ビールのコーンスターチは体に悪いのか|入れる理由・味の違い・入っていない銘柄

コンビニでビール缶の原材料表示を真剣に読む若い女性

ビールの原材料欄にある「コーン、スターチ」の文字が気になったまま、なんとなく飲み続けている方は多いのではないでしょうか。

ネットで調べると「コーンスターチは血糖値を上げる」「添加物だから危険」という情報が出てくる一方で、「醸造中に分解されるから問題ない」という説明も見かけます。どちらも断定的に書かれているため、何が本当なのか判断がつかないというのが実情です。

この記事では、ビール醸造の化学と公開されているデータをもとに、確認できた事実と、現時点では確認できていない事実を分けて整理します。

結論を先に言えば、コーンスターチはでんぷんとして最終製品にほとんど残りません。ただし「だから何も心配ない」と言い切れるだけの実測データも、実は揃っていません。

目次

ビールの「コーン」と「スターチ」は別の原料

ビールの原材料欄は「麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ」のように書かれていることが多く、「コーンスターチ」という1つの原料だと思われがちです。しかし実際には、「コーン」と「スターチ」は別々の原料として使われています。

コーンはとうもろこしの粉砕物(コーングリッツ)

「コーン」と表記されているのは、コーングリッツと呼ばれる、とうもろこしを粗く挽いたものです。胚乳部分を粉砕したもので、醸造の途中で麦芽の酵素によって糖に変えられ、アルコール発酵の材料になります。

スターチはでんぷん(主にコーンスターチ)

「スターチ」はでんぷんのことで、主にとうもろこしから取り出したコーンスターチが使われます。片栗粉のような白い粉末で、これも糖化されてアルコールの材料になります。

コーングリッツとコーンスターチの違いは、精製の度合いです。コーングリッツは胚乳をそのまま砕いたものでたんぱく質や脂質が残っていますが、コーンスターチは、とうもろこしを水に浸して分離・精製し、でんぷんだけを取り出したものです。この「水に浸す」工程が、後で触れる亜硫酸の話につながります。

「コーンスターチ」と「コーン、スターチ」表記の違い

原材料欄の表記には2つのパターンがあります。

表記意味
コーンスターチとうもろこし由来のでんぷん(1つの原料)
コーン、スターチコーングリッツとでんぷん(2つの別原料)

日本のビールの多くは「コーン、スターチ」と読点で区切られており、2種類の原料を使っていることを示しています。

酒税法上の「ビール」の定義と副原料の使用上限

ここで、混同されやすい数字が3つあります。国税庁のビール定義改正に関するQ&Aで確認できる、2018年4月改正後の「ビール」の要件は次のとおりです。

項目基準
麦芽の使用比率50%以上(改正前は67%以上)
米・とうもろこし・でんぷん・糖類などの副原料麦芽重量の50%以下
2018年に新たに認められた副原料(果実・香味料など)麦芽重量の5%以下

よく見かける「副原料は麦芽重量の5%まで」という説明は、3つ目の数字だけを取り出したものです。コーンやスターチが当てはまるのは2つ目で、麦芽重量の50%まで使えます。法律上は、かなりの量を使える設計になっています。

ビールにコーンスターチを入れる理由

なぜ麦芽だけで作らないのか。理由は味の設計、発酵のコントロール、原料調達の3つに整理できます。ただし、どれが主な理由なのかを裏づける一次資料は、実は限られています。

麦芽のタンパク質を減らして味を軽くする

麦芽100%で仕込むと、麦芽由来のたんぱく質やアミノ酸、ポリフェノールが多く残り、濃醇でコクのある味わいになります。

コーングリッツやコーンスターチは、成分のほとんどがでんぷんで、たんぱく質をほとんど含みません。副原料として加えると、発酵に使える糖は供給しながら、味に厚みを与える成分だけが相対的に薄まります。サッポロビールも副原料についての解説記事で、副原料は「厚みのもとになる成分が少ない」ため濃醇さが和らぐと説明しています。

