鼻の周りから冷たい風が入ってくる。ゴーグルが曇って前が見えない。せっかくゲレンデに来たのに、ゴーグルのフィット感が悪くて滑りに集中できない——そんな経験はありませんか?
この問題の原因は、欧米人向けに設計されたゴーグルを日本人が使用していることにあります。海外ブランドのゴーグルは鼻が高く彫りの深い骨格を基準に作られているため、日本人が装着すると鼻の部分に隙間ができてしまうのです。
本記事では、国産ブランドや各メーカーのアジアンフィットモデルを徹底調査し、鼻の隙間が生まれるメカニズムから正しいゴーグルの選び方、そして既存ゴーグルのDIY補修方法まで詳しく解説します。
この記事を読めば、自分の顔に合ったゴーグルの見つけ方がわかり、曇りや風の侵入に悩まされない快適なスノボライフを手に入れられます。
結論からお伝えすると、日本人には国産ブランド(SWANS・DICE)が最もフィットしやすく、海外ブランドを選ぶ場合は「Asian Fit」「Low Bridge Fit」の表記確認が必須です。ただし、最も重要なのは——続きをご覧ください。
アジアンフィットとは?鼻の隙間が生まれる理由

ゴーグルと鼻の間に隙間ができる根本的な原因は、日本人と欧米人の骨格の違いにあります。海外ブランドのゴーグルは欧米人の顔に合わせて設計されているため、そのまま日本人が使用するとフィットしないケースが多いのです。
欧米人と日本人の骨格の違い
欧米人と日本人(アジア人)では、顔の骨格に明確な違いがあります。
| 特徴 | 欧米人 | 日本人(アジア人) |
|---|---|---|
| 鼻の高さ | 高い | 比較的低い |
| 顔の横幅 | 狭め | 広め |
| 頭の形状 | 前後に長い楕円形 | 丸形に近い |
| 顔全体の凹凸 | 彫りが深い | 平面的 |
海外メーカーのゴーグルは、鼻が高く彫りの深い欧米人の顔に合わせて設計されています。そのため、フレームのカーブがきつく、鼻周りの高さも高く設定されており、日本人が装着すると鼻の部分に隙間ができやすいのです。
アジアンフィットとグローバルフィットの構造的な差
アジアンフィットとは、アジア人の骨格に合わせて調整されたゴーグルのことです。グローバルフィット(USフィット)との主な違いは以下の通りです。
🔍 構造的な違い:
- 鼻周りのスポンジ(フォーム):アジアンフィットは厚みを増して鼻の低さを補う
- フレームのカーブ:アジアンフィットはカーブを緩やかにして広い顔幅に対応
- フレーム幅:アジアンフィットは横幅を広く設計
アジアンフィットのゴーグルは、スポンジの厚みやフレームのカーブを調整することで、日本人の顔にもピッタリ合いやすい設計になっています。
アジアンフィット・ジャパンフィット・Low Bridge Fitの表記の違い
メーカーによってアジア人向けモデルの呼び方が異なるため、購入時に混乱することがあります。
| 表記 | 意味 | 主な使用メーカー |
|---|---|---|
| Asian Fit | アジア人向け設計 | OAKLEY、SMITHなど |
| Japan Fit | 日本人向け設計 | 各社共通 |
| Low Bridge Fit | 鼻が低い人向け設計 | OAKLEY |
| ASIA FIT | アジア人向け設計 | GIROなど |
これらはすべて同じ意味と考えて問題ありません。いずれの表記があるゴーグルも、日本人の顔にフィットしやすい設計になっています。
鼻の隙間がスノボに与える悪影響

ゴーグルと鼻の間に隙間があると、単なる不快感だけでなく、安全性や快適性に深刻な影響を及ぼします。
ゴーグル内が曇る
鼻周りに隙間があると、自分の呼気がゴーグル内に入り込み、レンズが曇る原因となります。
曇りが発生するメカニズム:
- 隙間から温かい息がゴーグル内に侵入する
- ゴーグル内部の温度が上昇する
- 外気との温度差でレンズ内側に結露が発生する
レンズが曇ると視界が悪くなり、斜面の凹凸や障害物が見えにくくなるため、転倒や衝突のリスクが高まります。
雪や風が侵入する
鼻の隙間からは、息だけでなく雪や冷たい風も侵入してきます。
⚠️ 隙間から侵入するもの:
- 滑走中の風(目が乾燥する原因)
- パウダーや降雪時の細かい雪
- リフト乗車中の風
特に深雪(パウダー)を滑ったり、吹雪の中で滑走すると、隙間から雪が大量に入り込み、ゴーグル内が雪だらけになることもあります。
フィット感・快適性の低下
隙間があるゴーグルは、顔への密着が不十分なため全体的なフィット感が悪化します。
