カーリングはスポーツじゃない?運動神経・体力・筋肉の必要度を数値で検証

氷上でカーリングストーンの前をブラシで全力スウィーピングする日本人女性選手。

カーリングの中継を見て、「これはスポーツじゃないのでは」と感じる人は少なくありません。走り回るわけでも、ぶつかり合うわけでもなく、氷をブラシで掃いているように見えるからです。

先に結論を書くと、カーリングは現在使われているスポーツの定義に当てはまります。一方で、試合全体の運動強度は卓球やバレーボールと同じ中程度で、サッカーやマラソンのような激しい運動ではありません。心拍数が大きく上がるのは、ストーンの前を掃く約20秒間です。

この記事では、「スポーツじゃない」と言われる理由、スポーツの定義との照合、運動量・運動神経・筋肉の必要度を、測定データと現行ルールにもとづいて整理します。

目次

カーリングはスポーツじゃない?結論はスポーツ、ただし運動強度は中程度

カーリングは、ルールにもとづいて勝敗を競い、身体を使って行う競技です。日本のスポーツ基本法やヨーロッパスポーツ憲章の定義ではスポーツに該当し、冬季オリンピックでは1998年の長野大会から正式競技として続いています。

ただし、「激しい運動か」と問われると、答えは見る場面によって変わります。

📊 数値で見たカーリングの負荷:

  • 試合全体の運動強度は4.0メッツ(卓球・バレーボールと同じ値。ジョギングは7.5)
  • スウィーピング中の心拍数は170〜180拍/分前後(約20秒間)
  • 試合時間は約2時間半、1チームの投球数は80投(10エンド制)
  • ストーンの重さは17.24〜19.96kg

カーリングは、中強度の運動が長く続くなかに、短い高強度の運動が何度も入る競技です。「スポーツじゃない」と感じる人が見ているのは前者で、「見た目よりきつい」と話す選手が指しているのは後者です。どちらも事実の一面を捉えています。

カーリングが「スポーツじゃない」「オリンピックにいらない」と言われる理由

見た目の運動量が少なく、掃除のように見える

カーリングには、サッカーやバスケットボールのように走り続ける場面がなく、柔道のような接触もありません。選手は氷の上をゆっくり歩き、静かにストーンを滑らせ、ブラシで氷を擦ります。中継で長く映るのは、作戦を相談している場面とストーンが滑っていく場面です。

この印象は的外れではありません。競技歴1年以上の愛好者110人(平均50歳)に加速度計を着けて試合中の動きを測った米国の研究(Kanters ら、2024年)では、試合時間の約68%が座っているのと同程度か低強度の活動で、高強度の活動は0.03%でした。試合の大半が「激しくない」ことは、測定でも確かめられています。

「氷上のチェス」と呼ばれ、頭脳ゲームの印象が強い

カーリングは「氷上のチェス」と呼ばれます。相手のストーンをどこに残させるか、自分のストーンをどう守るかを、数手先まで読んで一投を決めるためです。スキップ(主将)が的の円(ハウス)を見つめて考え込む姿は、盤面を読む棋士と重なります。

知的な面が強調されるぶん、身体を使う競技という印象は薄くなります。ただ、チェスは考えた手をそのまま盤上に置けますが、カーリングは考えた一投を約38m先に自分の身体で実現しなければなりません。作戦が正しくても、投げる精度と掃く精度が足りなければ得点になりません。

40代・50代の選手がオリンピックに出場している

ミラノ・コルティナ冬季オリンピックでは、米国男子チームの控え選手リッチ・ルオホネンが54歳で出場し、米国の冬季オリンピック最年長出場記録を更新しました。金メダルを獲得したカナダ男子チームのマーク・ケネディは44歳です。

「50代でも出られるなら体力はいらないのでは」という見方が出るのは自然です。実際、カーリングは瞬発力の衰えが致命的になりにくく、経験と投球の安定性で長く戦えます。ただしこれは体力がいらないという意味ではなく、求められる体力の種類が違うということです。