この説明は原料の組成から見て筋が通っています。ただし、麦芽比率を変えたときにたんぱく質量や泡持ちが実際にどう変わるかを定量的に示した公開データは見つかりませんでした。「なぜすっきりするか」の説明は成り立ちますが、「どれだけすっきりするか」は数字で示されていません

発酵度と泡質のコントロール

コーンスターチを使うと、麦芽だけの場合より発酵度を高くできます。でんぷんが酵素で分解されると発酵しやすい糖になるため、残糖の少ないドライな仕上がりに寄せられます。

また、たんぱく質が少ないことで泡の性質も変わります。麦芽100%ビールは泡がクリーミーになりやすい一方、副原料入りビールはシャープな泡立ちになる傾向があります。

原料コストと調達の安定

麦芽は大麦を発芽させて作るため、収穫量や品質が天候に左右されます。一方、とうもろこしとそのでんぷんは大量生産されており、供給量が安定しています。年間数億本単位で製造するメーカーにとって、原料の安定調達は経営課題です。

ただし、「副原料を使うとどれだけ安くなるか」を示す公的統計や業界データは見つかりませんでした。コスト削減効果があるという説明は各所で見かけますが、金額として検証できる資料は公開されていません

酒税の一本化で副原料を使う理由は変わるか

これは現在進行形で動いている話です。ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税率は段階的に近づけられ、2026年10月に一本化されます

その動きに合わせて、キリンビールは新ジャンルの「本麒麟」を麦芽100%の生ビールへ切り替えると発表しました(アルコール分も6%から5%へ変更)。税率差がなくなれば、税区分に合わせて原料構成を決める必要は薄れます。

もし副原料を使う理由が味の設計だけなら、税率が変わっても構成は変わらないはずです。実際にどの銘柄が変わり、どれが変わらないかは、副原料を使う本当の理由を判断する観測材料になります

コーンスターチ入りビールと麦芽100%ビールの味の違い

副原料の有無は、味わいに違いをもたらします。どちらが良い悪いではなく、目指す方向が違うということです。

副原料入りビールの飲み口:軽快さとキレ

🍺 副原料入りビールの特徴:

  • 雑味が少なく、ゴクゴク飲める軽快さ
  • 後味が引かないシャープなキレ
  • 冷やして食事と合わせやすい爽快感

アサヒ スーパードライ、キリン ラガービール、サッポロ 生ビール黒ラベルが代表例です。

麦芽100%ビールの飲み口:コクと麦の香り

🍺 麦芽100%ビールの特徴:

  • 飲みごたえのあるコク
  • モルトの香ばしさと甘み
  • 余韻が長く、複雑な味わい

ヱビスビール、ザ・プレミアム・モルツ、一番搾り生ビールなどが該当します。

「まずい」と感じるのは副原料のせいか

「副原料入りはまずい」という声は、多くの場合、好みの問題です。副原料入りビールは「すっきり系」を目指して設計されているため、濃い味を求める人には物足りなく感じられます。逆に、麦芽100%ビールを「重い」「苦い」と感じる人もいます。

もう一点、押さえておきたいことがあります。同じ副原料入りでも、スーパードライとキリンラガーでは味の方向がかなり違います。副原料の有無だけで味が決まるわけではなく、ホップの種類や量、酵母、仕込み方法のほうが差として大きく出ます。「副原料入りだからまずい」という説明では、この違いを説明できません。

ビールのコーンスターチは体に悪いのか

「コーンスターチは体に悪い」という情報を見かけます。ビール醸造の化学とデータから、順に確認します。

でんぷんは糖化・発酵で分解され、最終製品にはほとんど残らない

コーンスターチはでんぷん(炭水化物)で、そのまま大量に摂れば血糖値の急上昇などの影響があります。しかしビール醸造では事情が異なります。

💧 ビール醸造で起きていること:

  • 糖化:麦芽の酵素がでんぷんを糖(麦芽糖・ブドウ糖)に分解する
  • 発酵:酵母が糖をアルコールと炭酸ガスに変える
  • 完成:でんぷんはほぼ残らず、大部分がアルコールに変わっている