滑走中にゴーグルがずれやすくなったり、バンドをきつく締めすぎて頭痛の原因になったりと、一日中快適に滑るための障害となります。
アジアンフィットゴーグルの正しい選び方
アジアンフィットのゴーグルを選ぶ際は、単に「アジアンフィット」と書いてあるものを選ぶだけでは不十分です。実際に試着して確認すべきポイントがあります。

必ず試着してフィット感を確認する
ゴーグル選びで最も重要なのは、必ず店頭で試着することです。
同じアジアンフィットでも、メーカーやモデルによってフレームの形状やスポンジの厚みは異なります。また、人それぞれ顔の形は違うため、「アジアンフィットなら万人に合う」というわけではありません。
✅ 試着時のチェックポイント:
- 鼻とゴーグルの間に隙間がないか
- 頬やこめかみへの圧迫感がないか
- バンドを装着した状態でのフィット感
- 視界の広さと位置
試着の際は、ゴーグルを目に当てるだけでなく、必ずバンドも装着してフィット感を確認しましょう。
鼻周りのスポンジ(フォーム)の厚みをチェック
ゴーグルの内側にあるスポンジ(フォーム)の厚みは、フィット感を大きく左右します。
アジアンフィットのゴーグルは、特に鼻周りのフォームが分厚くなっています。試着時には、鼻の上部からゴーグルを押さえたとき、スポンジがしっかり密着しているかを確認してください。
また、長期間使用するとスポンジは劣化して薄くなります。フォームの厚みに余裕があるモデルを選ぶことで、経年劣化後もフィット感を維持しやすくなります。
平面レンズと球面レンズの違いとフィット感への影響
スノボ用ゴーグルのレンズ形状には、平面レンズと球面レンズの2種類があります。
| 特徴 | 平面レンズ | 球面レンズ |
|---|---|---|
| レンズ形状 | フラット | 湾曲 |
| 視野の広さ | 広い | やや狭い |
| 曇りにくさ | 普通 | 曇りにくい |
| 顔との距離 | 近い | 遠い |
| 価格帯 | 比較的安価 | やや高価 |
球面レンズは、レンズが湾曲しているため顔とレンズの間に空間ができやすく、曇りにくいメリットがあります。一方で、フィット感の面では顔の形状との相性が重要になります。
フレームありとフレームレスの違い
ゴーグルにはフレームありタイプとフレームレスタイプがあります。
🔍 それぞれの特徴:
- フレームあり:柔らかいフィット感、衝撃吸収に優れる、価格が安い傾向
- フレームレス:視界が広い、未来的なデザイン、レンズが硬く割れやすい
フレームレスゴーグルは視界の広さが魅力ですが、レンズ自体が硬いため、転倒時の衝撃で割れやすいデメリットがあります。初心者の方は、フレームありタイプの方が安心して使用できます。
ヘルメットとの相性も確認する
ヘルメットを着用してスノボを楽しむ方は、ゴーグルとヘルメットの相性も重要なポイントです。
ゴーグルとヘルメットの相性が悪いと、両者の間に隙間ができたり、ゴーグルが正しい位置に固定できなかったりします。
ヘルメット使用者は、購入時に実際にヘルメットを持参して、両方を装着した状態でフィット感を確認することをおすすめします。
初心者が失敗しやすいゴーグル選びの落とし穴
ゴーグル選びで失敗する原因の多くは、事前に知っておけば避けられるものです。特に初心者がやりがちな失敗パターンを紹介します。
ネット購入・並行輸入品の注意点
ネットでゴーグルを購入する際、並行輸入品や海外モデルを誤って購入してしまうケースがあります。
⚠️ ネット購入で注意すべきポイント:
- 「アジアンフィット」「Japan Fit」の表記があるか確認する
- 並行輸入品は海外仕様(グローバルフィット)の可能性が高い
- 店頭でフィッティングした同じモデル・同じ仕様を購入する
特に、店頭でアジアンフィットモデルを試着して気に入った後、ネットで安く買おうとして海外モデルを購入してしまう失敗は少なくありません。商品名だけでなく、フィットタイプの表記を必ず確認しましょう。
見た目重視で選んでしまう
デザインやカラーだけで選ぶと、フィット感の悪いゴーグルを購入してしまう原因になります。
ゴーグルは見た目も重要ですが、まずはフィット感を最優先で選び、その中から好みのデザインを探すのが正しい順序です。どれだけカッコいいゴーグルでも、隙間から風が入ってきたり、曇って前が見えなくなったりしては意味がありません。
アジアンフィット=万能ではない
「アジアンフィット」と書いてあれば日本人全員にフィットするわけではありません。