「オリンピックにいらない」という声と、正式競技になった経緯

「カーリングはオリンピックにいらない」という意見は、国内外で繰り返し出てきました。

💬 批判の主な論点:

  • 体力を使っているように見えず、スポーツというよりゲームである
  • 筋力や体格が勝敗を左右しにくい
  • 1試合が長く、テレビ中継に向かない

一方、オリンピックでの実施の経緯は次のとおりです。最初に行われたのは1924年のシャモニー大会で、国際オリンピック委員会(IOC)は2006年にこれを正式なメダル競技と認めました。その後は公開競技として3回(1932年、1988年、1992年)行われ、1998年の長野大会から正式競技です。2018年の平昌大会からは、男女ペアで戦うミックスダブルスも加わりました。

世界カーリング連盟(World Curling)の加盟協会は77(2025年12月時点)です。日本での関心も高く、平昌大会の女子3位決定戦は関東地区の世帯視聴率が25.0%、北京大会の女子決勝は後半が29.2%でした(ビデオリサーチ調べ)。

オリンピックの競技は、運動が激しい順に選ばれているわけではありません。夏季大会にも、射撃やアーチェリーのように精度を競う競技があります。ロサンゼルス夏季大会の競技選定で公表された評価基準も、開催コスト、トップ選手の参加と安全、世界的な人気、男女平等と若者への訴求、公正さ、環境の6分野で、運動強度の高さは項目にありません。運動強度が中程度であることと、オリンピック競技であることは矛盾しません。

カーリングはスポーツなのか:スポーツの定義に当てはめて検証

ジレの「スポーツの3要素」:遊戯・闘争・はげしい肉体活動

フランスのスポーツ史家ベルナール・ジレは、著書『スポーツの歴史』(原著1949年)で、ある運動をスポーツと認める条件として**「遊戯」「闘争」「はげしい肉体活動」**の3つを挙げました。笹川スポーツ財団の解説「スポーツとは何か」でも、スポーツの3要素として紹介されています。

要素カーリングでの該当
遊戯明確なルールと得点方法があり、自発的に楽しむゲームとして成立している
闘争2チームが対戦し、10エンドの合計得点で勝敗が決まる
はげしい肉体活動試合全体は中強度。スウィーピングの約20秒間は高強度

遊戯と闘争は明確に満たします。議論になるのは3つ目だけです。「はげしい」を試合全体の平均で判断すれば該当するとは言いにくく、スウィーピングの局面で判断すれば該当します。「カーリングはスポーツじゃない」という意見は、この3つ目の要素を試合全体の印象で判定したものと整理できます。

スポーツ基本法・ヨーロッパスポーツ憲章でも該当する

ジレより新しい定義は、運動の激しさを条件にしていません。

日本のスポーツ基本法は前文で、スポーツを、心身の健全な発達や健康・体力の保持増進などのために行われる「運動競技その他の身体活動」と位置づけています。欧州評議会のヨーロッパスポーツ憲章(2021年改訂)も、体力や精神的な健康の維持・向上、社会的な関係づくり、競技での成果を目的とする、あらゆる形態の身体活動をスポーツとしています。

どちらも要件は「身体活動であること」で、強度は問いません。約20kgのストーンを投げ、氷上を移動しながら掃くカーリングは、どちらの定義でもスポーツです。

チェス・ダーツとの違いは全身を使う身体活動の有無

チェスは、国際チェス連盟がIOCの承認団体で、アジア競技大会でも実施されてきた頭脳競技です。ただし、駒を動かす動作そのものは勝敗に関係しません。ダーツは投げる精度を競いますが、動作の中心は腕で、移動や全身の筋力発揮はほとんどありません。

カーリングは、作戦を考える点ではチェスに、狙った場所へ正確に届ける点ではダーツに似ています。違うのは、その両方を全身を使って行うことです。

🎯 チェス・ダーツにないカーリングの身体的要素:

  • 片脚で体重を支えながら、低い姿勢で氷上を滑るデリバリー(投球)
  • ストーンと並んで進みながら、ブラシに体重をかけて氷を擦るスウィーピング
  • 約2時間半、滑る氷の上で立ち、歩き、掃き続ける持久力

カーリングは、頭脳競技に全身の身体活動が加わった競技です。頭脳ゲームとスポーツの境界ではなく、スポーツの側にあります。

カーリングに必要な体力と運動量:数値で見る実際の負荷

試合全体の運動強度は4.0メッツ:ボウリング・ゴルフ・ジョギングとの比較

運動強度の目安に、安静時を1としたときの倍率で表すメッツ(METs)があります。身体活動ごとのメッツ値をまとめたCompendium of Physical Activities(2024年版)のスポーツ一覧では、カーリングは4.0メッツです。

活動メッツ
ボウリング3.0〜3.8
ゴルフ(電動カート使用)3.5
普通歩行3.8
カーリング4.0
卓球4.0
バレーボール(全般)4.0
ゴルフ(歩いて回る)4.3〜4.5
野球・ソフトボール5.0
ジョギング7.5
サッカー(試合)9.5

カーリングは3〜6メッツの「中強度」に入り、卓球やバレーボールと同じ値です。ボウリングよりは高く、ジョギングの半分強、サッカーの試合の半分以下にあたります。「カーリングの持久力はマラソンに匹敵する」という説明を見かけますが、それを裏づける測定データは見つかりません。

消費カロリーは「メッツ×体重(kg)×時間」で概算できます。体重70kgの人が2時間半プレーした場合、4.0メッツなら約700kcalです。前述の愛好者の実測値(平均3.05メッツ)で計算すると約530kcalになります。1試合の消費カロリーを直接測った研究は見当たらないため、これは目安の数字です。自分の体重で1日の消費カロリーを確かめたい場合は、基礎代謝量・総消費カロリーの計算ツールが使えます。

スウィーピング中の心拍数は170〜180:約20秒の高強度運動を繰り返す

カーリングで最も負荷が高いのは、ストーンの前の氷を擦るスウィーピングです。選手はストーンと並んで氷上を進みながら、ブラシに体重をかけ、速いときは1秒に約4回のペースで擦ります。

カーリングの運動科学をまとめた総説(Bradley、2009年)は、20秒間の全力スウィーピングで心拍数が平均約170拍/分、人によっては200拍/分近くに達すると報告しています(著者の未発表データ)。ミラノ・コルティナ大会のミックスダブルス銀メダリスト、コーリー・ドロップキン(米国)も、20〜25秒のスウィーピングで心拍数が170〜180まで上がり、次に自分が投げるまでに120以下へ落とすのが理想だと取材に答えています。

20〜30代の最大心拍数の目安(220−年齢)は190〜200拍/分なので、170〜180は全力に近い水準です。

ただし1回は20秒前後で、次のスウィーピングまでに休みが入ります。走り続けるような持続的な運動ではなく、短い全力運動を、間隔を空けて繰り返す運動です。スウィーピング中の酸素摂取量や血中乳酸を測った研究は見当たらず、有酸素・無酸素のどちらにどれだけ依存しているかは、データの上ではまだはっきりしていません。

スウィーパーとスキップで運動量は大きく違う

4人制のカーリングでは、1人が投げ、2人が掃き、スキップがハウス側で指示を出します。投げる順番が早いリードとセカンドは、自分が投げる2投以外のほとんどで掃く役を務めます。

Bradley の総説は、リードとセカンドは1エンドに最大6投、10エンドで最大60投を掃く可能性があると見積もり、掃く距離は理論上1試合で最大約1.7kmとしています。日本カーリング協会の事務局長(当時)も、2018年の取材で、1試合に掃く距離は合計で約2kmになると説明しています(測定方法は示されていません)。