つまり、コーンスターチは最終製品のビールにでんぷんとしてはほとんど残っていません。でんぷんのまま摂った場合の血糖への影響を、そのままビールに当てはめることはできません。

ただし、「でんぷんが残らない」ことと「炭水化物が残らない」ことは別です。酵母が分解しきれない糖(デキストリンなど)は残り、これがビールの糖質として表示されています。

糖質・カロリー・プリン体は麦芽100%ビールとどう違うか

では、実際の数字を並べてみます。各社が公表している栄養成分値(100mlあたり)です。

スクロールできます
銘柄副原料糖質エネルギープリン体
アサヒ スーパードライあり3.0g42kcal5〜6mg
サッポロ 生ビール黒ラベルあり2.9g40kcal7.5mg
サッポロ ラガービールあり2.9g40kcal8.0mg
キリン 一番搾り生ビールなし2.6g40kcal9.0mg
ヱビスビールなし3.0g42kcal11mg
サッポロクラシックなし2.5g40kcal11mg
ザ・プレミアム・モルツなし3.6g47kcal

糖質は2.5〜3.6gの範囲に収まっており、副原料の有無で糖質が変わるという傾向は読み取れません。最も低いサッポロクラシックも、最も高いザ・プレミアム・モルツも、どちらも麦芽100%です。

プリン体はむしろ逆の傾向で、麦芽100%の3銘柄(9.0〜11mg)が副原料入りの3銘柄(5〜8mg)を上回っています。麦芽の使用量が多いほどプリン体が増えるという説明と整合する並びです。

ただしこれは統制された比較実験ではなく、市販銘柄の公表値を並べただけです。銘柄ごとにホップ量も酵母も仕込みも違うため、麦芽比率だけが原因とは言えません。この数値から言えるのは、「副原料入りのほうが体に悪い」を支持する差は見当たらない、というところまでです

ビールで体への影響が最も大きいのはアルコール

ビールが体に与える影響を考えるとき、コーンスターチより圧倒的に影響が大きいのはアルコールです。

⚠️ アルコールで確認されている影響:

  • 肝臓への負担
  • 依存性
  • 睡眠の質の低下
  • 利尿作用による脱水
  • 長期的な発がんリスクの上昇

厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」の目安を、1日あたり純アルコール20g程度(ビール中瓶1本相当)としています。コーンスターチ由来の成分が数ppm残るかどうかを気にするより、アルコールを1日何グラム飲んでいるかのほうが、体への影響としては桁違いに大きいという関係です。

筋トレをしている方は、アルコールが筋肉と筋分解に与える影響も合わせて確認しておくと、飲む量の判断がしやすくなります。

コーンスターチそのものは体に悪いのか

ここでビールを離れて、コーンスターチという素材そのものについても整理しておきます。「コーンスターチは体に悪い」と検索する人が知りたいのは、多くの場合こちらだからです。

精製でんぷん・マルトデキストリンと血糖の関係

精製されたコーンスターチや、それを部分的に分解したマルトデキストリンは、急速消化性でんぷんに分類されます。小腸で速やかにブドウ糖まで分解され、血糖値を短時間で押し上げます。

理由ははっきりしています。食物繊維・たんぱく質・脂質といった、消化を遅らせる成分が製造過程で取り除かれているためです。マルトデキストリンは分子鎖がさらに短く、血糖の上がり方はブドウ糖単体に近くなります。

この性質は、運動中の素早いエネルギー補給には利点になります。粉飴(マルトデキストリン)の使い方と摂取量で扱っているとおり、目的がはっきりしていれば有効な素材です。一方で、加工食品から意識せずに摂り続ける場合は、満腹感を伴わないカロリー源として働きます。

レジスタントスターチという逆の側面

同じコーンスターチでも、構造が違えば作用も変わります。

アミロース比率の高いハイアミロースコーンスターチや、一度加熱して冷やしたでんぷんは、消化酵素の分解を受けにくく大腸まで届きます。これがレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)です。大腸で腸内細菌に発酵され、酪酸などの短鎖脂肪酸を生みます。複数の臨床試験で、精製でんぷんと比べて食後の血糖上昇が抑えられることが報告されています。