アジアンフィットはあくまでアジア人の平均的な骨格に合わせた設計であり、顔の形は人それぞれです。アジアンフィットでも合わない人もいれば、グローバルフィットでもピッタリ合う人もいます。
結局のところ、試着して自分の顔に合うかどうかを確認することが最も確実な方法です。
日本人の鼻にフィットしやすいゴーグルブランド
日本人の顔に合いやすいゴーグルブランドを紹介します。特に国産ブランドは、日本人の頭部データをもとに設計されているため、フィット感に定評があります。
国産ブランド(SWANS・DICE)の強み
日本人にフィットしやすいゴーグルを探すなら、国産ブランドが最も確実です。
🇯🇵 SWANS(スワンズ)
1911年創業の山本光学が展開する国産アイウェアブランドです。110年以上の歴史の中で蓄積した日本人の頭部データをもとに設計されており、「ジャパンフィット」の実力は折り紙付きです。
SWANSの特徴:
- 日本人の骨格に合わせたフレーム設計
- 曇りを防ぐ「A-BLOW SYSTEM」搭載モデルあり
- 調光レンズなど高機能レンズのラインナップ
🇯🇵 DICE(ダイス)
DICEは山本光学が展開するスノーボーダー向けブランドです。SWANSと同じ技術基盤を持ちながら、スノーボードに特化した製品を展開しています。
DICEの特徴:
- フレームの段階から日本人の骨格に合わせて設計
- 日本の雪山・天候に適したレンズカラー設定
- ミラーが剥がれにくい「MITレンズ」搭載
国産ブランドは、海外ブランドのアジアンフィットと違い、スポンジだけでなくフレーム自体が日本人向けに設計されているため、よりフィットしやすいと言われています。
オークリーのアジアンフィットモデルの現状
OAKLEY(オークリー) は世界的に人気の高いアイウェアブランドです。アジアンフィットモデルも展開しており、「Low Bridge Fit」の表記があるものが日本人向けモデルです。
オークリーのアジアンフィットの特徴:
- ノーズパッドの高さを日本人向けに調整
- フレームカーブを緩やかに設計
- サイズ違いのノーズパッドが付属するモデルあり
なお、以前は同一モデルでアジアンフィットとグローバルフィットの両方が販売されていましたが、近年はモデルごとにどちらか一方のフィットで展開されているケースが多くなっています。購入時は必ずフィットタイプを確認してください。
SMITHのアジアンフィットの特徴
SMITH(スミス) は、世界初のダブルレンズゴーグルを開発したブランドです。独自の「クロマポップレンズ」による高い視認性と、曇りにくさで人気があります。
SMITHアジアンフィットの特徴:
- 「Asian Fit」「ローブリッジフィット」表記のモデルが日本人向け
- 曇りを防ぐ独自技術を搭載
- マグネット式レンズ交換システム(一部モデル)
SMITHのゴーグルは、アジアンフィットモデルでもフレームサイズのバリエーション(S、M、Lなど)があるため、自分の顔のサイズに合ったものを選べる点がメリットです。
価格帯別おすすめモデル
ゴーグルの価格帯は幅広く、数千円から6万円以上するものまであります。価格帯別の特徴を理解して選びましょう。
| 価格帯 | 特徴 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| 5,000円以下 | 基本機能のみ、曇りやすい | 年に1〜2回滑る程度の人 |
| 5,000〜15,000円 | ダブルレンズ、曇り止め機能 | 初心者〜中級者 |
| 15,000〜25,000円 | 調光・偏光レンズ、高いフィット感 | 頻繁に滑る中級者 |
| 25,000円以上 | 最新テクノロジー搭載、換気システム | 上級者、こだわりのある人 |
初心者の方には、1万円〜1.5万円程度のダブルレンズ搭載モデルがおすすめです。基本的な曇り止め機能があり、フィット感も良好なモデルが多い価格帯です。
スノボを始める際に必要な道具全体については、スノーボードに必要なものガイドで詳しく解説しています。
アジアンフィットでも鼻が合わない場合の対処法
アジアンフィットのゴーグルを選んでも、完全にフィットしないケースはあります。そんな場合の対処法とDIY補修方法を紹介します。
鼻が潰れる・圧迫感がある場合の調整
アジアンフィットでも、鼻が圧迫されて痛いという場合があります。これはスポンジが厚すぎる、またはフレームのカーブが顔に合っていないことが原因です。
✅ 対処法:
- バンドを少し緩めて調整する
- 別メーカー・別モデルのアジアンフィットを試す
- ノーズパッドが交換可能なモデルでサイズを変更する