ポジションによる差は、前述の Kanters らの測定にも表れています。中強度以上の活動が占める割合は、セカンドが最も高く約36%、スキップが最も低く約28%でした。スキップは試合時間の約72%が、座っているのと同程度か低強度の活動です。作戦を考えるスキップの姿だけを見ていると、体力を使わない競技に見えるのはこのためです。

約2時間半・1チーム80投を戦い抜く持久力

世界カーリング連盟の現行の競技規則(The Rules of Curling)では、4人制の試合は10エンドで、各エンドに4人が2投ずつ投げます。1試合で1チーム80投、1人あたり20投です。

⏱️ 現行ルールの時間の決まり:

  • 作戦を考える時間(シンキングタイム)は各チーム38分。ストーンが動いている間は時計が止まる
  • 第5エンド終了後の休憩は5分
  • タイムアウトは1試合に1回、60秒
  • 同点の場合は延長(エクストラエンド)で決着をつける

これらを合わせた試合時間は約2時間半で、延長に入ればさらに延びます。古い資料には「各チームの持ち時間は73分」と書かれていますが、これはストーンが動いている時間も含めて計っていた旧ルールの数値です。

この間、選手は約20kgのストーンを扱い、滑る氷の上で姿勢を保ち続けます。寒い会場でも身体への負担は小さくありません。日本人選手16人を対象に、6エンド・90分の練習試合で測定した研究(Tanabe ら、2023年)では、深部体温が平均37.24℃から最高37.73℃まで上がり、試合後には半数の選手が脱水状態でした。

カーリングに必要なのは、マラソンのような高い心肺持久力ではありません。集中と姿勢、そして断続的な全力のスウィーピングを、最後のエンドまで同じ質で続ける持久力です。終盤に掃く力が落ちれば、ストーンを狙った位置まで運べなくなります。

カーリングに運動神経は必要か:求められる能力

瞬発力よりも精密な身体コントロールと再現性

カーリングに運動神経は必要です。ただし、足の速さやジャンプ力のような瞬発系の能力ではありません。求められるのは、同じ動作を同じ精度で繰り返す能力です。

デリバリーでは、ハック(蹴り台)を蹴って低い姿勢で滑り出し、狙った方向へ、狙った速さで、決めた向きの回転をかけてストーンを離します。離すときの速さがわずかに違うだけで、約38m先で止まる位置は大きくずれます。

日本体育大学の岡田隆氏は2018年の取材で、カーリングに求められるのは柔道や水球のような瞬発力や当たりの強さではなく、精密に肉体をコントロールする技術だと説明しています。

氷上のバランス感覚・柔軟性・空間認識

精密な投球とスウィーピングは、次の3つの能力に支えられています。

🧭 デリバリーとスウィーピングを支える能力:

  • バランス感覚:片足の靴底が滑る専用の靴を履き、片脚に体重を乗せたまま滑る。上体がぶれるとストーンの方向がずれる
  • 柔軟性:股関節を深く曲げ、後ろ脚を伸ばした低い姿勢を保つ。日本カーリング協会の選手向け資料も、ストレッチを基本の要素に挙げている
  • 空間認識:ストーンの速さと曲がり方から、どこで止まるかを滑走中に予測する。掃くか掃かないかは、この予測で決まる

スキップには、シート全体のストーンの位置関係と数手先の展開を同時に把握する力も求められます。フィールド全体を上から見ているように把握する能力については、イーグルアイ(俯瞰の目)の正体と鍛え方で解説しています。

運動神経に自信がなくても上達できる理由

カーリングで問われる動作の再現性は、生まれつきの瞬発力と違い、反復練習で伸ばしやすい能力です。走る・跳ぶ・ぶつかる動作がなく、運動強度も中程度なので、体力面の入り口も高くありません。前述の米国の調査では、平均50歳の愛好者がプレーしていました。