つまりコーンスターチは、分子構造と加工の仕方によって、代謝を乱す側にも整える側にも働く素材です。「コーンスターチ」という名前だけで善悪を決めることはできません。

「糖質だから悪い」で切れない理由

同じ糖質量でも、体に入ったときの挙動は形によって変わります。液体か固形か、食物繊維と一緒か単体か、加熱と冷却の履歴があるか。これらが吸収速度を左右します。この考え方はご飯と角砂糖の糖質は科学的に別物で詳しく扱っています。

ビールに話を戻すと、原料としてのコーンスターチは、すでに酵素と酵母を通過しています。飲んでいる人が口にしているのは、精製でんぷんでもマルトデキストリンでもなく、アルコールと、分解しきれずに残った糖です。この段階で「精製でんぷんの血糖リスク」を持ち込むのは、対象が違います。

亜硫酸塩・遺伝子組み換え・グリホサート:確認できることと、できないこと

ここからは、確認できる範囲と確認できない範囲がはっきり分かれる論点です。「安全だ」という結論も「危険だ」という結論も、同じ基準で検証します。

コーンスターチの製造工程で使われる亜硫酸

コーンスターチは「ウェットミリング(湿式製粉)」という方法で作られます。この過程には、とうもろこしを亜硫酸を含む温水に30〜50時間浸す工程があります。たんぱく質のマトリックスを緩め、でんぷんを分離しやすくするためです。

浸漬液中の二酸化硫黄の濃度は、業界団体の資料で0.1%(1,000ppm程度)、研究論文の実験条件で2,200ppmという数字が確認できます。

では最終製品にどれだけ残るのか。米国の業界団体資料には、未修飾コーンスターチで50ppm以下という規制上の上限値が示されています。ただしこれは上限であって、実際にどれだけ残っているかを測った値ではありません。日本国内で流通するコーンスターチの実測残留値は、公開資料からは見つかりませんでした。

ビール中の亜硫酸は酵母も作る:麦芽100%で避けられるかは確認されていない

ここが、この話でいちばん見落とされている点です。

ビール酵母は、発酵の過程で亜硫酸を自然に生成します。海外の解説資料によると、ビール中の亜硫酸塩濃度は一般に1〜10mg/L程度、濾過ビールで最大20mg/L、未濾過ビールで最大50mg/Lとされています。

つまり、副原料をまったく使わない麦芽100%ビールにも、酵母由来の亜硫酸は含まれます。そこにコーンスターチ由来の亜硫酸がどれだけ上乗せされるのか。麦芽100%ビールと副原料使用ビールの亜硫酸濃度を比較した測定データは、今回調べた範囲では見つかりませんでした

制度面では、二酸化硫黄の使用基準が食品ごとに定められており、かんぴょう・乾燥果実・果実酒などが対象に挙がっています。ビールはこの対象食品リストに含まれていません。ビールに二酸化硫黄を添加物として意図的に加えることは想定されていない、と読めます。ただしこれは「残留がない」ことの証明ではありません。制度上想定されていないことと、実測で検出されないことは別の話です。

亜硫酸塩に反応する体質については、WHO/FAOの合同専門家委員会の評価文書に、経口負荷試験で1mg以上から反応の報告があり、10mgでビール摂取時に症状が確認された例、25mgで呼吸機能の低下が見られた例が記載されています。頻度は、ステロイド依存性の重症喘息患者で4〜8%、それ以外の喘息患者では1%未満と推定されています。

整理すると、次のようになります。

✅ 確認できたこと:

  • ビール酵母は発酵中に亜硫酸を生成する
  • ビール中の亜硫酸塩濃度は概ね1〜10mg/Lの範囲にある
  • 亜硫酸塩に反応する体質は、重症喘息患者で4〜8%程度と推定されている

❓ 確認できなかったこと:

  • コーンスターチ由来の亜硫酸がビールにどれだけ持ち込まれるか
  • 麦芽100%ビールと副原料入りビールで亜硫酸濃度に差があるか

したがって、「麦芽100%ビールに替えれば亜硫酸塩を避けられる」という説明は、根拠となる測定データを欠いています。喘息があってワインで症状が出やすい人が銘柄を試し分けること自体は合理的ですが、麦芽100%が亜硫酸ゼロを意味するわけではありません。

「非遺伝子組み換え」の表明は第三者に検証できない

日本の遺伝子組み換え表示制度では、コーンスターチとコーン由来の異性化液糖は表示義務の対象外です。農研機構の解説によれば、精製・加工の過程で組み換えDNAとそれによって生じるたんぱく質が分解・除去され、検査で検出できなくなるためとされています。

この事実には、重要な帰結があります。最終製品を分析しても、原料のとうもろこしが遺伝子組み換えだったかどうかは判定できません。したがって「非遺伝子組み換え原料を使っています」という表明の裏づけは、製品の分析ではなく、原料調達段階の分別流通の記録に依存します。消費者や第三者が製品を測って確かめる方法は、現在の分析技術では存在しません。

各社の現状も確認しました。アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの4社について、公式サイトのコーン・スターチに関する説明ページを個別に見ましたが、ビールのコーン・スターチについて「非遺伝子組み換え原料を使用」と明記した現行のページは見つかりませんでした。3社はコーンとスターチが何であるかの説明にとどまり、サントリーは「遺伝子組換え作物を含むという表示が必要な商品は取り扱っていない」という法令遵守の表明を掲げています。この表明は、上記の表示制度を踏まえると、コーンスターチについては自動的に成り立つ内容です。

市民団体が2014年と2016年に4社へ送った公開質問状への回答として、「ビールのコーンスターチは非遺伝子組み換え、発泡酒・新ジャンルの糖類は遺伝子組み換え不分別」という内容が公開されています。ただしこれは団体側のまとめであり、企業自身の公開表明ではありません。現在も同じ状況かどうかは確認できませんでした。

書けるのはここまでです。「心配ない」とも「危ない」とも、公開されている情報からは判定できません

グリホサートは「除去される」ことを示す実測データが見当たらない

遺伝子組み換えとうもろこしの栽培では除草剤グリホサートが使われることが多く、その残留を気にする声があります。

「ウェットミリングは水を大量に使うので、水溶性のグリホサートは工程水に移って除去される」という説明をよく見かけます。しかし、除去率や工程前後の残留量を実際に測ったデータは、今回調べた範囲では見つかりませんでした。米国の大学の卒業研究では、分析したとうもろこし加工製品から検出可能なレベルは観察されなかったとしつつ、「食品加工がグリホサート濃度に与える影響は依然として不明確」と結論づけています。

一方、ビールを直接測った調査はあります。

📊 ビール・ワインのグリホサート検出報告:

  • 米国のU.S. PIRGが2019年に行った調査では、ビール15銘柄・ワイン5銘柄の計20銘柄中19銘柄から検出(最大51.4ppb、最低4.8ppb、有機原料使用製品でも3.5〜5.7ppb)
  • 日本の民間分析グループが2019年に行った調査では、国内流通のビール類22製品中2製品から痕跡レベルを検出(定量限界未満、推定5〜10ppb)

微量ながら検出はされている、というのが観測されている状態です。この量が健康に影響するかどうかについては国際的な評価機関の間でも見解が分かれており、ビール自体には残留基準が設定されていません。「基準を満たしているから安全」という説明は、そもそも基準が存在しない対象については成り立ちません

わかっているのは、微量の検出報告があること、そして「精製工程で除去されるから残っていない」という説明を支持する実測データが見当たらないことです。ここは「わからない」と書くのが正確です。公的な数値の根拠がどこまで確かめられるかについては、野菜350gという目標値の根拠を検証した記事でも同じ問題を扱っています。

「ビールのコーンスターチで頭痛がする」は本当か

アセトアルデヒドによる頭痛のメカニズム

飲酒後の頭痛でもっとも一般的な原因はアセトアルデヒドです。アルコールは肝臓で、アセトアルデヒド(有害)を経て酢酸(無害)へ、最終的に水と二酸化炭素へ分解されます。

このアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い体質の人は、少量の飲酒でも頭痛や吐き気が出やすくなります。ALDH2の低活性型の遺伝子を1本以上持つ人は、日本人のおよそ半数とされています。この場合、コーンスターチの有無は関係なく、アルコールを含むすべての酒で同じことが起きます。

亜硫酸塩が頭痛の原因という因果は確認されていない

もう一つよく挙げられるのが亜硫酸塩です。「ワインで頭痛がするのは亜硫酸塩のせい」という説明は広く知られています。

ただし、この因果関係を支持する研究は確認できませんでした。ワイン関連団体や医療系メディアの解説でも、「消費者の間で広く信じられているが、明確な実証は乏しい」という趣旨の記述が繰り返し見られます。

飲酒後の頭痛の要因として挙げられているものは複数あります。

  • アセトアルデヒドの蓄積
  • 醸造・熟成の過程で生じる副生成物(コンジナー)
  • ヒスタミン、チラミンなどのアミン類
  • 利尿作用による脱水と、アルコールの血管拡張作用

亜硫酸塩を原因と決めるには、これらを切り分けた検証が必要ですが、その結果は見当たりません。「亜硫酸塩のせいかもしれない」は仮説であって、確認された事実ではありません

銘柄を変えて自分で切り分ける方法

因果が確定していない以上、一般論では答えが出ません。自分の体で切り分けるほうが早道です。

飲んだもの頭痛考えられること
副原料入りビールありアルコールか、それ以外の何か
麦芽100%ビールありアルコール代謝の問題である可能性が高い
麦芽100%ビールなし副原料入りに含まれる何かが関係している可能性

3つ目の場合でも、原因が亜硫酸塩だと特定できるわけではありません。副原料入りビールと麦芽100%ビールは、原料以外にホップも酵母も違うからです。わかるのは「この銘柄では起きて、あの銘柄では起きない」という事実までですが、飲み分けるには十分です。飲む量と体調をそろえて、何回か試してください。

コーンスターチが入っていないビール銘柄【麦芽100%】

大手メーカーの麦芽100%ビール

原材料表示が「麦芽、ホップ」だけの銘柄です。

メーカー銘柄特徴
サッポロヱビスビール長期熟成による深いコクと苦味
サッポロサッポロクラシック北海道限定
サッポロSORACHI 1984日本生まれのホップを使用、アルコール5.5%
サントリーザ・プレミアム・モルツ華やかな香りと深いコク
キリン一番搾り生ビール一番搾り麦汁のみ使用
キリン晴れ風2024年発売の麦芽100%ブランド
キリンハートランドビール麦芽とホップと水だけ

コーン・スターチを使っている主なビール

メーカー銘柄原材料表示
アサヒスーパードライ麦芽(6条大麦、2条大麦)、ホップ、麦、コーン、スターチ
アサヒアサヒ生ビール(マルエフ)麦芽、ホップ、麦、コーン、スターチ
キリンラガービール麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ
サッポロ生ビール黒ラベル麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ

スーパードライについて補足します。現在の原材料表示に「米」はなく、「麦」が入っています。「スーパードライは米・コーン・スターチ」と書かれた情報を見かけますが、現在の表示とは異なります。

原材料表示の読み方と、ビールの原材料表示が任意である点

ここで前提を一つ。酒類は、食品表示法上、原材料名の表示自体が義務ではありません国税庁のQ&Aによれば、義務があるのは添加物の表示で、原材料名・アレルゲン・原産国名は任意表示です。

つまり、缶やラベルの「麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ」は、各社が自主的に載せているものです。書いてある内容は正確ですが、「書いていない=入っていない」とまでは制度上は言い切れない構造になっています。実際には大手各社が表示を続けているため実用上の問題は小さいものの、表示を読んで判断するときには知っておく価値があります。表示から実態を読み取る手順は、コンビニ蕎麦のそば粉割合を表示から比較した記事でも同じ方法をとっています。

✅ 麦芽100%を見分けるポイント:

  • 原材料が「麦芽、ホップ」のみ
  • 「麦芽100%」「オールモルト」の表記がある
  • ドイツ産ビール

📝 副原料入りを見分けるポイント:

  • 原材料に「米」「コーン」「スターチ」「糖類」がある
  • アメリカンラガー、アジアンラガーに多い

ドイツビール・クラフトビールの選び方

ドイツには1516年に定められたビール純粋令(Reinheitsgebot)があります。原文で認められていたのは大麦・ホップ・水の3つで、酵母は入っていません。当時は発酵の仕組みが解明されていなかったためです。

制定の動機としてよく語られるのは「品質を守るため」ですが、歴史的な記録で挙げられているのはそれだけではありません。小麦とライ麦をパン用に確保し、醸造用途との価格競合を防ぐという食糧政策の側面が明確に記されています。粗悪なビールへの対策も動機に挙げられています。

現在は1993年の暫定ビール法として法制化され、下面発酵ビールには水・大麦麦芽・ホップ・酵母のみが認められています。ただし1987年の欧州司法裁判所の判決により、この規制はドイツ国内で醸造・販売されるビールにのみ適用され、輸入ビールには及びません。副原料を避けたい場合、ドイツ産ビールは選択肢の一つになります。

クラフトビールは原材料表示を見れば判断できます。ただし副原料の有無と味の良し悪しは別で、あえて副原料を使う設計のスタイルもあります。

まとめ

コーンスターチはビールの味を軽くするために使われる副原料で、醸造の過程で糖化・発酵を経て分解されるため、でんぷんとしては最終製品にほとんど残りません。糖質・カロリー・プリン体の公表値を並べても、副原料入りビールが麦芽100%ビールより不利という傾向は読み取れませんでした。

一方で、「だから何も心配ない」と言い切れるだけの材料も揃っていません。コーンスターチ由来の亜硫酸がビールにどれだけ持ち込まれるかを測ったデータはなく、「非遺伝子組み換え」という表明を第三者が検証する手段は原理的に存在せず、グリホサートについては微量の検出報告がある一方で「精製工程で除去される」ことを示す実測データが見当たりません。これらは「安全が確認された」ではなく、「確認されていない」というのが正確な状態です。

そのうえで、ビールを飲むことで体に及ぶ影響として桁が違うのは、アルコールそのものです。副原料の有無を気にする前に、飲む量を把握するほうが実益があります。原材料表示を読み分けたい人には、「麦芽、ホップ」だけの銘柄という選択肢が常にあります。


よくある質問

ビールにコーンスターチを入れる理由は?

麦芽のたんぱく質を相対的に減らし、すっきりとキレのある飲み口に仕上げるためです。発酵度の調整や原料調達の安定も理由として挙げられています。

コーンスターチ入りのビールは体に悪いですか?

でんぷんは醸造中に分解され、最終製品にはほとんど残りません。糖質・カロリー・プリン体の公表値でも麦芽100%ビールとの差は読み取れませんでした。ただし亜硫酸やグリホサートについては、安全性を確認できるだけの実測データも公開されていません。

コーンスターチが入っていないビールはどれですか?

原材料表示が「麦芽、ホップ」だけの銘柄です。ヱビスビール、ザ・プレミアム・モルツ、一番搾り生ビール、晴れ風、ハートランドビール、サッポロクラシックなどが該当します。

ビールの「コーン」と「スターチ」は同じものですか?

 別の原料です。「コーン」はとうもろこしを粗く挽いたコーングリッツ、「スターチ」は精製したでんぷん(主にコーンスターチ)を指します。読点で区切られている場合は2種類を使っています。

スーパードライにはコーンスターチが入っていますか?

入っています。現在の原材料表示は「麦芽(6条大麦、2条大麦)、ホップ、麦、コーン、スターチ」で、「米」は含まれていません。

コーンスターチで頭痛がするというのは本当ですか?

亜硫酸塩が頭痛を起こすという因果関係を支持する研究は確認できませんでした。飲酒後の頭痛としてはアセトアルデヒドによるものが一般的です。銘柄を変えて自分で切り分けるのが現実的です。

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参考サイト・出典

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