オークリーなど一部のモデルでは、サイズ違いのノーズパッドが付属しています。圧迫感がある場合はスモールサイズ、隙間がある場合はラージサイズに交換することで、フィット感を調整できます。
隙間テープを使った簡易補修
既に持っているゴーグルの鼻の隙間を埋めたい場合、100円ショップの隙間テープで簡単にDIY補修ができます。
📝 必要なもの:
- 隙間テープ(幅15mm、厚さ5〜10mm、ポリウレタン製がおすすめ)
- はさみ
📝 補修手順:
- 隙間テープを適度な長さに切る
- 鼻の形状に合わせてカットする
- ゴーグルの鼻部分に両面テープで貼り付ける
- はさみで形を微調整する
この方法で、グローバルフィットのゴーグルでもアジアンフィット相当のフィット感を得られるケースがあります。費用も100円程度で済むため、まずは試してみる価値があります。
ノーズパッドの交換・追加方法
一部のメーカーでは、ゴーグル用のノーズパッド(お助けノーズパッド) が販売されています。
例えばBOLLE(ボレー)の日本正規品には、簡易ノーズパッドが付属しています。スポンジ状のパッドを鼻部分に貼り付けるだけで、隙間を解消できます。
また、ゴーグル専用の交換用スポンジも販売されており、スポンジが劣化した場合や、厚みを増したい場合に活用できます。
ゴーグル購入前の試着チェックリスト
店頭でゴーグルを試着する際に、確認すべきポイントをリストにまとめました。
✅ フィット感チェック:
- [ ] 鼻とゴーグルの間に隙間がないか(指が入らないこと)
- [ ] 頬やこめかみに過度な圧迫感がないか
- [ ] バンドを装着した状態で安定しているか
- [ ] 上下左右に動かしてもズレにくいか
✅ 視界チェック:
- [ ] 視野が広く確保されているか
- [ ] 下方向の視界が確保できているか(足元が見えるか)
- [ ] レンズの歪みがないか
✅ 機能チェック:
- [ ] アジアンフィット(ジャパンフィット)の表記があるか
- [ ] ダブルレンズ構造か
- [ ] 曇り止め加工がされているか
- [ ] メガネ使用者はメガネ対応モデルか
✅ ヘルメット使用者向け:
- [ ] ヘルメットとの相性は良いか
- [ ] ヘルメットとゴーグルの間に隙間ができないか
このチェックリストを活用して、自分の顔に合ったゴーグルを見つけてください。
ウェア選びも同様に試着が重要です。スノーボードウェアの選び方も参考にしてください。
よくある質問
- アジアンフィットとジャパンフィットの違いは?
-
基本的に同じ意味です。どちらもアジア人(日本人)の骨格に合わせた設計を指し、メーカーによって呼び方が異なるだけです。
- 並行輸入品のゴーグルはアジアンフィットですか?
-
多くの場合、並行輸入品はグローバルフィット(海外仕様)です。アジアンフィットを購入したい場合は、日本正規品を選ぶか、商品説明でフィットタイプを必ず確認してください。
- ゴーグルの鼻の隙間は慣れれば気にならなくなりますか?
-
慣れで解消する問題ではありません。隙間があると曇りや雪の侵入が続くため、アジアンフィットへの買い替えか、隙間テープでの補修をおすすめします。
- メガネをかけていても使えるアジアンフィットはありますか?
-
はい、あります。「眼鏡対応」「OTG(Over The Glasses)」と表記されたモデルを選んでください。
- 国産ブランドと海外ブランドのアジアンフィット、どちらがおすすめ?
-
一般的に、SWANSやDICEなどの国産ブランドの方がフィットしやすいです。フレーム自体が日本人向けに設計されているためですが、個人差があるため両方試着して比較するのがベストです。
まとめ
スノボ用ゴーグルで鼻の隙間問題を解消するためには、アジアンフィット(ジャパンフィット)モデルを選ぶことが基本です。
特に、SWANSやDICEといった国産ブランドは、フレームの段階から日本人の骨格に合わせて設計されているため、高いフィット感が期待できます。海外ブランドを選ぶ場合は、「Asian Fit」「Low Bridge Fit」「Japan Fit」などの表記を必ず確認してください。
アジアンフィットでも完全にフィットしない場合は、100円ショップの隙間テープを使ったDIY補修で対応できることもあります。
最も重要なのは、必ず店頭で試着してから購入することです。ネットで安く買いたい気持ちはわかりますが、ゴーグルは顔の形との相性が非常に重要なアイテムです。自分の顔に合ったゴーグルを見つけて、快適なスノボライフを楽しんでください。
【参考情報】