一方、トップ選手は競技を始めるのが早い傾向があります。ミラノ・コルティナ大会に出場したフォルティウスの選手は、小学4年から中学1年の間に競技を始めています。楽しむだけなら大人からでも始められますが、世界で戦う精度には長い年数の反復が必要です。

⚠️ 初めて氷に乗るときの注意点:

  • 愛好者の急なケガは9割以上が転倒によるもの(カナダの救急データを分析した Ting ら、2015年)
  • 頭部のケガが約3割を占める
  • 転倒した人の約4割が原因に不適切な靴を挙げており、滑り止め(グリッパー)の付いた靴が予防の基本になる

運動が苦手な大人が新しくスポーツを始めるときの考え方は、運動音痴の大人に向いた習い事とスポーツの選び方でまとめています。

カーリングで使う筋肉と選手の筋トレ

デリバリーで使う筋肉:大腿四頭筋・ハムストリングス・体幹

デリバリーは、片脚を深く曲げたランジに近い姿勢で氷上を滑る動作です。体重のほとんどを、前に出した滑る側の脚で支えます。

男子選手16人の滑る側の脚を筋電図で調べた研究(Hua ら、2025年)は、太ももの前側の大腿四頭筋、太ももの裏側のハムストリングス、ふくらはぎ、すねの筋肉を測定しています。つま先側で滑るフォームでは、膝を曲げ伸ばしする力が32〜41%大きくなり、股関節まわりの負担も増えました。

上体をぶらさずにストーンを離すには、体幹の安定も必要です。日本カーリング協会の選手向け資料は、安定したデリバリーとパフォーマンス全体に影響する要素として体幹の筋力を挙げています。

なお、ストーンは約20kgありますが、持ち上げるのではなく氷の上を滑らせます。腕力で押し出すのではなく、推進力はハックを蹴る脚から生まれます。

スウィーピングで使う筋肉:上腕三頭筋・三角筋・広背筋

スウィーピングは、前傾姿勢でブラシに体重を乗せ、押す・引くを高速で繰り返す動作です。

韓国の男子中高生選手10人の上半身12か所を筋電図で測った研究(Kwon ら、2021年)では、ブラシを押す局面で上腕三頭筋、引く局面で広背筋と三角筋の活動が大きくなりました。

動作主に使う筋肉役割
デリバリー大腿四頭筋・ハムストリングス低い姿勢の保持、ハックを蹴る推進力
デリバリー体幹(腹筋群・背筋群)上体の安定、ストーンの方向の制御
スウィーピング(押す)上腕三頭筋ブラシを前へ押し出す
スウィーピング(引く)広背筋・三角筋ブラシを引き戻す
スウィーピング全体体幹前傾姿勢でブラシに体重を乗せ続ける

Bradley の総説によると、カーリングで多いケガは膝・腰・肩で、最もケガにつながりやすい動作はスウィーピングです。よく使う部位とケガの多い部位が重なるため、筋力トレーニングは競技力と故障予防の両方に関わります。

トップ選手の筋トレメニューと頻度

日本カーリング協会が公開している選手向け資料「カーリング競技におけるトレーニング」は、下半身の筋力、強く速いスウィーピングのための上半身の筋力、体幹の筋力を必要な要素に挙げ、次の種目を例示しています。

💪 日本カーリング協会の資料にある種目例:

  • 下半身:スクワット、レッグプレス、レッグエクステンション、レッグカール
  • 上半身:ベンチプレス、ショルダープレス、ラットプルダウン、腕立て伏せ
  • 体幹:腹筋運動、肘立て支持(プランク)、サイドブリッジ、片脚ブリッジ

負荷の目安は目的別で、筋肉を大きくするなら6〜12回できる重さで3〜6セット、筋持久力を高めるなら12回以上できる重さで2〜3セットです。デリバリーは片脚で体重を支える動作なので、片脚で行うランジも動きの近い種目です。下半身種目の基本はスクワットの種類と正しいフォームで、セット数の考え方は筋トレのセット数の決め方で解説しています。

