプッシュアップ 手を腰の位置に置き、前傾姿勢で行う超上級種目。全身の筋力とバランスが必要。
高強度プログラムの組み方
上級者向けに、週4回の分割プログラム例を紹介します。
| 曜日 | 種目 | 回数×セット |
|---|---|---|
| 月曜 | ワイドプッシュアップ + ノーマル | 各15回×4セット |
| 水曜 | ナロープッシュアップ + ダイヤモンド | 各12回×4セット |
| 金曜 | デクラインプッシュアップ + アーチャー | 各10回×4セット |
| 日曜 | ノーマル(高回数) | 25回×5セット |
さらに高強度のトレーニングを求める方は、チンニングスタンド使い方ガイドでディップスなどの種目も取り入れてみてください。
プッシュアップバーの選び方とおすすめ商品
プッシュアップバーは製品によって素材・グリップ・安定性が異なります。自分のトレーニング目的に合った製品を選びましょう。
素材・グリップ・安定性の選び方

🔍 選び方の重要ポイント
耐荷重 体重の1.5〜2倍以上の耐荷重がある製品を選びましょう。トレーニング中は体重以上の力がかかります。
グリップ素材
| 素材 | 特徴 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| スポンジ | 柔らかく手に優しい | 初心者・短時間使用 |
| ゴム | 滑りにくく耐久性が高い | 汗をかきやすい人 |
| 木製 | 手に馴染み劣化しにくい | 長期使用・高頻度使用 |
接地面の安定性 接地面が広い製品ほど安定します。特に初心者は、底面が広く滑り止め加工がある製品を選びましょう。
目的別おすすめ商品
初心者向け:アディダス プッシュアップバー 広い接地面と適度な高さ(12cm)で安定感があり、価格も手頃(約2,900円)。耐荷重100kgまで対応。
上級者向け:ハービンジャー プッシュアッププロ 耐荷重200kg以上で、プランシェやL-sitなどの高度なトレーニングにも対応。価格は約4,000円以上。
コスパ重視:アルインコ プッシュアップバー 約1,500円でありながら耐荷重100kgを確保。シンプルな構造で必要十分な機能を備えています。
トレーニング環境を整えるなら、ヨガマット・トレーニングマットの選び方も参考にしてください。
メンテナンスと長期使用のコツ

🧹 日常的なケア方法
- 使用直後に乾いた布で汗を拭き取る
- 週1回程度は中性洗剤で丁寧に拭く
- 清掃後は完全に乾燥させる
- グリップ部分は特に丁寧に清掃する
🔧 定期的な点検ポイント
- ネジやボルトのゆるみ確認(月1回)
- グリップの摩耗状態チェック
- 接地面の損傷有無
- 本体のゆがみや亀裂の確認
📦 適切な保管方法
- 直射日光を避ける
- 高温多湿な場所を避ける
- 平らな場所に置く
- 重い物を上に載せない
よくある質問(FAQ)
- プッシュアップバーは本当に効果があるのか?
-
はい、効果があります。可動域が広がることで大胸筋や上腕三頭筋への刺激が増加し、手首への負担も軽減されます。複数の研究で肩安定筋の活性化向上が確認されています。
- 効果が出るまでどのくらいかかるのか?
-
週3〜4回の継続で、一般的に4〜6週間で筋力向上を実感できます。見た目の変化は8〜12週間程度かかることが多いです。
- カロリー消費量はどのくらいか?
-
体重70kgの人が10分間行った場合、約50〜70kcal程度です。負荷の高いバリエーションや回数を増やすことで消費量は増加します。
- 自作は可能か?
-
塩ビパイプなどで自作する方法もありますが、安全性の観点からおすすめしません。市販品は1,500円程度から購入でき、耐荷重や安定性が確保されています。
- 腕立て伏せ100回を目指すコツは?
-
まず正しいフォームで連続20回を目標にし、徐々に回数を増やします。週3〜4回のトレーニングを継続し、3〜6ヶ月かけて段階的に目標に近づけましょう。
まとめ

プッシュアップバーは、可動域の拡大と手首への負担軽減という2つのメリットにより、通常の腕立て伏せより効果的なトレーニングを可能にする器具です。
初心者は膝つきプッシュアップから始め、フォームを習得してから徐々に回数と強度を上げていきましょう。週3〜4回、1回3〜4セットを目安に継続することで、4〜6週間で効果を実感できます。
製品選びでは、耐荷重・グリップ素材・接地面の安定性を確認し、自分の体格とトレーニング目的に合ったものを選んでください。1,500〜3,000円程度の投資で、自宅トレーニングの質を大きく向上させることができます。
他の自宅トレーニング器具については、筋トレに必要なもの完全ガイドで詳しく解説しています。腹筋を鍛えたい方は、腹筋ローラーの効果と使い方も参考にしてください。
【参考情報】
- Effects of push-up exercise on shoulder stabilizer muscle activation according to the grip thickness of the push-up bar(PMC)
- Shoulder electromyography activity during push-up variations: a scoping review(PMC)