頻度については、前述のドロップキン選手が、ウエイトトレーニングを週4日、有酸素運動と高強度インターバルを週3日行っていると取材に答えています。日本では、ロコ・ソラーレがトレーナーの指導のもとで柔軟性・体幹・全身のコンディショニングに取り組んでいることが紹介されています。日本のトップチームの具体的な頻度を公表した資料は確認できませんでした。

トレーニングの効果を調べた研究もあります。トルコのエリート選手24人(男女各12人)が12週間の筋力トレーニングを行ったところ、膝・股関節・肘を伸ばす筋力が向上しました(Yılmaz ら、2023年)。

カーリングは何がすごい?何が面白い?

約38m先のハウスに数センチ単位で止める精度

カーリングのシートは全長45.72mです。投げる側のハックから、狙うハウスの中心までは約38mあります。ハウスの直径は3.66mで、中心の円(ボタン)は半径15cmほどです。

選手はこの距離で、直径約29cmのストーンを相手のストーンの陰に隠したり、わずかに当てて位置を入れ替えたりします。ミラノ・コルティナ大会のショット率(記録員が1投ごとに採点した得点率)は、個人トップが男子92.5%、女子92.0%でした。チーム別でも、最高は男子88.7%、女子85.0%です。

得点は、ハウスの中心に最も近いストーンを持つチームに入ります。両チームのストーンが目で見て判別できないほど近いときは、専用の計測器で中心からの距離を測ります。狙いはセンチ単位、判定はミリ単位になることがあるのがカーリングです。

スウィーピングで距離を最大約4m伸ばし、曲がり幅も変える

「掃いて意味があるのか」と思われがちですが、スウィーピングは投げた後のストーンを操作できる唯一の手段です。カナダのカーリング解説サイトの整理では、氷やスウィーパーの条件が良ければ、掃くことでストーンの到達距離は約1.2〜4.3m伸びます。

仕組みについては、ブラシの摩擦熱で氷の表面温度が上がり、ストーンとの摩擦が減るという説明が有力です。Marmo らの研究(2006年)では、氷表面の温度は最大で約2℃上昇しました。表面がわずかに融けて水の膜ができるという説と、ブラシが氷の表面を削る効果を重視する説があり、どちらがどれだけ効いているかは研究者によって見方が分かれています。

曲がり方も変えられます。ストーンの進路を左右均等に掃くと曲がりは小さくなります。片側だけを掃くと掃いた側と反対に曲がる傾向があることは、立教大学の研究グループが78回の投球実験で確かめています。

ブラシの性能で結果が左右されすぎないよう、世界カーリング連盟は公式戦で使えるブラシの素材を承認制にしています。

数手先を読む戦略と4人の連携

1投ごとに選ぶショットは、大きく3種類あります。

🧠 基本のショット:

  • ドロー:ハウスの中の狙った位置に止める
  • テイクアウト:相手のストーンに当てて外へ出す
  • ガード:ハウスの手前に置き、後ろのストーンを守る

各エンドは最後に投げる後攻が有利です。そのため、先攻は失点を最小限に抑え、後攻は2点以上を狙うのが基本の考え方になります。スキップは、氷の状態、ストーンの配置、得点差、残りのエンド数から一投を決めます。考える時間は1試合38分で、80投で割ると1投あたり30秒足らずです。

決めた作戦を実現するのは4人の連携です。投げ手がストーンを離した瞬間から、スウィーパーはストーンの速さを、スキップは曲がり具合を見て声を掛け合い、掃く強さとやめるタイミングを調整します。頭で決めたことを、4人の身体でその場で修正しながら形にするのが、カーリングの面白さです。

自宅で試すなら:卓上カーリングゲームと入門書

カーリングに興味を持ったら、まず手軽な方法で仕組みに触れてみるのがおすすめです。

🏠 自宅で始めやすい選択肢:

  • 卓上カーリングゲーム:小さなストーンを卓上で滑らせる玩具。通販で1,500〜5,000円程度(執筆時点)。配置と当て方の考え方を遊びながら覚えられる
  • 入門書:日本カーリング協会オフィシャルブックの学研『新 みんなのカーリング』(1,540円)は、ルール・用具・投げ方と掃き方の基本を扱う。2014年の刊行なので、持ち時間などは現行ルールと照らして読む
  • ストーン型の商品:通販には花崗岩製のストーンもあるが、直径24cmで約7.5kgなど、競技用(約20kg)より小さく軽いものが中心

床で行うフロアカーリングやカーレットの用具は10万円以上するため、個人で買うより、自治体や施設のレクリエーション行事で体験するのが現実的です。

まとめ:カーリングは中強度の運動に高強度のスウィーピングが加わるスポーツ

カーリングは、スポーツ基本法やヨーロッパスポーツ憲章の定義でスポーツに該当し、1998年の長野大会からオリンピックの正式競技です。「スポーツじゃない」と感じる理由にも根拠はあり、試合全体の運動強度は卓球やバレーボールと同じ4.0メッツで、時間の大半は低〜中強度です。

一方、スウィーピングの約20秒間は心拍数が170〜180拍/分まで上がります。約20kgのストーンを片脚の低い姿勢で投げ、約38m先にセンチ単位で止める精度も求められます。必要なのは瞬発力よりも、同じ動作を繰り返せる身体のコントロールと、最後のエンドまで質を落とさない持久力です。

激しさだけで測れば控えめでも、頭で決めた作戦を全身で実現する点で、カーリングはチェスやダーツと異なるスポーツです。

カーリングについてよくある質問(FAQ)

カーリングはオリンピックにいらないのでは?

オリンピックの競技は運動の激しさで選ばれているわけではなく、カーリングは1998年の長野大会から正式競技として続いています。世界カーリング連盟には77の協会が加盟し、日本でも女子の試合が視聴率25〜29%を記録しており、競技体制と観戦需要の両方があります。

カーリングにはどのくらいの体力が必要ですか?

試合全体は4.0メッツの中強度で、卓球やバレーボールと同程度です。ただしスウィーピング中は心拍数が170〜180拍/分まで上がるため、掃く役のリードとセカンドには、全力運動を約2時間半繰り返せる体力が求められます。

運動神経が悪くてもカーリングはできますか?

できます。必要なのは瞬発力ではなく、同じ動作を正確に繰り返す能力で、反復練習で伸ばせます。初めての人は転倒によるケガが多いので、滑り止めの付いた靴を使ってください。

カーリング選手は筋トレをしますか?

します。日本カーリング協会の資料は、スクワット、ベンチプレス、ラットプルダウン、体幹種目などを例示しています。海外のトップ選手には、ウエイトトレーニングを週4日行う例もあります。

スウィーピングは意味がないのでは?

意味があります。条件が良ければストーンの到達距離を約1.2〜4.3m伸ばせ、掃き方によって曲がり幅も変えられます。

カーリングのストーンの重さと値段は?

重さはハンドル込みで17.24〜19.96kgと規則で決まっています。オリンピックで使われるスコットランド・アルサクレイグ島産の花崗岩製ストーンは1個750〜800ポンドで、執筆時点の為替では15〜16万円前後です。

カーリングの試合時間はどのくらいですか?

4人制は10エンドで約2時間半、同点なら延長に入ります。作戦を考える持ち時間は各チーム38分で、「73分」は旧ルールの数値です。

カーリングは何歳までできますか?

愛好者として楽しむ分には年齢の上限は特にありません。米国の調査では平均50歳の愛好者がプレーしており、トップレベルでもミラノ・コルティナ大会に54歳の選手が出場しています。


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参考サイト・出典:

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